ラベル化造影剤を用いた超音波によるがんの超早期診断システムの研究開発

文献情報

文献番号
200712008A
報告書区分
総括
研究課題名
ラベル化造影剤を用いた超音波によるがんの超早期診断システムの研究開発
課題番号
H17-ナノ-一般-013
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
大川 清(東京慈恵会医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 田尻久雄(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 松藤千弥(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 宮本幸夫(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 松浦知和(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 石橋由朗(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 山田恭輔(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 相澤 守(明治大学 理工学部)
  • 日下部守昭(東京大学大学院農学生命科学)
  • 伊藤貴司(アロカ(株)研究所)
  • 射谷和徳(アロカ(株)研究所)
  • 阿部正彦(東京理科大学 理工学部)
  • 酒井秀樹(東京理科大学 理工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
24,447,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
浸潤転移など癌の悪性度を生体に優しい低侵襲下に早期に判定する診断法の確立は国民健康維持の必須要項と考えられる。
癌の早期浸潤マーカーのCD147を標的分子とし、安全性の高い新規開発マイクロ・ナノバブル超音波造影剤(バブルと略)にCD147高親和性物質(抗体やアプタマー)を標識して分子標的バブルを作製し、病巣に集積させ、臨床で汎用される超音波診断法で悪性度の高い微小癌を極めて早期に画像化診断する。さらに、抗癌剤等を包含した標識バブルを病巣に集積させ、収束超音波を利用した治療システム構築の基礎技術を開発する。
研究方法
昨年度事業までの結果を踏まえ
1.バブルの生産性・均一性・安定性の更なる改良
2.抗CD147抗体標識バブルの作製効率化とバブルの細胞選択集積性・生体内安定性向上の検討
3.FMCW法・パルス圧縮法を利用したバブルの生体内でのより高感度検出法の開発 
を行った。
結果と考察
1.生体安定性で生分解性に富む優れた2種類の界面活性剤 を新規に合成し、ナノサイズバブルの調製に成功した。また、超音波診断装置を用いて、新規界面活性剤により調製したナノサイズバブルの画像化に成功した。
2.CD147高親和性単クロン抗体(抗CD147抗体)標識のバブル(0.06-10μm)を作製した。抗体標識確認のモデルとして蛍光蛋白標識PEGリン脂質でもバブル調製を行った。蛍光蛋白は、気泡の散乱光軽減のため、励起波長と蛍光波長差の大きいKeimaを用いた。共焦点レーザー顕微鏡観察でバブル界面のKeimaの蛍光を確認した。
3.同様の手法を用いて抗CD147抗体標識バブルを調製し、肝細胞癌の三次元培養癌モデル内に還流投与した。抗体標識バブルは10-20分で癌細胞表面CD147に集積し、コントラストハーモニックエコーモードの超音波で明瞭に画像化できた。一方、市販の造影剤ではその性格から.細胞への集積性は認めなかった。このことから、本研究で調製した抗CD147抗体標識分子標的バブルは.細胞選択的に集積し、その超音波分子画像化に成功した。
結論
研究成果から以下の点が明確化した。
1.深部バブルからのエコーを第3次以上の高次高調波で組織と明瞭に判別可能な低音圧・低周波数超音波照射画像化システムの開発。
2.既に新規開発の界面活性剤で分散安定性のより優れたバブルを作製し、実用化臨床準備研究を行う。
3.CD147高親和性物質標識バブルの生体モデルでの評価と完成する。
4.制癌剤搭載治療用分子標的バブルの開発継続と、超音波分子標的治療システム完成の目処が立った。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200712008B
報告書区分
総合
研究課題名
ラベル化造影剤を用いた超音波によるがんの超早期診断システムの研究開発
課題番号
H17-ナノ-一般-013
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
大川 清(東京慈恵会医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 田尻久雄(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 松藤千弥(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 宮本幸夫(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 松浦知和(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 石橋由朗(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 山田恭輔(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 相澤 守(明治大学 理工学部)
  • 日下部守昭(東京大学大学院農学生命科学)
  • 伊藤貴司(アロカ(株)研究所)
  • 射谷和徳(アロカ(株)研究所)
  • 阿部正彦(東京理科大学 理工学部)
  • 酒井秀樹(東京理科大学 理工学部)
  • 宮坂 好一(アロカ(株)研究所)
  • 小倉 玄(アロカ(株)研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
生体に優しい低侵襲下に浸潤転移等癌悪性度の早期診断法の確立は国民健康維持の必須要項と考えられる。
安全性の高い新規開発マイクロ・ナノバブル超音波造影剤(バブルと略)に癌の早期浸潤マーカーCD147を標識した分子標的バブルを作製し、病巣に集積させ、臨床で汎用の超音波診断法で高悪性度微小癌を超早期に画像化診断する。さらに抗癌剤等包含標識バブルを病巣に集積させ、収束超音波利用の治療システム構築の基礎技術を開発する。

