新しい生体接着理論に基づく血管付着機能を有するステントの開発に関する研究

文献情報

文献番号
200713007A
報告書区分
総括
研究課題名
新しい生体接着理論に基づく血管付着機能を有するステントの開発に関する研究
課題番号
H17-フィジ-一般-004
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
岸田 晶夫(国立大学法人東京医科歯科大学 生体材料工学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 樋上 哲哉(札幌医科大学医学部外科学第二講座)
  • 増澤 徹(茨城大学工学部)
  • 木村 孝之(茨城大学工学部)
  • 山本 芳郎(株式会社ミワテック)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(身体機能解析・補助・代替機器開発研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
28,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患や動脈瘤の新しい治療技術の一つとして、ステントおよびステントグラフト(ステント法)が注目されている。ステント法の問題としては血管内位置固定およびステントグラフトの血管への密着不足が挙げられる。本研究事業では、新しい生体組織接着理論に基づくステント等の人工材料と生体との接着の新手法の基礎研究とそれを応用した血管接着性ステントの開発を目的とした。
研究方法
最終年度である本年度は、昨年度までに得られた汎用超音波メスを用いた接着の最適条件を参考に、ステント固定に必要な具体的な条件の探索を行い、それに基づいて動物実験用の試作品を作製し、性能を評価した。
結果と考察
血管内で固定するためには、固定用デバイスは小型である必要がある。汎用超音波メスは、振動による摩擦熱を用いるため、振幅を増大させる必要があり、小型化が困難である。本研究では、微小振幅で接合を行うための条件を探索した結果、加温装置を別に備えることで、接着作用部の大幅な小型化を図った。加熱方法については、昨年度までに、セラミックヒータやレーザー光の熱源ターゲット照射による方法を検討した結果、将来的にはレーザー光加熱が有望なものの、技術開発要素が大きいため、本研究ではセラミックヒータを用いた加温法について検討した。ステントグラフトに用いる素材を種々の材料から選択した。血管内固定を考慮して、人工血管や人工心臓に用いられているセグメント化ポリウレタンが適切であると考え、これと血管組織を接着する条件を設定し、装置を試作した。この装置を用いて、ブタを用いた血管内留置実験を行ったところ、大動脈内で30分間ではあるが、ステントの拡張力が働かない状態で良好な接着を示した。また、ステントの位置をリアルタイムで決定するためのアルゴリズムについて検討し、既存のデータ収集装置を用いて可能であることを示した。臨床応用のためのプロタイプのための問題点として、より微小な加熱機構が必要であることが明らかとなった。既存品のセラミックヒータは約5mm角であるが、これを1mm角に小型化できれば、血管内接着用プロトタイプが開発できる。
結論
本年度の検討により、ステント血管内固定装置のアウトラインが明確になり、実用化のためのプロトタイプ開発のための基礎データが得られた。本技術はステントの固定だけでなく、縫合糸による生体接合にかわる新しい治療機器開発の可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2008-04-21
更新日
-

