最新の科学的知見に基づく水質基準の見直し等に関する研究

文献情報

文献番号
200639009A
報告書区分
総括
研究課題名
最新の科学的知見に基づく水質基準の見直し等に関する研究
課題番号
H16-健康-一般-066
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
眞柄 泰基(北海道大学創成科学共同研究機構)
研究分担者(所属機関)
  • 松井 佳彦(北海道大学大学院工学研究科)
  • 国包 章一(国立保健医療科学院水道工学部)
  • 遠藤 卓郎(国立感染症研究所寄生動物部)
  • 西村 哲治(国立医薬品食品衛生研究所環境衛生化学部)
  • 伊藤 禎彦(京都大学大学院工学研究科)
  • 伊藤 雅喜(国立保健医療科学院水道工学部)
  • 安藤 正典(武蔵野大学薬学部)
  • 浅見 真理(国立保健医療科学院水道工学部)
  • 秋葉 道宏(国立保健医療科学院水道工学部)
  • 広瀬 明彦(国立医薬品食品衛生研究所総合評価研究室)
  • 長谷川 隆一(国立医薬品食品衛生研究所医薬安全科学部)
  • 西野 二郎(日本水道協会工務部)
  • 江馬 眞(国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター)
  • 相澤 貴子(横浜市水道局)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域健康危機管理研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
66,456,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
水道法に定める水質基準は最新の科学的知見に従い逐次改正されることとなっている。またWHOでも飲料水水質ガイドラインを今後、必要に応じ逐次改訂していくこととしている。これらの課題に対応するため、、無機物質、一般有機物、微生物、消毒副生成物、農薬、水道水質管理およびリスク評価に関して研究課題を設定して調査研究を行い、水質基準改正のための科学的な知見について提言することを目的とする研究を行った。
研究方法
主任研究者および分担研究者の他、水道事業体等技術者、研究者約60名の研究協力者からなる分科会を設け、全国レベルでの実態調査等を行った。
結果と考察
無機物質についてはアルミニュウム低減化技術,腐食性と硬度や塩ビ管からの有機スズの溶出について明らかにした。一般有機物質については、TOCの水質指標としての意義を確認し、異臭味原因物質は排水処理施設や河川底層からも生成される。さらに、ピコプランクトンの浄水処理における挙動を明らかにし、その制御は困難であることを明らかにした。農薬類が原水で74種、浄水で45種検出された。浄水での最高濃度、ピロキロンとブロモブチドで、1.5 μg/Lであった。農薬検出時における粉末活性炭の注入等、浄水処理工程で残留農薬に対する水質管理がより徹底して行われるようになったと判断された。臭素酸イオン,N-ニトロソジメチルアミン,ハロ酢酸を主な対象に,制御技術,分析技術および生成状況について検討を行った。オゾン処理における臭素酸イオンやハロ酢酸の各制御技術を確立した。トリハロメタン類の曝露量評価を行い,吸入曝露量が多いことを示した。クロロホルムの飲用寄与率は20%を下回るケースがあることが明らかとなった。「水安全計画」に関して事例調査を実施し、それに基づき水安全計画策定指針を提案した。水道水のカルキ臭は塩素とアンモニアの反応によって生成されるトリクロラミンであることを明らかにした。食品安全委員会では、1,1-ジクロロエチレン、ジクロロアセトニトリル及び抱水クロラールについては評価が大きく変わっていたが、それ以外の6物質については水質基準策定時の評価と同じであった。新生児及び若齢ラットの感受性の差異は不確定係数10の範囲内であると考えられる。
結論
本研究成果は、19年4月に行われる水道法に定める水質基準の逐次改訂のための検討会で科学的資料として活用される。しかし、多くの課題のついてさらに詳細な研究が必要であることが明らかになったことから、水質基準を最新の知見に基づいて改定するための研究を進める必要がある。