研究方法
早期微小癌のCD147発現と臨床的意義。
新規界面活性剤を用いたバブル創生とラベル化技術の確立。
評価系としての三次元癌浸潤モデルと担癌動物モデルでの分子標的バブルの集積性。
バブル超音波画像化への高感度画像化技術開発。
結果と考察
超音波診断技術が汎用される婦人科癌、食道癌や超音波、超音波内視鏡下針生検で得た早期肝癌、GIST等微小癌のCD147高親和性単クロン抗体(抗体)でみたCD147発現は有意に高く、特に診断の難しい径8-23mmの微小肝癌も採取組織癌部で強染(P<0.01)した。

生体安定で生分解性に富む界面活性剤2種を新規合成し、ナノサイズバブル調製に成功し、超音波診断装置を用いた画像化にも成功した。マウス毒性試験でこれら界面活性剤の毒性はなかった。

三次元培養正常組織内にCD147陽性腫瘍塊形成を認める三次元培養癌浸潤モデルが完成した。CD147発現in vitro, in vivo腫瘍モデルでの抗体の特異集積は抗癌剤結合抗体と抗体GFP二重標識含気リポソームで確認した。親和性向上を目的のアプタマー作製で候補核酸が数種特定された。

CD147標的の抗体標識バブル(0.06-10μm)を作製した。抗体標識の確認には蛍光蛋白Keima標識PEGリン脂質でバブル調製をした。Keimaは励起と蛍光の波長差が大きく気泡の自家散乱光軽減に役立った。共焦点レーザー顕微鏡下でバブル界面のKeima蛍光を確認した。同様に調製のCD147認識抗体の標識バブルを三次元培養肝細胞癌モデル内に還流投与した。抗体標識バブルは10-20分で癌細胞表面CD147に集積し、コントラストハーモニックエコーモード超音波で明瞭に画像化できた。一方、市販造影剤はその性格から、細胞集積性は認めなかった。このことから、本研究で調製したCD147認識の抗体標識分子標的バブルは標的細胞選択的に集積し、その超音波分子画像化に成功した。
結論
新規創成界面活性剤による癌浸潤マーカー分子標的バブルと制癌剤搭載治療用バブルの更なる開発継続が必須で零よりスタートした超音波分子標的治療システム完成の目処が立った。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200712008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
超音波診断法で気泡造影剤(ナノバブル)に癌悪性度認識能を付与し病巣に集積すれば腫瘍の超音波質的診断が向上する。従来癌悪性度マーカー特定、生体最適標識ナノバブルの開発、前動物実験評価系確立がなかった。そこで有望な標的分子早期癌転移マーカーCD147と業界初の生分解性タウリン誘導重合性ジェミニ型陰イオン界面活性剤とシクロアミロース界面活性剤素材で分子標的性付与新規造影剤を開発、独自開発の生体構築近似の三次元培養装置微小腫瘍モデルで造影効果を評価した。知的所有権配慮から多くの報告を今後予定している。
臨床的観点からの成果
画像診断上微小腫瘤病変の質的診断は、治療方針を決定する重要な課題である。広く一般に普及し医療経済上も安価でコストパフォーマンスの良い超音波診断装置を利用して、生体の微小腫瘍の超早期悪性度診断を行い、高悪性度腫瘍を超音波とDDSナノバブルで早期に治療するシステムが開発される。その結果早期発見にも拘わらず治療方針が決定できない微小腫瘤病変を非侵襲で、しかも低医療費で診断加療できる。また、種々の物質の標識技術が確立すれば、超音波による質的診断の進歩、DDSとして癌以外の病変の加療にも寄与できる。
ガイドライン等の開発
本研究の主たる目的は目的にかなった優れた新規分子標的超音波造影剤の開発とその検出法の開発である。臨床投与に向けた動物実験は動物愛護管理法に則り削減に努力し、従来の動物実験指針に沿うもので新規の開発は無い。また将来に向けた臨床投与実験に関しても従来の指針に沿うもので新規開発は無い。
その他行政的観点からの成果
本研究は三次元培養微小癌モデルを気泡集積の前動物実験データー収集の主評価系とし実験動物担癌モデルによる評価は動物愛護管理法の下極力削減できた。また医療経済上も安価でコストパフォーマンスの良い超音波診断装置利用の抗体標識気泡化造影剤と収束超音波による微小癌の診断治療法確立は、高悪性腫瘍の早期発見、治療方針決定と非侵襲かつ低医療費で早期加療でき、患者のQOL向上に加え進行癌治療の膨大な医療費の節減ができる。日本の進んだ画像診断技術と微小腫瘤性病変の質的診断法の確立は日本発の新技術を世界に発信できる。
その他のインパクト
成果は内閣府主催総合科学技術会議科学技術連携施策群 第一回ナノバイオテクノロジー連携群 成果発表会(06年12月21日)、第二回ナノバイオテクノロジー連携群成果発表会(07年12月5日)でポスターセッション研究課題に選定された。第46回日本生体医工学会大会(07年4月25日)でNEDOワークショップ演題として取り上げられた。 
08年2月1日日経産業新聞「超音波照射がん識別-造影剤に微粒子活用」と報道された。

発表件数

原著論文(和文)
12件
原著論文(英文等)
71件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
4件
学会発表(国内学会)
39件
学会発表(国際学会等)
8件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計8件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-