マイクロロボティクスを応用したナノテク心筋の開発

文献情報

文献番号
200712014A
報告書区分
総括
研究課題名
マイクロロボティクスを応用したナノテク心筋の開発
課題番号
H17-ナノ-若手-009
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
白石 泰之(東北大学加齢医学研究所)
研究分担者(所属機関)
-
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

文献情報

文献番号
200712014B
報告書区分
総合
研究課題名
マイクロロボティクスを応用したナノテク心筋の開発
課題番号
H17-ナノ-若手-009
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
白石 泰之(東北大学加齢医学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 山家 智之(東北大学加齢医学研究所)
  • 西條 芳文(東北大学大学院医工学研究科)
  • 増本 憲泰(日本工業大学)
  • 梅津 光生(早稲田大学理工学術院)
  • 田中 明(福島大学理工学類)
  • 吉澤 誠(東北大学サイバーサイエンスセンター)
  • 藤本 哲男(芝浦工業大学)
  • 佐藤 文博(東北大学大学院医工学研究科)
  • 本間 大(トキ・コーポレーション)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、ナノテク形状記憶合金線維を応用して、心筋の機能を補助する完全埋込型心室補助装置を開発することを目的とする。これは、超小型のマイクロマシンかも可能な機械式心筋アクチュエータによって、心臓の拍動を補助するものである。
研究方法
「心不全の状態において本来補助が必要なのは心筋の収縮である。」心不全に対知る補助循環のメタコンセプトは、低下した心臓ポンプ機能の心筋収縮をサポートすることによって達成すると考え、高度に生体と協働する機能をもった人工心筋システムの開発を進めた。これは、心臓の外面に装着され、従来の人工心臓などのように血栓の心配もなく、人工弁などの耐久性の問題もない。労作性狭心症発作などによる心不全時には、”必要なときに必要なだけ”補助する心室補助システムが必要であると考え、高効率で体格の小さな患者にとって胸腔内に余裕を持って埋め込める形状記憶線維編み込み型心室補助システムの開発を進めた。
結果と考察
平成17年度には、100マイクロメートル程度の直径を有する形状記憶合金の組み合わせによって実現できる心室補助装置の開発に特に重点を置き、プロトタイプモデルの作成と、動物実験による血行力学的効果の基礎検討を行った。平成18年度は、制御性の検討と、より有効な拍出補助を実現するメカニズムの改良を行った。平成19年度は、径方向収縮補助効率の増大を目標とした新たな装置機構の考案と慢性実験への展開を図った。動物実験による基礎性能評価では、健常成山羊心臓心膜内に装着した装置の駆出補助性能を調べ、有効な左室収縮期圧上昇および一回拍出量の増大を得た。また、長期慢性実験用プロトタイプモデルの試作検討を進め、1ヶ月以上の慢性実験を実施した。
結論
本研究の成果から、人工心筋駆動による拍動補助の基礎的な有効性が確かめられつつある。慢性実験による生理学的効果と力学的補助メカニズムを精査することにより、今後本システムの適応となるべき心不全本態の収縮形態と人工心筋による機能的形成に関する方法、および心臓壁収縮運動の人工的補助による血圧反射といった生理学的応答の検証法について、課題が示されたが、本研究の成果によって人工心筋による心補助効果の有効性は示唆され、心臓のかたちと機能の両面からアプローチする新たな循環補助の方法論を構築しつつある。

公開日・更新日

公開日
2008-06-25
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200712014C

成果

専門的・学術的観点からの成果
微細ナノテク技術を応用した形状記憶合金線維を応用することにより、マイクロロボティクスを基盤技術とする機械式の人工心筋開発を行い、成山羊を用いた動物実験において有効な血行力学的心室補助効果を得た。心臓の外部から力学的収縮を付加することで、血栓形成の問題がなく、“必要なときに必要なだけ”駆出支援を行うという新しいコンセプトに基づき、最適条件下において約30年の高耐久性をもつ微細アクチュエータ線維を用いて失った心機能を補助する完全埋込式システムが具現化できた。
臨床的観点からの成果
微細アクチュエーション技術を基盤として、ナノテク応用人工心筋を開発し、有効な血行力学的補助効果を示したことで、循環補助に関する新しい方法論を提示でき、その基礎を確立した。さらに、拡張型心筋症などの重症心不全の治療のみならず、心奇形に対する血行再建や心室瘤に対する左室形成時の心筋アクチュエータへ適用可能性も示されつつある。労作性狭心症などの高齢患者では、常時循環補助する必要はなく、本研究のナノテク形状記憶合金線維を応用した人工心筋の臨床応用によって患者の社会復帰を支援するデバイスとなりうる。
ガイドライン等の開発
なし。
その他行政的観点からの成果
今後不可避的に到来する超高齢化社会において増加する老齢心不全患者が、人工心筋によって社会復帰できれば、必要であった医療福祉費の軽減が期待できるだけでなく、社会活動によって経済効果も得られ、社会学的な意義も大きい。
その他のインパクト
日経産業新聞(2007年8月7日一面トップ)「人工心筋、拍動保つ命綱」、ベストハウス123(2008年4月9日)「すごいワイヤ、人工心筋」

