多様化した女性の活躍の場を考慮した女性の健康の包括的支援の現状把握および評価手法の確立に向けた研究

文献情報

文献番号
202110003A
報告書区分
総括
研究課題名
多様化した女性の活躍の場を考慮した女性の健康の包括的支援の現状把握および評価手法の確立に向けた研究
課題番号
20FB1002
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
飯島 佐知子(順天堂大学 大学院医療看護学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 横山 和仁(国際医療福祉大学 大学院医学研究科公衆衛生学専攻)
  • 遠藤 源樹(順天堂大学 医学部 公衆衛生学講座)
  • 西岡 笑子(防衛医科大学校 医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究)
  • 三上 由美子(防衛医科大学校医学教育部看護学科)
  • 堀江 重郎(順天堂大学大学院 医学研究科 泌尿器外科学)
  • 高橋 真理(文京学院大学看護学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 女性の健康の包括的支援政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
6,924,000円
研究者交替、所属機関変更
 総括: ・研究分担者交替 氏名 大西麻未(令和2年4月1日~3年3月31日) →研究協力者 氏名 松永圭子(令和3年4月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
令和3年度の目的は、1)男性の不妊・更年期、2)不妊に対する対応としてプレコンセプションケアに対する諸外国の施策、3)更年期に非薬物療法の有効性、4)ヘルスリテラシー向上ための介入の文献レビューを行うこととした。また、5)大学における女性の健康支援の好事例の収集、6)女子大学生のヘルスリテラシー啓発のための教育プログラムの実施,7)20代女子学生を対象とした子宮頸がん検診受診に関連する障壁と促進要因を検討することであった。 加えて、8)協会けんぽの健康増進、相談、教育の実施状況把握、9)自治体および中小企業、中学校から大学向けの女性の健康教育支援の手順書を作成することを目的とした。
研究方法
1)のResearch Question(RQ)は「テストステロン補充療法は性腺機能低下症に推奨されるか」、2)のRQは「不妊予防を目的として実施されているポピュレーションアプローチには何があるか?」、3)のRQは「更年期症状を軽減するために、有効な薬物療法以外の食事、運動、認知、教育介入は何か?」、4)のRQは女性特有の疾患に対するヘルスリテラシーを高める効果のある教育介入は何か?」として、MEDLINDE、Cochrane、等のデータベースを用いて文献を収集し、2名2組で文献の評価を進めた。5)好事例は2大学の保健センターにインタビュー調査を実施した。6)web上に連載している月経関連、女性のヘルスリテラシーに関するメッセージを週に1回、3か月間、12回送信し、その前後で、知識、意識の変化について調査を行った。7)20歳前半(20~24歳)の女子学生500を対象にwebにより横断調査を実施した。8)全国健康保険協会(協会けんぽ)47支部に、調査票を送付した。9)自治体向けおよびプラマリケアのロジックモデルの作成手順を参考に作成した。
結果と考察
1) RCTの解析からテストステロン補充療法は、性機能、QOL、体組成、代謝を改善することが確認されたが、大規模なRCTはこれまでされていないため、エビデンスは十分ではかった。2) プレコンセプションケアついて118件の文献から地域保健活動への展開としてウェブサイトを通じた情報提供、動画、講義、アートを通じた啓発、デジタル技術を用いた新しい介入方法に関する研究が抽出された。2)126件の文献から、食事37件、運動27件、教育15件、認知行動療法9件、鍼灸11件、複数介入27件であった。9割の文献では更年期症状の軽減に効果有りと報告したが、食事、教育、認知行動療法では1〜3件の文献は効果がなかったと報告した。女性がセルフケアに取り入れられるようにするには、これらの情報を正確に伝える必要がある。4)女性特有の疾患のヘルスリテラシーを高める介入は、中高年には地域で実施されていた。思春期、青年期、とその親世代については学校を中心に健康教育が実施されており、我が国とは異なっていた。我が国でも在学者の健康教育を学校で実施することを検討する必要がある。5)2大学では月経異常を問診票でスクリーニングしており、教養科目の一環として女性の健康について包括的に学習していた。我が国では健康教育を大学は少ないため、今後、プレコンセプションケア等の教育を大学内で積極的に行う必要がある。6)webにより女性のヘルスリテラシーに関する情報提供を実施したところ、介入群44名は対照群337名よりも3ヶ月後のヘルスリテラシーが有意に向上していた。webによる女性のヘルスリテラシー教育の有効性が示唆された。7)子宮頸がん検診を受けたことのない20代女子学生は、予約のしやすさ、費用負担がないこと、受診日時・場所が自由に選択できることが受診を動機付ける要因の上位であった。また、知識だけなく、身近な医師、家族、友人の推奨に影響を受けていた。8)47協会けんぽ支部のうち11支部がパートタイム等の働く女性に配慮して乳がん子宮がん等の検診業務を実施していたが、教育や相談事業は課題であった。協会けんぽでは働く女性が職場で活用できる健康情報や相談窓口はあまり提供されていなかった。9)自治体、企業・協会けんぽ、小学校から大学向けの女性の健康教育支援の手順書(案)を作成した。自治体だけでなく思春期、青年期、更年期については学校や企業、医療施設等の連携、web 教材の活用、知識、スキルおよび行動変容を評価指標とすることを例示して提案した。
結論
1) 女性の健康支援は、自治体だけでなく、学校や職場、関係部署が連携し、教材の提供や知識、スキルおよび行動変容の評価にwebを活用すること提案する。また、行動変容には生活の場での対面による教育も含める必要がある。

