中枢性下肢麻痺者の歩行運動再建システムの開発

文献情報

文献番号
200626003A
報告書区分
総括
研究課題名
中枢性下肢麻痺者の歩行運動再建システムの開発
課題番号
H16-障害-一般-004
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 高志(東北大学 情報シナジーセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 二見 亮弘(福島大学 共生システム理工学類)
  • 加納 慎一郎(東北大学 大学院工学研究科)
  • 古瀬 則夫(宮城工業高等専門学校 電気工学科)
  • 半田 康延(東北大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
2,774,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では,機能的電気刺激(FES)を利用して,脊髄損傷や脳血管障害などに起因する運動機能麻痺を有する患者の歩行再建をより安全に,かつ実用的に実現するシステムの開発を目的としている.
研究方法
より多くの肢体不自由者のさらなる社会参加を可能にする技術について,臨床的実用性を重視し,今年度は,歩行のFES制御を対象とする筋・骨格系の電気刺激応答モデルを用いたFES制御方式の開発,筋電制御による不全麻痺への筋力増強制御方式の開発,歩行中の姿勢計測と歩行訓練方式の開発,運動機能麻痺者がFESシステムを操作するためのユーザインターフェイスの開発を中心に行った.
結果と考察
歩行遊脚期を制御するcycle-to-cycle制御について,これまでに開発してきた筋・骨格系の電気刺激応答モデルを用いた計算機シミュレーションによりファジィ制御器の開発を進め,健常者の筋活動様式に類似する制御,表面電気刺激を用いた制御を可能にした.また,膝関節伸展動作を対象に,健常被験者での実験的検討を実施して臨床的実現可能性を確認した.筋電制御による不全麻痺への筋力増強制御方式については,これまの試作システムの改良と複数の患者での臨床試験を実施し,本方式が不全片麻痺患者の歩行補助として簡便かつ有効であることを確認した.そして,患者の歩行訓練方式への応用を目指して,ジャイロスコープによる関節角度計測と歩行期の検出法を検討し,同一のセンサシステムで妥当な精度での計測が可能であることを健常者での歩行計測実験で確認し,実用性を示した.ユーザインターフェイスの開発では,脳波からon/offのコマンドを検出するBCIシステムの開発のための検討を行い,運動イメージからコマンド検出が可能になることを示唆する結果を得た.
結論
これまでの研究により,FESによる歩行制御のための基盤技術を概ね確立できた.これらの成果を臨床に移行するための細かな問題点を解決し,臨床的評価を実施して実用的方法への展開を図ることが期待される.

公開日・更新日

公開日
2007-04-17
更新日
-

文献情報

文献番号
200626003B
報告書区分
総合
研究課題名
中枢性下肢麻痺者の歩行運動再建システムの開発
課題番号
H16-障害-一般-004
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 高志(東北大学 情報シナジーセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 二見亮弘(福島大学 共生システム理工学類)
  • 加納 慎一郎(東北大学 大学院工学研究科)
  • 古瀬 則夫(宮城工業高等専門学校 電気工学科)
  • 半田 康延(東北大学 大学院医学系研究科)
  • イムレ ツカエロ(東北大学 大学院工学研究科・日本学術振興会外国人特別研究員)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では,機能的電気刺激(FES)を利用して,脊髄損傷や脳血管障害等に起因する運動機能麻痺を有する患者の歩行再建を安全かつ実用的に実現するシステムの開発を目的とした.
研究方法
多くの肢体不自由者のさらなる社会参加を可能にする技術について,臨床的実用性を重視し,筋・骨格系の電気刺激応答モデリングと下肢FES制御方式の開発,不全麻痺筋への筋電制御による筋力増強制御方式の開発,歩行中の姿勢計測と歩行訓練方式の開発,運動機能麻痺者用ユーザインターフェイスの開発を実施した.
結果と考察
第1に,FES制御に関する研究で計算機シミュレーションが有用であることを示し,歩行制御へ適用可能な筋・骨格系の電気刺激応答モデルを構築した.これを用いて,遊脚期を制御するcycle-to-cycle制御によるファジィ制御器の有効性を示し,健常者の筋活動様式に類似する制御,表面電気刺激による制御を可能にし,健常者での実験的検討により臨床的実現可能性を示した.また,フィードバック誤差学習のFES制御への適用可能性を計算機シミュレーションで示し,学習初期から誤差を低減するための適用方法を提案し,手関節の2自由度運動制御への拡張可能性を示した.第2に,局所的筋電駆動型FES制御方式を実現するシステムの設計と試作,及び,臨床試験と改良を繰り返し,本方式が不全片麻痺者の歩行補助として簡便かつ有効であることを臨床的に確認した.第3に,患者の歩行訓練への適用を目指して,下腿の傾斜角度の推定に有効な信号処理方法を開発した.また,ジャイロスコープによる関節角度計測と歩行期の検出法を検討し,健常者での歩行計測実験から実用性を確認した.第4に,麻痺者がシステム操作を行うためのユーザインターフェイスの検討を行い,特徴的動作を人工神経回路で認識して利用する方法の検出精度の改善対策の有効性,眼電図を利用する方法の信号計測・解析技術の有効性を確認し,脳波を用いて運動イメージからコマンドを検出する方法の実現可能性を示した.さらに,患者への情報提示法として,皮膚電気刺激による移動感覚で形状などの情報を直感的に伝達する方式の実現可能性を示した.
結論
本研究により,FESを利用した歩行再建システムのための基盤技術を概ね確立できた.これらの成果を臨床に移行するための細かな問題点を解決し,臨床的評価を実施して実用的方法への展開を図ることが期待される.

