文献情報
文献番号
202027018A
報告書区分
総括
研究課題名
小規模水供給システムの持続可能な維持管理に関する統合的研究
課題番号
20LA1005
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
浅見 真理(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究分担者(所属機関)
- 伊藤 禎彦(京都大学大学院 工学研究科 都市環境工学専攻)
- 増田 貴則(鳥取大学大学院 工学研究科 社会基盤工学専攻)
- 牛島 健(地独)北海道立総合研究機構 建築研究本部北方建築総合研究所)
- 小熊 久美子(東京大学大学院 大学院工学系研究科)
- 中西 智宏(京都大学 工学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者 増田 貴則
鳥取大学(平成31年4月~令和2年3月)
→国立保健医療科学院(令和2年4月以降)
研究報告書(概要版)
研究目的
全国数千の地域において、水道管路等で構成される水道(上水道、簡易水道)及び飲料水供給施設等(以下、水供給システム)を維持することが困難となりつつある。水供給維持困難地域を含む地域において衛生的な水を持続的に供給可能とするための具体的方策の検討を実施すべく検討を行った。
研究方法
飲料水供給施設、簡易水道の制度上の課題等について整理を行った。複数の簡易水道が点在する地域で、処理施設、管路更新等を行う際の条件についてシミュレーションを行った。また、広島市安佐北区、および広島県山県郡安芸太田町において地元管理されている簡易水道組合への訪問調査を行った。地元管理されているような小規模水供給施設について、原水の種類、浄水処理の有無、消毒の有無によって分類したうえで、現実的な水質検査のあり方を考えるための枠組みを示した。京都市西京区における施設を調査対象とし、原水の微生物リスクを推定したうえで、必要な浄水処理レベルについて考察を行い、さらに、限定的な情報の下で、微生物的な安全性を確保するためのアプローチ方法を提示した。
飲料水供給施設相当規模の水供給システムを利用・管理している集落を対象に、集落外の団体との維持管理作業における連携・協力状況、および、集落外の団体からの支援に帯する利用意向を整理することを目的とした質問紙調査を行った。
民間組織や水道事業体等と連携・協働した小規模水供給システム維持管理手法についてケーススタディの蓄積を行い、解析を行った。
地域と需要者に根ざした自律的で持続性の高い水道の一つのモデルを提示し、実践を通じてその有効性を検討した。
小規模水供給システムに適した小型紫外線消毒装置の候補として、紫外発光ダイオード(UV-LED)を光源とする流水殺菌装置を検討し、本年度は、集落規模での利用を念頭に、飲料水供給施設(利用人口21 戸50 名程度)で実証試験を開始した。装置前後の試料を毎月概ね2回採水し、大腸菌、大腸菌群、一般細菌、従属栄養細菌の変化を調べた。
小規模水供給システムにおいては、水需要のさらなる減少によって配水管内の流速が低下し、管内環境の悪化が懸念されることから、配水管内環境の管理という観点から効率的な維持管理方法について定量的に議論可能とすることを目的として調査および実験的検討を行った。
飲料水供給施設相当規模の水供給システムを利用・管理している集落を対象に、集落外の団体との維持管理作業における連携・協力状況、および、集落外の団体からの支援に帯する利用意向を整理することを目的とした質問紙調査を行った。
民間組織や水道事業体等と連携・協働した小規模水供給システム維持管理手法についてケーススタディの蓄積を行い、解析を行った。
地域と需要者に根ざした自律的で持続性の高い水道の一つのモデルを提示し、実践を通じてその有効性を検討した。
小規模水供給システムに適した小型紫外線消毒装置の候補として、紫外発光ダイオード(UV-LED)を光源とする流水殺菌装置を検討し、本年度は、集落規模での利用を念頭に、飲料水供給施設(利用人口21 戸50 名程度)で実証試験を開始した。装置前後の試料を毎月概ね2回採水し、大腸菌、大腸菌群、一般細菌、従属栄養細菌の変化を調べた。
