植込み型突然死防止装置の開発

文献情報

文献番号
200713001A
報告書区分
総括
研究課題名
植込み型突然死防止装置の開発
課題番号
H15-フィジ-指定-001
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
杉町 勝(国立循環器病センター研究所先進医工学センター循環動態機能部)
研究分担者(所属機関)
  • 稲垣正司(国立循環器病センター研究所先進医工学センター循環動態機能部 )
  • 川田 徹(国立循環器病センター研究所先進医工学センター循環動態機能部 )
  • 宍戸稔聡(国立循環器病センター研究所先進医工学センター循環動態機能部 )
  • 上村和紀(国立循環器病センター研究所先進医工学センター循環動態機能部)
  • 鎌倉史郎(国立循環器病センター内科心臓部門)
  • 砂川賢二(九州大学大学院医学研究院循環器内科)
  • 久田俊明(東京大学新領域創成科学研究科)
  • 児玉逸雄(名古屋大学環境医学研究所)
  • 吉澤 誠(東北大学情報シナジーセンター先端情報技術研究部)
  • 井上 博(富山大学医学部第二内科)
  • 三澤 裕(テルモ株式会社研究開発センター)
  • 高山修一(オリンパス株式会社研究開発センター)
  • 岡林一郎(パナソニック四国エレクトロニク株式会社開発部門 ヘルスケア開発センター システム第1グループ)
  • 保谷和男(株式会社日立超LSIシステムズ経営戦略センタ 技術戦略室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(身体機能解析・補助・代替機器開発研究)
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
101,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
心臓突然死を防止する新しい植込み型治療機器を国内で開発、製品化することを目的として、以下の目標を達成する。
1.植込み型除細動器(ICD)製造に関連した既存技術に関して先行する欧米企業に追いつき、国内で植込み型治療機器を開発、製品化できる開発基盤を整える。
2.外国企業が席巻している治療機器分野に参入するために、既存のICDにない新しい機能を開発する。
研究方法
1.最新の心臓再同期療法機能付きICD(CRT-D)機能に加え、迷走神経刺激機能、ユビキタス病態モニタ機能、冠静脈除細動機能、高速不整脈診断の4つの新規独自機能を備えた試作機を開発し、機能評価を行った。
2.1)不整脈発作時の失神を防ぐため、不整脈診断の高速化および除細動エネルギーの低減によって除細動機能を高機能化した。2)心不全の病態を遠隔モニタするシステムを開発した。3)致死性不整脈の発生を予防するため、迷走神経刺激による上流治療の効果を確認し、その機序を検討した。
結果と考察
1.高密度実装技術によって容積350mlの試作機を開発し、動物への慢性植込みを行った。CRT-D機能の動作を確認するとともに、冠静脈電極による低エネルギー除細動機能、迷走神経刺激による不整脈抑制機能、コンダクタンス測定による病態モニタ機能、不整脈高速診断機能を評価、確認した。長期植え込みにより6ヶ月間以上の耐久性を確認した。また、生体植込み用アンテナおよび通信モジュール・携帯電話型中継機を開発し、携帯電話網を利用した病態の遠隔モニタを可能とした。
2.1)心臓に装着した加速度センサを用いた不整脈診断アルゴリズムの開発やシミュレーションによる最適な心外膜電極配置の設計を行い、更なる診断高速化や除細動エネルギーの低減を検討した。また、心筋局所冷却が直流除細動時に除細動を促す機序を明らかにし、超低エネルギー除細動の可能性を示した。2)肺インピーダンス測定から心拍出量および肺うっ血の変化を長期間モニタできることを確認した。3) 大型動物においても迷走神経刺激の心不全治療効果を確認した。また、迷走神経刺激は幹細胞移植による心筋再生治療の効果を増強することを明らかにし、再生医療への応用可能性を示した。迷走神経刺激治療の機序に関して、急性虚血時の心筋保護作用が主に徐脈作用によることや慢性心不全のナトリウム・体液貯留に効果があることを示した。
結論
最新のCRT-D機能に加えて、4つの新規独自機能を搭載した最終試作機を完成させた。次々世代のICDに向けて、低エネルギー除細動等の基礎研究を進めた。

