急性脳炎・脳症のグルタミン酸受容体自己免疫病態の解明・早期診断・治療法確立に関する臨床研究

文献情報

文献番号
200833071A
報告書区分
総括
研究課題名
急性脳炎・脳症のグルタミン酸受容体自己免疫病態の解明・早期診断・治療法確立に関する臨床研究
課題番号
H20-こころ・一般-021
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 幸利(独立行政法人国立病院機構 静岡てんかん・神経医療センター 臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 湯浅 龍彦(医療法人社団木下会鎌ヶ谷総合病院千葉神経難病医療センター)
  • 庄司 紘史(国際医療福祉大学福岡リハビリテーション学部)
  • 岡本 幸市(群馬大学大学院医学系研究科脳神経内科学)
  • 熊本 俊秀(大分大学医学部脳神経機能統御講座(内科学第三))
  • 栗山 勝(福井大学第二内科(神経内科))
  • 森島 恒雄(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科、小児科学)
  • 田中 惠子(金沢医科大学脳脊髄神経治療学(神経内科学))
  • 犬塚 貴(岐阜大学医学系研究科神経統御学講座 神経内科・老年学分野)
  • 中島 健二(鳥取大学医学部附属脳幹性疾患研究施設脳神経内科部門・神経内科)
  • 森 寿(富山大学大学院医学薬学研究部、分子神経科学(富山大学))
  • 市山 高志(山口大学医学部附属病院小児科)
  • 吉川 哲史(藤田保健衛生大学・小児科)
  • 渡邊 修(鹿児島大学医学部・歯学部附属病院 脳神経センター 神経内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
21,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
辺縁系症状で発病する急性脳炎・脳症には複数の病態が存在し、個々の病態の正確解明、鑑別診断の確立、病態ごとの固有の治療法の開発が望まれている。
研究方法
多施設共同研究のための症例登録基準に合わせて前方視的に幅広く急性辺縁系脳炎の症例を集積し、疫学研究、病理研究、新しい抗神経抗体・抗原の検索、抗NMDA受容体複合体抗体測定法の開発、急性非ヘルペス性辺縁系脳炎(NHALE)における抗GluRε2抗体エピトープの検討、血液脳関門の病態の検討、MRI診断スキームの確立、治療と予後に関する検討、抗VGKC抗体陽性辺縁系脳炎に関する検討、ウィルスに関する検討等を行った。
結果と考察
MHALE症例は、かなりの頻度で抗NMDA型GluR複合体抗体、抗GluRε2抗体、抗VGKC抗体、抗NAE抗体などが陽性で、髄液でのリアルタイムPCR法による検索ではウィルスが同定される症例は極めてまれであることが判明した。病理学的にもNHALEの海馬病変は、ミクログリアの増勢に加えて海馬CA1の実質内にCD8陽性T細胞が比較的多くみられことが分かった。よって、NHALEには自己免疫介在性脳症の病態を呈するものが多いと言える。
これまで経験的に行なわれ、NHALEに有効と考えられている免疫学的治療(ステロイドパルス治療など)が、早期であるほど有効である傾向が分かり、今後自己免疫病態が分子生物学的観点等から解明されることで、新たな治療法が見つかる可能性が出てきた。
抗GluRε2抗体は、GluRε2分子のN末・M3-4間・C末をエピトープとする抗体がほぼ等しく血清および髄液中に検出され、GluRε2分子の幅広い領域をエピトープとする抗GluRε2抗体が産生されていた。血液脳関門はMMP-9を主体とした病態で機能の低下に陥っていることが分かり、その防御が新たな治療に結びつく可能性がある。
結論
NHALEは、感染ウィルス以外からのGluR抗原提示が存在するものと思われ、新たな治療法・予防法への発展が期待される。

公開日・更新日

公開日
2009-05-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-12-11
更新日
-