文献情報

文献番号
200713007B
報告書区分
総合
研究課題名
新しい生体接着理論に基づく血管付着機能を有するステントの開発に関する研究
課題番号
H17-フィジ-一般-004
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
岸田 晶夫(国立大学法人東京医科歯科大学 生体材料工学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 樋上 哲哉(札幌医科大学医学部)
  • 増澤 徹(茨城大学工学部)
  • 木村 孝之(茨城大学工学部)
  • 山本 芳郎(株式会社ミワテック)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(身体機能解析・補助・代替機器開発研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究事業では、新しい生体組織接着理論に基づくステント等の人工材料と生体との接着の新手法の基礎研究とそれを応用した血管接着性ステントの開発を目的とする。ここで開発する生体接着技術は、我々の共同研究から導き出された、ナノ振動、熱および圧着強度のバランスによって、組織中の結合性タンパク質が構造変性し、これによって生体組織どうしあるいは生体組織と人工材料の接着を可能にする技術である。
研究方法
汎用超音波メスを用いた生体接着の最適条件を参考に、ステント固定用の接着装置に必要な具体的な条件の探索を行い、それに基づいて動物実験用の試作品を作製し、性能を評価した。ステントグラフト用の素材を探索するため、種々の素材について生体接着性を評価した。
結果と考察
汎用超音波メスを用いた検討により、加熱を主体としナノ振動を負荷することで、きわめて低いエネルギーでステントグラフト用素材および生体組織同士の接着が可能であることを見いだした。得られた条件を元に、生体接着装置を試作し性能を評価したところ、ステント固定(生体―人工物接着)および生体―生体接着のいずれの目的にも応用が可能な、新しい機構であることを見いだした。ステント固定装置の実現には血管内で固定する固定用デバイスは小型である必要がある。汎用超音波メスは、振動による摩擦熱を用いるため、振幅を増大させる必要があり、小型化が困難である。本研究では、微小振幅で接合を行うための条件を探索した結果、加温装置を別に備えることで、接着作用部の大幅な小型化を図った。ステントグラフトに用いる素材は、血管内固定を考慮して、人工血管や人工心臓に用いられているセグメント化ポリウレタンが適切であると判断した。試作装置を用いて、ブタを用いた血管内留置実験を行ったところ、大動脈内で30分間ではあるが、ステントの拡張力が働かない状態で良好な接着を示した。臨床応用のためのプロタイプのための問題点として、より微小な加熱機構が必要であることが明らかとなった。
結論
本研究の結果より、ステント血管内固定装置のアウトラインが明確になり、実用化のためのプロトタイプ開発のための基礎データが得られた。本技術はステントの固定だけでなく、縫合糸による生体接合にかわる新しい治療機器開発の可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2008-04-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-12-16
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200713007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究事業では、新しい生体組織接着理論に基づくステント等の人工材料と生体との接着の新手法の基礎研究とそれを応用した血管接着性ステントの開発を目的とする。ここで開発する生体接着技術は、我々の共同研究から導き出された、ナノ振動、熱および圧着強度のバランスによって、組織中の結合性タンパク質が構造変性し、これによって生体組織どうしあるいは生体組織と人工材料の接着を可能にする技術である。
臨床的観点からの成果
ステント及びステントグラフト固定法について新しい方法論を提案し、その実現可能性をモデル実験によって実証した。また、本研究で開発した人工材料-血管の接着技術は、広範な組織接合技術への展開が可能であることが示唆された。ステント固定化用の血管内接着装置の開発には、超小型の加熱・振動・圧着機構が必要であるが、これらはそのまま微小な血管や組織の接合に流用することが可能であり、今後の発展が期待できる。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
昨今の外科医療に対する医師の過重労働が問題となっている。外科医の技術向上、外科技術の安全性向上および高度な技術が必要な縫合の補助手段として、本研究で開発された生体接着技術の応用が期待される。具体的には、脳神経外科領域での止血技術としての応用や、細口径血管の吻合などについて技術開発の目処が付きつつある。
その他のインパクト
2007年9月12日に東京国際フォーラムで開催されたイノベーションジャパン2007にて「生体組織接着組織」として技術説明会を開催した。

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
10件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
41件
学会発表(国際学会等)
13件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
K.Nam, T.Kimura, A.Kishida
Influence of cross-linking on physicochemical and biological properties of collagen-phospholipid polymer hybrid gel
Trans. Mater. Res. Soc. Jpn. , 31 (3) , 735-738  (2006)
原著論文2
K,Nam, T.Kimura, A.Kishida
Preparation and characterization of cross-linked collagen-phospholipid polymer hybrid gels
Biomaterials , 28 , 1-8  (2007)
原著論文3
T.Kimura, S.Iwai, A.Kishida, et al.
Preparation of poly(vinyl alcohol)/DNA hydrogels via hydrogen bonds formed on ultra-high @ressurization and controlled release of DNA from the hydrogels for gene delivery
J. Artif. Org. , 10 , 104-108  (2007)
原著論文4
木村剛、柴久美子、岸田晶夫、他
ステントグラフト内挿術での応用を目指した生体組織-高分子材料接着装置の開発
東京医科歯科大学生体材料工学研究所年報 , 41 , 11-14  (2007)
原著論文5
高橋洋一、柴田隆行、増澤徹、他
ニッケル電鋳金型を用いたマイクロインプリント技術の開発
精密工学会秋季大会学術論文集 , 388-389  (2005)
原著論文6
吉田典央、増澤徹、岸田晶夫、他
細胞機能制御のためのMEMS細胞加振デバイスの開発
電気学会研究会資料、リニアドライブ研究会 ,  (5) , 57-60  (2005)
原著論文7
T.Kimura, K.Takasahki, T.Masuzawa
Characteristics of a tw--dimensional integrated magnetic sensor for position sensing and motor control
Trans. Elect. Electron. Eng., IEEJ Trans. , 1 , 188-193  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-