公開日・更新日

公開日
2008-06-25
更新日
-

文献情報

文献番号
200713001B
報告書区分
総合
研究課題名
植込み型突然死防止装置の開発
課題番号
H15-フィジ-指定-001
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
杉町 勝(国立循環器病センター研究所先進医工学センター循環動態機能部)
研究分担者(所属機関)
  • 稲垣正司(国立循環器病センター研究所先進医工学センター循環動態機能部)
  • 川田 徹(国立循環器病センター研究所先進医工学センター循環動態機能部)
  • 宍戸稔聡(国立循環器病センター研究所先進医工学センター循環動態機能部)
  • 上村和紀(国立循環器病センター研究所先進医工学センター循環動態機能部)
  • 鎌倉史郎(国立循環器病センター内科心臓部門)
  • 砂川賢二(九州大学大学院医学研究院循環器内科)
  • 久田俊明(東京大学新領域創成科学研究科)
  • 児玉逸雄(名古屋大学環境医学研究所)
  • 吉澤 誠(東北大学情報シナジーセンター先端情報技術研究部)
  • 井上 博(富山大学医学部第二内科)
  • 佐藤隆幸(高知大学医学部循環制御学)
  • 三澤 裕(テルモ株式会社研究開発センター)
  • 高山修一(オリンパス株式会社研究開発センター研究開発統括室)
  • 岡林一郎(パナソニック四国エレクトロニク株式会社開発部門 ヘルスケア開発センター システム第1グループ)
  • 保谷和男(株式会社日立超LSIシステムズ経営戦略センタ 技術戦略室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(身体機能解析・補助・代替機器開発研究)
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
心臓突然死を防止する新しい植込み型治療機器を国内で開発、製品化するために、以下の目標を達成する。
1.植込み型除細動器(ICD)製造の関連技術に関して先行する欧米企業に追いつき、国内で植込み型治療機器を開発、製品化できる基盤を整える。
2.欧米企業が席巻している治療機器分野に参入するために、既存のICDにない新しい機能を開発する。
研究方法
1.既存のICDの機能・構造・知財について調査を行い、電極・電池・制御回路・生体適合材料等の基礎技術を確立した。段階的に試作機を作成し、動物への慢性植え込み実験により各機能を検証した。
2.従来のICDの限界、1)心室細動発生時の失神や除細動に伴うショックを逃れることができない、2)患者の病態を遠隔モニタする機能がない、3)致死性不整脈の予防ができない、を克服する独自機能を開発した。
結果と考察
1.最新ICDと同等機能の試作機を開発するとともに、新規独自機能の実現のために、冠静脈電極除細動用回路・冠静脈リード、迷走神経刺激用回路・神経電極、病態モニタ用の計測回路を開発した。さらに、植込み通信モジュール・携帯電話型中継機を開発し、携帯電話網を利用した病態の遠隔モニタを可能とした。高密度実装基板・デジタル部ハイブリッド化により、全機能を搭載した最終試作機の容積を350mlにまとめた。動物への慢性植え込み実験を行い、6ヶ月の安定動作を確認した。試作機の開発を通し、国内で植込み型治療機器を開発・製品化する基盤が整った。
2.1) 世界最高性能の心臓シミュレータを開発して電極配置を設計し、従来の約1/2エネルギーで除細動可能な冠静脈除細動システムを開発した。左右心室心電図・心室容積波形を用いて不整脈を高速に診断する方法を開発した。意識消失前に小さなショックで治療を行うことが可能となった。また、心筋冷却等の新しい原理に基づく除細動法について基礎研究を行った。2) ICDを用いた肺インピーダンス計測によって心拍出量・肺動脈楔入圧をモニタする方法を開発し、遠隔在宅患者において心不全の病態の連続モニタが可能となった。3) 迷走神経刺激が心筋梗塞後の心臓リモデリングや致死性不整脈を抑制し、心不全の予後を改善することを明らかにした。β遮断薬やACE阻害剤、細胞移植治療と併用した場合にも、迷走神経刺激が相加的な治療効果を発揮することが示され、迷走神経刺激機能を搭載したICDが幅広い病態の心不全患者に対して有効で安全な治療法となると期待された。
結論
最新のICDに対して十分な競争力を持つ植込み型治療機器を開発・試作し、国産植込み型治療機器の実現に一歩を踏み出した。

