乱用薬物による神経毒性・依存症に対する診断・予防及び治療法に関する研究

文献情報

文献番号
200735060A
報告書区分
総括
研究課題名
乱用薬物による神経毒性・依存症に対する診断・予防及び治療法に関する研究
課題番号
H19-医薬-一般-023
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
鍋島 俊隆(名城大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
  • 山本経之(長崎国際大学 薬学部)
  • 鈴木 勉(星薬科大学(薬品毒性学教室))
  • 大熊誠太郎(川崎医科大学(薬理学教室))
  • 新田淳美(名古屋大学 医学部附属病院 )
  • 曽良一郎(東北大学 大学院 医学系研究科)
  • 伊豫雅臣(千葉大学 大学院 医学研究院)
  • 西川 徹(東京医科歯科大学 医学部)
  • 池田和隆(東京都精神医学総合研究所(分子精神医学研究部門))
  • 氏家 寛(岡山大学 大学院 医歯学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年は覚せい剤や麻薬による乱用事犯の若年化が進み、薬物依存は深刻な社会問題である.本研究では基礎研究者および臨床医を中心とした2つのグループで薬物依存関連分子の検索、それをターゲットとした創薬、既存薬による治療戦略および診断法や依存尺度の精度について検討し、成果を相互に検証することで薬物依存の予防や有効な治療法の確立を目指す.
研究方法
鍋島俊隆をリーダーとする基礎研究グループでは、乱用薬物依存治療薬候補となる既存薬や新規治療薬の標的分子の検証を詳細に進めた.曽良一郎をリーダーとする臨床研究では、診断法の開発および薬物依存の関連遺伝子の検索を中心に行った.基礎で検索された分子については臨床でも関与しているかどうか臨床研究で検索された遺伝子はその生理作用を基礎研究で検討し、10名の分担研究者が専門的見地から共同して解析を行った.
結果と考察
基礎研究についてはオレキシンや新規遺伝子shati、piccoloの依存形成関与を見出した.新規カルシウム動態調節剤を用いて依存とカルシウムチャンネルの関係を明らかにし、治療薬に繋がる成果を得た.薬物依存における '再燃'現象について、ラットを用いた薬物自己投与法により再燃とストレスの関係を検討し、生体がストレスを受けた時に放出される副腎皮質刺激ホルモンが再燃を誘導することを確認した.また違法ドラックであるメチロンの毒性等を調査し、メタンフェタミンより強いドパミントランスポーター阻害作用を認めた.依存患者の診断法を定義し、多施設による臨床研究を開始した。依存患者の遺伝子解析によりdysbindinというタンパクをコードする遺伝子に変異を見出した.海外で認知症治療薬として使用されているgalantamine や抗生物質mithramycinがマウスにおけるフェンシクリジンやメタンフェタミン誘発性の行動異常を抑制することも報告した.これらは安全性が確認されており短期間で薬物依存治療薬となる可能性が高い.新規の薬物依存関連遺伝子としてmrt1が報告された.
結論
今回調査した複数の関連化合物の依存形成機構や神経毒性の発現機序を解明する情報が多く蓄積された.予防法や治療方法についての指針も幾つか提案され、依存重症度の評価法、神経画像を用いた診断法の展開、依存治療薬の候補タンパクの同定等多くの新知見を得た.

公開日・更新日

公開日
2008-04-30
更新日
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