高齢者の転倒予防に関する研究

文献情報

文献番号
200821021A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者の転倒予防に関する研究
課題番号
H18-長寿・一般-032
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
田村 俊世(国立大学法人千葉大学 大学院工学研究科人工システム科学専攻)
研究分担者(所属機関)
  • 関根 正樹( 国立大学法人千葉大学 大学院工学研究科人工システム科学専攻 )
  • 吉村 拓巳(東京都立産業技術高等専門学校)
  • 中山 茂樹( 国立大学法人千葉大学 大学院工学研究科人工システム科学専攻 )
  • 東 祐二(藤元早鈴病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
5,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
転倒は,環境因子が重大な影響を与えるが,加齢にともなう身体バランス機能の低下が大きい要素を占めることが云われている.そこで1)動的なバランスを簡便に評価できるシステムの開発,2)バランス機能維持のための訓練システムの開発,3)骨折予防のための転倒衝撃吸収システムの開発,4)転倒リスクのない住宅環境の改善の提言,5)作業療法士を中心とした転倒のリスクアセスメントの作成,の課題についてそれぞれ研究を遂行した.
研究方法
最終年度は,実用化に向け,研究を実施した.1)バランス機能については,これまでに開発した水平外乱刺激発生装置により外乱を与える方法としてランダムと漸増する方法の比較を行い,ステッピング戦略に至る経過を観察した.2)重心が動揺した方向に刺激を与えることによりバランスを保つことが示されたことにより,より効果的な刺激方法を検討した.3)加速度,角速度の計測により,転倒検出アルゴリズムを作成し,エアバッグシステムのプロトタイプを完成させる.4)老健施設に回想法を導入した.古い時代の仮想環境を提供し,居住者の「癒され度」に着目し神経心理学テストを用いて導入前後を比較した.5)転倒アセスメントに定量評価を組み合わせるためにTUGテストを導入し,従来の到達時間のみならず,姿勢を切り分け,歩行中の体幹の揺れに着目した.これらの定量評価を含む転倒リスクアセスメント表を作成した.
結果と考察
水平外乱刺激発生装置を開発し,これを用いて外乱刺激時のpitch方向の身体動揺から3つの姿勢制御戦略の特徴を確認できることを示した.また,足裏刺激装置については姿勢調整に影響を与える振動パラメータとして刺激部位と周波数が有効であることを明らかにした.転倒時の骨折防止用エアバッグについては,転倒検出アルゴリズムの誤動作防止のため,加速度,角速度信号の計測が有効であり,精度の高い転倒検出が可能になったことにより転倒予防のためのヒトエアバッグのプロトタイプが完成した. 一方,施設の改善を回想法をもとに行った結果,多くの認知症の方に有効であると考えられた.最後に,加速度測定を用いた動作評価は,転倒のリスクを定量的に評価することが可能であることが示唆され,転倒リスクアセスメントに有用な情報を提供できることが示唆された.
結論
転倒を予防,予測ならびに転倒時の疾病の防止や怪我をしない環境について支援機器開発環境の整備を行った.

公開日・更新日

公開日
2009-05-22
更新日
-

文献情報

文献番号
200821021B
報告書区分
総合
研究課題名
高齢者の転倒予防に関する研究
課題番号
H18-長寿・一般-032
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
田村 俊世(国立大学法人千葉大学 大学院工学研究科人工システム科学専攻)
研究分担者(所属機関)
  • 中山 茂樹(国立大学法人千葉大学 大学院工学研究科建築・都市科学専攻)
  • 東 祐二(藤元早鈴病院)
  • 吉村 拓巳(東京都立産業技術高等専門学校 医療福祉工学コース)
  • 関根 正樹(国立大学法人千葉大学 大学院工学研究科人工システム科学専攻)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
身体機能が低下した高齢者人口の増加と介護保険の導入による原則身体拘束廃止によって転倒が増加している.転倒は,環境因子が重大な影響を与えるが,加齢にともなう身体バランス機能の低下が大きい要素を占めることが云われている.そこで1)動的なバランスを簡便に評価できるシステムの開発,2)バランス機能維持のための訓練システムの開発,3)骨折予防のための転倒衝撃吸収システムの開発,4)転倒リスクのない住宅環境の改善の提言,5)作業療法士を中心とした転倒のリスクアセスメントの作成,の課題についてそれぞれ研究を遂行した.
研究方法
転倒予防,予測によるQOLの向上,転倒後の疾病を防止する総合的な支援システムを計画した.転倒予防のためバランス保持に着目し,バランス機能測定装置を開発した,またバランスを崩した高齢者のバランス機能維持のために体感刺激を与えることにより,姿勢保持をするシステムを考案した.さらに,バランスを崩して転倒した場合に骨折を予防するエアバッグ式の転倒衝撃吸収システムを計画した.居住空間についても,回想的空間・環境を提供することを提案した.最後に転倒リスクアセスメント評価法に定量性を加味する提案をした.
結果と考察
転倒予防のためバランス保持に着目し,バランス機能測定装置を開発し,外乱発生時の身体平衡機能の特徴を角速度の左右方向の回転角(ピッチ)の計測で確認できた,またバランス機能維持のための姿勢調整機能は足底,腰,足首であることが示された.加速度・角速度センサによる転倒の予測とエアバッグの開放による骨折予防のための転倒衝撃吸収システムを考案し,試作器が完成した.さらに,回想的空間・環境を提供することによって転倒事故の防止につながることが示された. 最後に定量的でかつ経時的な転倒リスクアセスメント評価法を確立した.
結論
高齢者のバランス機能を計測し,機能低下を予測し,予防のために体感刺激を与えることを提案した.また,転倒時の骨折予防のためにヒトに着用できるエアバッグを開発した.さらに回想法を利用して転倒しない仮想環境を作り上げた.
これまでの定性的な情報が多かった転倒リスク,転倒の評価に少なくとも定量的な情報を加えることができた.
まだまだ,多くの問題を含んでいるが定量的な評価にむけての第一歩は踏み出せたと考える.