公開日・更新日

公開日
2007-04-09
更新日
-

文献情報

文献番号
200639009B
報告書区分
総合
研究課題名
最新の科学的知見に基づく水質基準の見直し等に関する研究
課題番号
H16-健康-一般-066
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
眞柄 泰基(北海道大学創成科学共同研究機構)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 禎彦(京都大学大学院工学研究科)
  • 遠藤 卓郎(国立感染症研究所寄生動物部)
  • 国包 章一(国立保健医療科学院水道工学部)
  • 西野 二郎(日本水道協会工務部)
  • 江馬 眞(国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター)
  • 長谷川 隆一(国立医薬品食品衛生研究所医薬安全科学部)
  • 広瀬 明彦(国立医薬品食品衛生研究所総合評価研究室)
  • 伊藤 雅喜(国立保健医療科学院水道工学部)
  • 秋葉 道宏(国立保健医療科学院水道工学部)
  • 安藤 正典(武蔵野大学薬学部)
  • 相澤 貴子(横浜市水道局)
  • 西村 哲治(国立医薬品食品衛生研究所環境衛生化学部)
  • 松井 佳彦(北海道大学大学院工学研究科)
  • 浅見 真理(国立保健医療科学院水道工学部)
  • 亀井 翼(北海道大学大学院工学研究科)
  • 米澤 龍夫(日本水道協会工務部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域健康危機管理研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成15年5月に水道法に定める水質基準が改定され、今後は最新の科学的知見に従い逐次改正されることとなった。またWHOでも飲料水水質ガイドラインを今後、必要に応じて逐次改訂していくこととしている。これらの課題に対応するため、無機物質、一般有機物、微生物、消毒副生成物、農薬、水道水質管理およびリスク評価に関して研究課題を設定して調査研究を行い、水質基準改正のための科学的な知見を集積し、水質基準の逐次改正等について提言することを目的とする研究を行った。
研究方法
主任研究者および分担研究者の他、水道事業体等技術者、研究者約60名の研究協力者からなる分科会を設け、全国レベルでの実態調査等を行った。
結果と考察
水質基準に定められている項目の健康影響リスクや利便性の観点から、それらの水質特性に応じて水道における存在状況、処理性および水質試験方法の確立を行うとともに、水道水から輝散した化学物質の経気暴露量をも考慮した評価手法についても明らかにした。さらに、WHOの飲料水水質ガイドラインでの健康影響リスク評価でベンチマークドーズ法が遺伝毒性を有する発ガン物質についても適用されるようになっており、このような観点からのリスクの再評価が必要であると考えられる。水道法に定める水質基準は、健康影響リスクばかりでなく水道水の利便性の観点からも定められており、後者の観点から見るとWHO飲料水水質ガイドラインで勧告している「水安全計画」は、HACCP の概念を基礎に危害因子の同定とその適切な死魚を行うことにより、水源から給水栓までを通した系統的な水質管理を行うことを求めており、このような予防保全的アプローチを我が国の水道に導入すべきである。
結論
本研究成果は、19年4月に行われる水道法に定める水質基準の逐次改正のための検討会で科学的資料として活用される。また、研究成果の一部はWHO飲料水水質ガイドライン逐次改訂のための19年5月に開催される専門家委員会資料として提供されている。しかし、多くの課題についてさらに詳細な研究が必要であることが明らかになったことから、水質基準の最新の知見に基づいて改訂するための研究を進める必要がある。

公開日・更新日

公開日
2007-04-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-01-23
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200639009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
水道水の水質基準に定めれている項目やWHO飲料水ガイドラインで提言されている項目について、水道原水から浄水処理を経て給水栓に至る水道システムでの挙動や処理技術について研究を行った。その結果、アルミニュウム、臭素酸等健康影響を有する物質についての低減化技術を確立した。水道における農薬の監視プライオリテイリストを作成するとともに、有機りん系農薬の酸化処理副生成物の挙動や毒性を明らかにした。水安全計画の策定指針を提言するとともに、水質基準対象化学物質のリスク評価を行った。
臨床的観点からの成果
臨床研究は行っていない。
ガイドライン等の開発
平成19年3月30日付け、水道法施行規則の一部および施設基準に係る省令の改正に本研究の成果が反映されている。
この他、水安全計画策定指が作成された。、
その他行政的観点からの成果
平成18年8月4日に開催された第5回厚生科学審議会生活環境水道部会において、本研究の成果を下に、クリプトスポリジュム対策および水質基準の改定について検討された。また、平成19年4月23日に水質基準改定に係る検討会において、本研究成果を下に、水質基準改定項目について検討される。また、平成19年5月に開催予定のWHO飲料水水質ガイドライン専門委員会に本研究の成果の一部が提供されることになっている。
その他のインパクト
放送大学「環境工学」の分担執筆で、研究成果を活用している。