公開日・更新日

公開日
2008-06-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200713001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
研究グループが開発した迷走神経刺激による心不全治療は新しい治療法として世界的に注目を集めている。副交感神経系の心臓保護作用の機序についても今回の基礎研究から多くの知見を得た。また、電極の設計に使用した心臓シミュレータはその突出した性能から国際的に高い評価を受けている。計算科学の医学・医療応用は今後大きな発展が期待される分野であるが、本研究はそのモデル研究となっている。その他にも、除細動法や不整脈診断技術に関する研究では、全く新しいコンセプトに基づく方法を提案し、今後の発展が期待されている。
臨床的観点からの成果
本研究で開発しされた機器によって、従来のICDの限界、1)心室細動発生時の失神や除細動に伴うショックを逃れることができない、2)患者の病態を遠隔モニタする機能がない、3)致死性不整脈の予防ができない、が克服され、ICD植え込み患者の予後およびQOLの改善が期待できる。また、国民に最高機能で安全・安心な国産治療機器を提供することが可能となる。さらに、国産機ゆえに内外価格差が解消され、医療費の低減にも資する。
ガイドライン等の開発
本研究に関連して策定されたガイドラインはない。
その他行政的観点からの成果
本研究の成果は、第74回総合科学技術会議(平成20年4月10日)において、産業の国際競争力を強化し、健康な社会を構築する革新的技術として、iPS細胞再生医療技術、低侵襲医療機器技術、高齢者・障害者自立支援技術、生活支援ロボット技術とともに取り上げられた。
その他のインパクト
本研究ではこれまでに17件の特許出願を行っており、その多くは国際特許も出願している。
本研究で開発された独創的な医療機器は、欧米の機器により寡占されている世界の心不全治療機器市場(1兆円)でわが国が大きなシェアを獲得することを可能とし、国内医療機器産業の活性化や新規産業の創出に大きく貢献する。