公開日・更新日

公開日
2023-08-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-08-08
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202110003B
報告書区分
総合
研究課題名
多様化した女性の活躍の場を考慮した女性の健康の包括的支援の現状把握および評価手法の確立に向けた研究
課題番号
20FB1002
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
飯島 佐知子(順天堂大学 大学院医療看護学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 横山 和仁(国際医療福祉大学 大学院医学研究科公衆衛生学専攻)
  • 遠藤 源樹(順天堂大学 医学部 公衆衛生学講座)
  • 西岡 笑子(防衛医科大学校 医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究)
  • 三上 由美子(防衛医科大学校医学教育部看護学科)
  • 高橋 真理(文京学院大学大学院看護学研究科)
  • 堀江 重郎(順天堂大学大学院 医学研究科 泌尿器外科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 女性の健康の包括的支援政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
研究分担者交代  令和2年4-令和3年3月 大西麻未 → 交代 研究協力者 令和3年4月-令和4年3月  松永圭子

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、1)女性のヘルスリテラシー、男女の不妊および更年期の症状改善に効果のある介入の文献レビューをすることであった。また、
2)自治体,企業、協会けんぽ、大学による女性の健康支援の実施状況を把握すること、
3)既存の統計資料から成果指標を得て,実施状況との関連を検討することであった。さらに、
4)女子大学生のヘルスリテラシー啓発のための教育プログラムの実施および評価し、これらの成果を統合して
5)女性の健康支援事業の評価方法と手順書を作成することであった。

研究方法
1)男性不妊、更年期、女性不妊、女性更年期、女性健康課題のヘルスリテラシーの4つの研究者グループが分担し、PubMed等で文献検索、収集し、精読し、介入の内容、効果の評価指標を整理した。
2) 都道府県47名、市町村1741名および全国84か所の女性健康支援センターに女性の健康支援の実施状況の質問紙調査を実施した。全国健康保険協会(協会けんぽ)47支部のホームページの検索および質問紙調査を実施した。全国767大学保健センター(保健室)に対し質問紙調査を実施した。
3) 2017 年から 2020 年に実施収集し公開された人口動態統計等統計資料から女性の健康に関連する指標を収集しその関連を分析した.
4)女子大学生を対象に分担研究者が作成したweb女性のヘルスリテラシーに関するメッセージを週に1回、3か月間、12回送信し、その前後で、知識、意識の変化について調査を行った
5)手順書は自治体およびプラマリケアのロジックモデルの作成手順を参考にし、成果指標は文献等を参考に作成した
結果と考察
1) テストステロン補充療法は、性機能、QOL、体組成、代謝を改善したが、大規模なRCTはなくエビデンスは十分ではかった。プレコンセプションケアでは地域保健活動として、ウェブサイトを通じた情報提供、動画、講義形式、アートを通じた啓発、デジタル技術を用いた介入がされた.更年期症状に対して、運動は全ての文献で有効性を示したが、食事、教育、認知行動療法の1〜3件の文献が効果はなったと報告した。鍼灸では軽度の副作用を報告した文献が見られた。女性のヘルスリテラシーでは、コニュニティベースでの介入が多く見られ、eラーニングでも実施されていた。思春期、青年期、その親世代では、子宮頸がんHPVワクチン接種、HPV自己採取、月経教育は学校をベースで実施していた。Webの活用や、対象者の生活の場で教育することが有効と考えられた。