小規模水供給システムにおいては、水需要のさらなる減少によって配水管内の流速が低下し、管内環境の悪化が懸念されることから、配水管内環境の管理という観点から効率的な維持管理方法について定量的に議論可能とすることを目的として調査および実験的検討を行った。
結果と考察
水質のタイプや諸条件について類型化し、水質検査の影響や人口当たりの費用等を解析し、水質検査費用の影響が大きい場合があることが分かった。簡易水道の1事業体当たりの給水人口は減少傾向にある。給水人口当たりの総配管延長(単位配管延長)が大きく給水原価に影響している。給水原価は、簡易水道の平均(297円/m3)に対して、過疎地にある人口5千人以下の簡易水道は333円/m3と1割以上高い。過疎地人口5千人未満の簡易水道のブロック別の給水原価は近畿ブロックにおいて最も高く、近畿圏ブロック内の簡易水道の経営状況には建設にかかる資本単価の影響が大きいことが分かった。
飲料水供給施設相当規模の水供給システムを利用・管理している集落の質問紙調査への回答結果より、集落外の団体と連携・協力をして維持管理作業を行っている集落は2割弱にすぎないことを把握できた。また、現時点では外部の団体からの支援に対する必要性は高くないが、支援を利用することへの抵抗感は低いことが明らかとなった。
地域と需要者に根ざした自律的で持続性の高い水道の一つのモデルを提示し、実践を通じてその有効性を検討した。
小型流水殺菌装置のUV-LED処理による不活化率は、一般細菌で最大2.8log, 従属栄養細菌で最大2.2logであった。UV-LED処理水は、水道水質基準の定める大腸菌数(100mL中に不検出)、一般細菌数(1mL中に100CFU以下)および水質管理目標設定項目として示された従属栄養細菌数の暫定目標値(1mL中に2000CFU以下)の全てを継続して満たした。本研究により,分散型水処理技術としてUV-LED装置を活用する可能性が示された。
実配水管網において管内蓄積物に関する実態調査を行った結果、マンガン(Mn)が蓄積物の重要な構成成分として挙げられた。室内実験によってMn蓄積過程を種々の管内流速条件で把握した結果、二酸化マンガン粒子の物理付着と2価マンガンイオンの化学酸化を介した蓄積の両方が管内流速によって促進されることを明らかにした。
飲料水供給施設相当規模の水供給システムを利用・管理している集落の質問紙調査への回答結果より、集落外の団体と連携・協力をして維持管理作業を行っている集落は2割弱にすぎないことを把握できた。また、現時点では外部の団体からの支援に対する必要性は高くないが、支援を利用することへの抵抗感は低いことが明らかとなった。
地域と需要者に根ざした自律的で持続性の高い水道の一つのモデルを提示し、実践を通じてその有効性を検討した。
小型流水殺菌装置のUV-LED処理による不活化率は、一般細菌で最大2.8log, 従属栄養細菌で最大2.2logであった。UV-LED処理水は、水道水質基準の定める大腸菌数(100mL中に不検出)、一般細菌数(1mL中に100CFU以下)および水質管理目標設定項目として示された従属栄養細菌数の暫定目標値(1mL中に2000CFU以下)の全てを継続して満たした。本研究により,分散型水処理技術としてUV-LED装置を活用する可能性が示された。
実配水管網において管内蓄積物に関する実態調査を行った結果、マンガン(Mn)が蓄積物の重要な構成成分として挙げられた。室内実験によってMn蓄積過程を種々の管内流速条件で把握した結果、二酸化マンガン粒子の物理付着と2価マンガンイオンの化学酸化を介した蓄積の両方が管内流速によって促進されることを明らかにした。
結論
以上の知見から、水質管理、施設などの現状の把握を行い、経済的な視点を含めた維持管理、持続性に課題があった。今後も様々な小規模水供給システムの施設についての情報収集及び調査を行い、水質管理を含む制度、維持管理、技術などの現状の把握や経済的な視点を含めた維持管理体制に関する情報収集及び調査・研究、情報共有方法の検討を行う。
公開日・更新日
公開日
2022-05-19
更新日
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