公開日・更新日

公開日
2007-04-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200626003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
(1)筋・骨格系の電気刺激応答モデルを構築し,運動機能が大幅に制限された麻痺者の歩行を補助するFES制御法を開発した.
(2)不全麻痺筋への筋電制御による筋力増強制御方式を開発した.
(3)関節角度と歩行期をジャイロスコープで計測する方法を開発した.
(4)人工神経回路や眼電図を用いたユーザインターフェイスを実現するための技術を提案した.
(5)考えるだけで命令入力を可能にする脳波を利用したユーザインターフェイスの実現可能性を示した.
(6)皮膚表面電気刺激を用いた新しい情報伝達手法を提案した.
臨床的観点からの成果
(1)歩行遊脚期のFES制御法について,表面電気刺激で利用可能にし,健常者での運動制御実験で臨床的有効性を確認した.
(2)筋電制御による筋力増強制御方式を採用した臨床試験用装置を試作し,不全片麻痺者の歩行補助として簡便かつ有効であることを臨床的に確認した.
(3)ジャイロスコープを用いたセンサシステムを試作し,関節角度の計測と歩行期の識別で十分な精度が得られることを,健常者の歩行計測結果で確認した.
(4)重度の運動機能麻痺者が装置の操作に利用可能なユーザインターフェイスを提供可能にした.
ガイドライン等の開発
特に無し.
その他行政的観点からの成果
(1)筋電制御型装置の試作と臨床評価結果から,不全下肢麻痺による歩行障害を軽減する装置の実用化の可能性が高いことを確認した.
(2)リハビリテーションにおける歩行訓練で利用するための簡便なセンサシステムが実現可能であることを示した.
(3)下肢運動機能が大幅に制限された患者の歩行を補助するFES制御法を採用した装置の実現を期待できることを示した.
(4)重度運動機能障害者から健常者まで適用できるコミュニケーションインターフェイスの実現を可能にする技術を開発した.
その他のインパクト
(1)筋電制御型装置の試作と臨床評価についての紹介記事が新聞に掲載された.
2006年3月7日 福島民報:「小型リハビリ装置開発 筋肉電流増幅歩行サポート」

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
7件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
29件
学会発表(国際学会等)
15件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
出願予定.
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
古瀬則夫,渡辺高志,星宮 望
圧電式ジャイロスコープを用いた下肢関節角度の簡易計測法
生体医工学 , 43 (4) , 538-543  (2005)
原著論文2
渡邉高志,藤原大樹,村上 肇,他
異なる信号入力を有する人工神経回路群の出力に対する演算処理による特徴的動作の認識法の検討
生体医工学 , 43 (4) , 544-550  (2005)
原著論文3
A.Arifin, T.Watanabe, M.Yoshizawa, et al.
A Test of Stimulation Schedules for the Cycle-to-Cycle Control of Multi-joint Movements in Swing Phase of FES-induced Hemiplegic Gait
バイオメカニズム学会誌 , 30 (1) , 31-35  (2006)
原著論文4
A.Arifin, T.Watanabe and N.Hoshimiya
Design of Fuzzy Controller of the Cycle-to-Cycle Control for Swing Phase of Hemiplegic Gait Induced by FES
IEICE Transactions on Information and Systems , 89 (4) , 1525-1533  (2006)
原著論文5
柴田 聡,渡邉高志,A.Arifin,他
片麻痺者の歩行遊脚期のcycle-to-cycle制御に基づくFES制御法:床反力を考慮したモデルシミュレーション
生体医工学 , 44 (4)  (2006)
原著論文6
佐藤由規,渡邉高志,吉澤 誠,他
表面電気刺激による動的感覚パターン提示を用いた情報伝達の実現可能性
バイオメカニズム学会誌 , 31 (1) , 30-35  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-