発表件数

原著論文(和文)
9件
原著論文(英文等)
44件
その他論文(和文)
24件
その他論文(英文等)
7件
学会発表(国内学会)
9件
学会発表(国際学会等)
10件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
クリプトスポリジュウム等の回収方法と上水資料保存のための、溶解可能な多孔質粉体を指示対に充填したフィルターとしたろ過方法
その他成果(施策への反映)
2件
水質基準改定のための検討資料。 クリプトスポリジュウム対策指針の資料
その他成果(普及・啓発活動)
1件
全国水道研究発表会シンポジュム

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
T.Nishimura, S.Iizuka, N.Kibune etal.
Study of 1.4-dioxane intake in the total diet
J. Health Sci. , 51 (4) , 514-517  (2005)
原著論文2
E.Ayano, H.Kanazawa, M.Ando etal.
Determination of sulfonylurea and urea herbicides in water samples using liquid chromatography with electrospray ionization mass spetrometric detection
Anal. Chem. Acta. , 507 , 211-218  (2004)
原著論文3
E.Ayano, Y.Okada, C.Sakamoto etal.
Analysis of herbicides in water using tempereture-responsive chromatography and an aqueous mobile phase
J. Cromatogr. A. , 1069 , 281-285  (2005)
原著論文4
M.Tahara, R.Kubota, H.Nakazawa etal.
Use of cholinesterase activity as an indicator for the effects of combinations of organophosphorus pesticides in water from environmental sources
Water Res. , 39 (20) , 5112-5118  (2005)
原著論文5
Y.Matsui, T.Inoue, T.Matsushita etal.
Effect of uncertainties of agricultural working shedule and monte-carlo evaluation of the model input in basin-scal runoff model analysis of herbicides
Water Sci. & Tech. , 51 (3) , 329-337  (2005)
原著論文6
Y.Matsui, K.Narita, T.Inue etal.
Screening level analysis for monitoring pesticide in river water using a gydrological diffuse pollution model with limited input data
Water Sci. & Tech. , 53 (10) , 173-181  (2006)
原著論文7
Y.Matsui, K.Narita, T.Ioue etal
Investigation rice-farming pesticide concentrations in river water using a basin-scale runoff model with uncertain inputs
Transactions of the ASABE , 49 (6) , 1723-1735  (2006)
原著論文8
M.Tahara, R.Kubota, H.Nakazawa etal.
Analysis iof active oxon forms of nine organophosphorus pesticides in water samples using gas chromatography with mass spectrometric detection
J. Health Science , 52 (3) , 313-319  (2006)
原著論文9
池貝 隆宏
流域の環境負荷評価のための農薬流出推定
環境情報科学論文集 , 20 , 31-36  (2006)
原著論文10
M.Ema, K.Fukunishi, A.Hirose etal
Evaluation of developmental toxicity of ultraviolet absorber 2-(3',5'-Di-tert-buty1-2'-hydroxyphenyl)-5-chlorobenzotriazole in rat
Erug Chem. Toxicol. , 29 , 215-225  (2006)
原著論文11
M.Ema, K.Fukunishi, A.Hirose etal.
Developmental toxicity of dibutyltin dichloride in chnomolgus monkeys
Reprod. Toxicol. , 23 , 12-19  (2007)
原著論文12
M.Ema, S.Fujii, M.Matsumoto etal.
Prenatal developmental toxicity study of the basic rubber accelerator, 1,3-di-o-tolylguanidine, in rats
Reprod. Toxicol. , 22 , 672-678  (2006)
原著論文13
小坂 浩司、浅見 真理、 松岡 雪子 他
IC/MS/MSを用いた利根川流域の過塩素酸イオンの実態調査
EICA , 11 (2) , 215-218  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-11-24
更新日
-