発表件数

原著論文(和文)
11件
原著論文(英文等)
34件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
25件
学会発表(国際学会等)
38件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
9件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shiraishi Y, Yambe T, et al.
Development of an Artificial Myocardium using a Covalent Shape-memory Alloy Fiber and its Cardiovascular Diagnostic Response
Conf Proc IEEE Eng Med Biol Soc , 1 (1) , 406-408  (2005)
原著論文2
Uematsu M, Shiraishi Y, Yambe T, et al.
An innovative approach to evaluate a cardiac function based on surface measurement
Conf Proc IEEE Eng Med Biol Soc , 7 , 7640-7643  (2005)
原著論文3
Yambe T, Shiraishi Y, et al.
Development of the pulsation device for rotary blood pumps
Artif Organs , 29 (11) , 912-915  (2005)
原著論文4
Wang Q, Yambe T, Shiraishi Y, et al.
Non-blood contacting electro-hydraulic artificial myocardium (EHAM) improves the myocardial tissue perfusion
Technol Health Care , 13 (4) , 229-234  (2005)
原著論文5
Shiraishi Y, Yambe T, et al.
Effect of mechanical assistance on cardiac function by using a shape memory alloy fibred artificial myocaridum
IFMBE Proc , 12  (2005)
原著論文6
Uematsu M, Shiraishi Y, et al.
Regional myocardial behaviour on cardiac surface under arrhythmic conditions
IFMBE Proc , 12  (2005)
原著論文7
Yambe T, Shiraishi Y, et al.
Development of the pulsation device for rotary blood pumps
Artif Organs , 29 (11) , 912-915  (2005)
原著論文8
Shiraishi Y, Yambe T, et al.
Support mechanism of a newly-designed artificial myocardium using shape memory alloy fibres
IFMBE Proc , 14 , 3036-3039  (2006)
原著論文9
Shiraishi Y, Yambe T, et al.
A newly-designed myocardial assist device using a sophisticated shape memory alloy fibre
Biocybernetics and Biomedical Engineering , 27 (1) , 147-154  (2006)
原著論文10
Shiraishi Y, Yambe T, et al.
Preliminary study on the functional reproduction of an artificial myocaridum using covalent shape memory alloy fibre based on control engineering
IEEE Proc SICE-ICCAS , 1734-1737  (2006)
原著論文11
Okazaki T, Ebihara S, Shiraishi Y, Yambe T, et al.
Macrophage colony-stimulating factor improves cardiac function after ischemic injury by inducing vascular endothelia growth factor production and survival of cardiomyocytes
Am J Pathology , 171 (4) , 1093-1103  (2007)
原著論文12
Shiraishi Y, Yambe T, et al.
Morphological approach for the functional improvement of an artificial myocardial assist device using shape memory alloy fibres
Conf Prof IEEE Eng Med Biol Soc , 2007 (2007) , 3974-3977  (2007)
原著論文13
白石泰之
極細の形状記憶合金を用いた機械式人工心筋ユニットの開発
未来医学 , 12 , 68-71  (2006)
原著論文14
植松美幸、白石泰之、山家智之、梅津光生ほか
左心室形成術における切除線決定のための診断法に関する基礎的検討
生体医工学 , 43 (4) , 653-660  (2005)
原著論文15
白石泰之、山家智之ほか
形状記憶合金アクチュエータによる心筋補助
電気学会資料 , 6 (60) , 65-68  (2006)
原著論文16
白石泰之、梅津光生ほか
心臓血管系に整合する人工血管開発のための医工学的評価手法
J Adaptation Med , 10 (2) , 14-23  (2006)
原著論文17
山家智之
フルードパワーシステムと人工心臓、補助循環、人工心筋
フルードパワーシステム , 37 (5) , 48-51  (2006)
原著論文18
白石泰之、山家智之ほか
生体心臓の構造を考慮した人工心筋開発の試み
日本機械学会講演論文集 , 6 (65) , 238-239  (2006)
原著論文19
白石泰之、山家智之ほか
人工心筋補助のための生体心臓メカニクスの基礎検討
日本機械学会講演論文集 , 7 (49) , 433-434  (2007)
原著論文20
白石泰之、山家智之ほか
心室と心不全のメカニクスモデリングに基づく人工的心筋補助の試み
電気学会資料 , 7 (48) , 45-52  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-