発表件数

原著論文(和文)
16件
原著論文(英文等)
206件
その他論文(和文)
13件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
345件
学会発表(国際学会等)
99件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計17件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hirabayashi S, Inagaki M, Hisada T.
Effects ofWall Stress on the Dynamics of Ventricular Fibrillation: A Simulation Study Using a Dynamic Mechanoelectric Model of Ventricular Tissue
J Cardiovasc Electrophysiol , 19 (7) , 730-739  (2008)
原著論文2
Santos Filho E, Saijo Y, Tanaka A, et al.
Detection and quantification of calcifications in intravascular ultrasound images by automatic thresholding
Ultrasound in Medicine & Biology , 34 (1) , 160-165  (2008)
原著論文3
Harada M, Honjo H, Kodama I, et al.
Moderate hypothermia increases the chance of spiral wave collision in favor of self-termination of ventricular tachycardia/fibrillation
Am J Physiol (Heart Circ Physiol)  (2008)
原著論文4
Kawada T, Yamazaki T, Akiyama T, et al.
Angiotensin II attenuates myocardial interstitial acetylcholine release in response to vagal stimulation.
Am J Physiol Heart Circ Physiol , 293 , 2516-2522  (2007)
原著論文5
Kawada T, Kitagawa H, Yamazaki T, et al.
Hypothermia reduces ischemia- and stimulation-induced myocardial interstitial norepinephrine and acetylcholine releases.
J Appl Physiol , 102 , 622-627  (2007)
原著論文6
Mizuno M, Kamiya A, Kawada T, et al.
Muscarinic potassium channels augment dynamic and static heart rate responses to vagal stimulation
Am J Physiol Heart Circ Physiol , 293 , 1564-1570  (2007)
原著論文7
Uemura K, Li M, Tsutsumi T, et al.
Efferent vagal nerve stimulation induces tissue inhibitor of metalloproteinase-1 in myocardial ischemia-reperfusion injury in rabbit.
Am J Physiol Heart Circ Physiol , 293 , 2254-2261  (2007)
原著論文8
Monden Y, Kubota T, Tsutsumi T, et al.
Soluble TNF receptors prevent apoptosis in infiltrating cells and promote ventricular rupture and remodeling after myocardial infarction.
Cardiovasc Res , 73 , 794-805  (2007)
原著論文9
Yamazaki M,Honjo H,Kodama I,et al.
Mechanisms of destabilization and early termination of spiral wave reentry in the ventricle by a class III antiarrhythmic agent, nifekalant
Am J Physiol (Heart Circ Physiol) , 292 , 539-548  (2007)
原著論文10
Zheng C, Kawada T, Li M, et al.
Reversible vagal blockade in conscious rats using a targeted delivery device.
J Neurosci Methods , 156 , 71-75  (2006)
原著論文11
Kuwabara M, Kakinuma Y, Ando M, et al.
Nitric oxide stimulates vascular endothelial growth factor production in cardiomyocytes involved in angiogenesis.
J Physiol Sci , 56 , 95-101  (2006)
原著論文12
Zhang Y, Kakinuma Y, Ando M, et al.
Acetylcholine inhibits the hypoxia-induced reduction of connexin43 protein in rat cardiomyocytes.
J Pharmacol Sci , 101 , 214-222  (2006)
原著論文13
Kawada T, Yamazaki T, Akiyama T, et al.
Effects of Ca2+ channel antagonists on nerve stimulation-induced and ischemia-induced myocardial interstitial acetylcholine release in cats
Am J Physiol Heart Circ Physiol , 291 , 2187-2191  (2006)
原著論文14
Kawada T, Miyamoto T, Miyoshi Y, et al.
Sympathetic neural regulation of heart rate is robust against high plasma catecholamines
J Physiol Scil , 56 , 235-245  (2006)
原著論文15
Kawada T, Kitagawa H, Yamazaki T, et al.
Hypothermia reduces ischemia- and stimulation-induced myocardial interstitial norepinephrine and acetylcholine releases
J Appl Physiol , 102 , 622-627  (2006)
原著論文16
Uemura K, Kamiya A, Hidaka I, et al.
Automated drug delivery system to control systemic arterial pressure, cardiac output, and left heart filling pressure in acute decompensated heart failure.
J Appl Physiol  (2006)
原著論文17
Kakinuma Y, Ando M, Kuwabara M, et al.
Acetylcholine from vagal stimulation protects cardiomyocytes against ischemia and hypoxia involving additive nonhypoxic induction of HIF-1.
FEBS Lett , 579 , 2111-2118  (2005)
原著論文18
Otomo K, Noda T, Nakagawa E, et al.
Assessment of ability of activation mapping by duodecapolar catheter to diagnose complete isthmus block utilizing electroanatomical mapping system.
J Interv Card Electrophysiol , 14 , 183-192  (2005)
原著論文19
Sugimachi M, Sunagawa K
Bionic cardiovascular medicine. Functional replacement of native cardiovascular regulation and the correction of its abnormality.
IEEE Eng Med Biol Mag. , 24 , 24-31  (2005)
原著論文20
Uemura K, Kawada T, Kamiya A, et al.
Prediction of circulatory equilibrium in response to changes in stressed blood volume.
Am J Physiol Heart Circ Physiol  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-