公開日・更新日

公開日
2009-05-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200821021C

成果

専門的・学術的観点からの成果
転倒の予防のために水平刺激を発生させるバランス計測機器,バランス機能改善のために振動モータを用いて体感刺激を与える振動刺激装置を作製した.また,転倒した際に骨折を予防するエアバッグを用いた転倒衝撃吸収装置を開発した.さらに,転倒,転落を防ぐ目的として居住環境を整備し,バリアフリー環境に,回想法を取り入れた古い日本の仮想環境を作る提案をした.最後に転倒リスクアセスメントに定量的な項目を取り入れるために,加速度,角速度による歩行評価を施行した.
臨床的観点からの成果
加速度,角速度計測を目的としたウェアラブルセンサの開発とそれを用いた歩行評価は,簡便に,定量的に,高齢者の歩行を観察でき,トレーニングの指示や注意喚起をすることが可能となり,臨床で有用な機器開発といえる.
ガイドライン等の開発
なし.
その他行政的観点からの成果
なし.
その他のインパクト
転倒衝撃吸収装置はNHK,テレビ東京で放映された.また,BBC-web版で世界に報道された.

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ichinoseki-Sekine N, Kuwae Y, Higashi Y, Fujimoto T, Sekine M, Tamura T.et al
Improving the accuracy of pedometer used by the elderly with the FFT algorithm
Medicine & Science in Sports & Exercise , 38 (9) , 1674-1681  (2006)
原著論文2
山本弘毅, 吉村拓巳,関根正樹, 田村俊世
高齢者のバランス機能改善を目的とした足底刺激装置の開発
生体・生理工学シンポジウム2006 , 413-414  (2006)
原著論文3
関根正樹, 木内尚子,前田祐佳,田村俊世,桑江 豊,東 祐二,藤元登四郎,大島秀武,志賀利一
高齢者の歩容に対応した歩数計の開発-カウントアルゴリズムの検討-
生体・生理工学シンポジウム2006 , 521-522  (2006)
原著論文4
吉村拓巳,山本弘毅,関根正樹, 田村俊世
転倒エアバッグ開発のための転倒検出方法の検討
生体・生理工学シンポジウム2006 , 523-524  (2006)
原著論文5
東 祐二, 山越憲一, 藤元登四郎, 関根正樹, 田村俊世
Time Up and Go Testの動作フェーズの検出に関する検討
生体医工学学会誌 , 44 (4) , 739-746  (2008)
原著論文6
Tamura T, Yoshimura T, Sekine M
. A Preliminary Study to Demonstrate the Use of an Air Bag Device to Prevent Fall-Related Injuries
29th Annual International Conference of the IEEE Engineering in Medicine and Biology Society , 3833-3835  (2007)
原著論文7
飯島賢一, 柳田純一, 関根正樹, 田村俊世
角速度を用いた水平外乱刺激時の姿勢応答の計測
生体医工学学会誌 , 45 (4) , 285-291  (2007)
原著論文8
Horita Y, Sekine M, Tamura T, Kuwae Y, Higashi Y, Fujimoto T
New Attempt of Proposing the Pedometer Algorithm in the Elderly
Proceedings of the 5h International Workshop on Wearable and Implantable Body Sensor Networks(BSN 2008) , 111-112  (2008)
原著論文9
Tamura T, Yoshimura T, Sekine M
. A Study to Demonstrate the Used of an Air Bag Device to Prevent Fall-related Injuries
. Proceedings of the 8th IEEE International Conference on BioInformatics and BioEngineering(BIBE 2008) , 316-  (2008)
原著論文10
Higashi Y, Yamakoshi K, Fujimoto T, Sekine M, Tamura T
Quantitative Evaluation of Movement Using the Time Up-and-GO Test
IEEE Engineering in Medicine and Biology Magazine , 27 (4) , 36-46  (2008)
原著論文11
堀田庸介, 関根正樹, 田村俊世, 桑江豊, 東祐二, 藤元登四郎, 大島秀武, 志賀利一
高齢者に対応した歩数カウントアルゴリズムの開発
生体医工学学会誌 , 46 (2) , 283-288  (2008)
原著論文12
吉村拓巳, 山本弘毅, 関根正樹, 田村俊世
転倒エアバッグのための転倒検出方法の検討
ライフサポート学会誌 , 20 (3) , 11-16  (2008)
原著論文13
吉村拓巳, 関根正樹, 田村俊世, 内田光也, 田中理
転倒防護エアバッグの開発
生体・生理工学シンポジウム2008 , 151-152  (2008)
原著論文14
Rajendra A U, Goh S C, Iijima K, Sekine M, Tamura T
Analysis of Body Responses to an Accelerating Platform by the Largest-Lyapunov-Exponent Method
Proceedings of the Institution of Mechanical Engineers, Part H: Journal of Engineering in Medicine 2009 , 223 (1) , 111-120  (2009)
原著論文15
飯島賢一, 関根正樹, 田村俊世
漸増する水平外乱刺激に対する姿勢応答
生体医工学学会誌 , 47 (1) , 70-76  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-