2) 市町村・都道府県では女性の健康課題についての相談窓口設置や健康教育、パンフレットの配布等の支援を実施していると回答した割合は、妊娠・出産・妊娠中絶(50%)、思春期の体と心(37%)、不妊(34%)乳がん(23%)、子宮がん(22%)、骨粗鬆症(30%)、認知症(30%)、更年期(29%)であった。一方、青年期以降に多い子宮内膜症等の婦人科疾患についての情報提供は皆無であった。女性健康支援センター32の相談内容は,育児不安や産後うつ,妊娠・出産が多かった。がん検診受診ついて,検診車,はがきやクーポン券送付,講演会等での勧奨等が行われていた。協会けんぽでは、12 支部で女性の健康支援に関する記述があり、8 支部で乳がん研修会を受講,乳がん・子宮頸がん健診などの環境整備,相談窓口の設置,検診の費用補助を行うなど具体的記述があった。大学保健センター159での健康教育は,将来の妊娠・出産、ライフプラン21大学,子宮頸がんワクチン10大学、子宮頸がん検診は9大学で実施していた。かかりつけの婦人科を持つことは6大学であった。
3) 若年出産の少なさと自治体による若者への避妊等の教育の実施との関連は見られた。一方、子宮頸がん検診の受診勧奨は若年者の受診率の高さと関連はなく、若年者により効果のある勧奨方法への変更が必要であることが示唆された。
4) 女子大学生の介入前のヘルスリテラシー尺度の3か月後の得点は、介入群は対照群に対し有意に上昇していた. 女子大学生にはweb によるヘルスリテラシーの向上の有効性が示唆された。
5) 自治体、企業・協会けんぽ、学校で、支援の種類を明記し、介入方法として、厚生労働省等のホームページに記載された女性の健康情報の活用や、自治体、企業・協会けんぽ、大学等が連携して提供すること、および、知識やスキルの向上、行動変容を評価する指標を例示し活用すること提案した。
結論
結論:今後、自治体、協会けんぽ、企業、学校で、女性の健康の支援を実施する事業所数を増やし内容を充実する必要がある。そのためには、ウェブサイトの健康教育情報の活用を推進し、その成果について知識、スキル、行動変容の評価指標を設定して、関係機関で共有、協働するシステムの構築が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2023-08-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-08-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202110003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
女性の健康支援は、妊娠・出産、思春期の性、不妊、骨粗鬆症、認知症の支援が5〜3割の自治体で実施されていたが、子宮内膜症等婦人科疾患の支援は皆無であった。また企業、保険者、学校では殆ど実施されていなかった。また、若年出産の少なさと自治体による若者への避妊等の教育との関連は見られたが、子宮頸がん検診の受診勧奨は若年者の受診率の高さと関連はなく、若年者により効果のある勧奨方法への変更が必要であることが示唆された。公衆衛生学会等で発表し話題となった。今後、外の学術雑誌で発表を行う。
臨床的観点からの成果
本女性の健康支援は、妊娠・出産、思春期の性、不妊、骨粗鬆症、認知症の支援が5〜3割の自治体で実施されていたが、子宮内膜症等婦人科疾患の支援は皆無であった。また企業、保険者、学校では殆ど実施されていないことが明らかになった。このため、今後、自治体、企業、保険者、教育機関が実施すべき女性の健康支援の課題と種類が明確になり、手順書を参考に具体的な実施計画を立案、評価することが可能になった。今後、国内外の学術雑誌で発表を行う。
ガイドライン等の開発
自治体、保険者、企業、学校向けの女性の健康支援の手順書を作成した。各事業所が実施すべき、女性の健康支援の種類、成果指標、連携のあり方を明記したことにより、今後統一した様式で、実施計画の立案、統一指標による事業評価が可能となった。今後、内容をさらに精選して学会発表、ホームページ等で公表する。
その他行政的観点からの成果
自治体、保険者、企業、学校向けの女性の健康支援の手順書を作成した。各事業所が実施すべき、女性の健康支援の種類、成果指標、連携のあり方を明記したことにより、今後統一した様式で、実施計画の立案、統一指標による事業評価が可能となった。今後、内容をさらに精選して学会発表、ホームページ等で公表する。今後、審議会の資料として提出予定である。
その他のインパクト
女性の生涯にわたる健康を見据えたプレコンセプションケア 週刊医学界新聞. 第3400号2020年12月14日. 小児期からの包括的性教育の必要性. 家族と健康. 第800号. 4-5.2020年11月1日、AIが見た「産後クライシス」東京新聞朝刊2021年1月30日、産後ママを支える視点 東京新聞朝刊2021年3月16日、 NHK「性について語ろう」30秒動画①プライベートゾーンって?②相手の気持ちも大切に③男らしさ、女らしさに縛られてない?④性のあり方って?2021年3月28日から1年間放送

発表件数

原著論文(和文)
13件
原著論文(英文等)
8件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
3件
手順書3件
その他成果(普及・啓発活動)
5件
新聞発表3、テレビ放送3

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-11-16
更新日
2023-07-06

収支報告書

文献番号
202110003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,000,000円
(2)補助金確定額
8,958,000円
差引額 [(1)-(2)]
42,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,966,794円
人件費・謝金 1,576,197円
旅費 2,284円
その他 3,337,591円
間接経費 2,076,000円
合計 8,958,866円

備考

備考
866円は自己資金

公開日・更新日

公開日
2022-10-19
更新日
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