文献情報
文献番号
200637026A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝子組換え医薬品等のプリオン除去工程評価の方法に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H16-食品-一般-019
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
山口 照英(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
研究分担者(所属機関)
- 永田 龍二(国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子細胞医薬部)
- 堀内 基広(北海道大学大学院 プリオン病学講座)
- 菊池 裕(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
細胞培養医薬品等の製造に用いられるウシ等反芻動物由来原材料に混入する危険性のある異常型プリオン(PrP-Sc)に対する安全性確保において、製造工程中のPrP-Sc除去工程の評価は重要である。本研究では、PrP-Sc除去工程に関する総合的なリスク評価を行い、科学的見地から安全性を確保するための合理的方策を提示することを目的とする。
研究方法
(1)プリオン蛋白質(PrP)のC末端とGPIアンカーシグナル配列を欠損したスプライス変異型ヒトPrPを大腸菌で発現させた。
(2)スクレイピー263K株感染ハムスター脳由来ミクロソーム画分をサルコシル3%で抽出した画分をPBS又は人免疫グロブリン5%に添加し、孔径35又は20 nmのろ過膜で加圧ろ過した。
(3)学術論文等の公表資料を対象に調査研究を行った。
(2)スクレイピー263K株感染ハムスター脳由来ミクロソーム画分をサルコシル3%で抽出した画分をPBS又は人免疫グロブリン5%に添加し、孔径35又は20 nmのろ過膜で加圧ろ過した。
(3)学術論文等の公表資料を対象に調査研究を行った。
結果と考察
(1)継代数を重ねたT98G細胞がスプライス変異型GPIアンカー欠損PrPを発現し、その産生は低酸素濃度下で誘導されることを見いだした。当該蛋白質は非イオン性界面活性剤に易溶性で、細胞質画分に分布していた。
(2)3.0%サルコシル抽出ミクロソーム画分をPBS又は免疫グロブリン溶液の溶媒である0.3 mol/Lグリシン溶液に添加した病原体溶液を使用した場合、クリアランス指数(RF)は1以上であったが、PrP-Scは孔径35 nmの膜を通過した。しかし、同20 nmの膜のろ液中にはPrP-Scが検出されなかった。一方、5%人免疫グロブリン溶液を含む病原体溶液を使用した場合、PrP-Scは同35 nmの膜のろ液中には検出されなかった。以上より、PrP-Sc凝集体の中には、排除サイズ35 nmの多孔性膜を通過し得るサイズのものが存在すること、その除去効率は溶液の性状により変化することが明らかとなった。
(3)欧州ではプリオン除去フィルターが昨年承認され、英国及びアイルランドの血液センターで実用化のための評価試験が実施中である。今年に入ってからは、トランスジェニック技術によりプリオン遺伝子をもたないウシの作製に成功したとの報告もあり、医薬品等のPrP-Sc安全性を確保する新しい方策の候補として、これら新技術の開発動向には十分注意しておく必要がある。
(2)3.0%サルコシル抽出ミクロソーム画分をPBS又は免疫グロブリン溶液の溶媒である0.3 mol/Lグリシン溶液に添加した病原体溶液を使用した場合、クリアランス指数(RF)は1以上であったが、PrP-Scは孔径35 nmの膜を通過した。しかし、同20 nmの膜のろ液中にはPrP-Scが検出されなかった。一方、5%人免疫グロブリン溶液を含む病原体溶液を使用した場合、PrP-Scは同35 nmの膜のろ液中には検出されなかった。以上より、PrP-Sc凝集体の中には、排除サイズ35 nmの多孔性膜を通過し得るサイズのものが存在すること、その除去効率は溶液の性状により変化することが明らかとなった。
(3)欧州ではプリオン除去フィルターが昨年承認され、英国及びアイルランドの血液センターで実用化のための評価試験が実施中である。今年に入ってからは、トランスジェニック技術によりプリオン遺伝子をもたないウシの作製に成功したとの報告もあり、医薬品等のPrP-Sc安全性を確保する新しい方策の候補として、これら新技術の開発動向には十分注意しておく必要がある。
結論
医薬品等製造工程のPrP-Scクリアランス評価や除去工程に関する新規の知見や有用な結果が得られた。
公開日・更新日
公開日
2007-03-29
更新日
-