がん治療のための革新的新技術の開発研究

文献情報

文献番号
200621017A
報告書区分
総括
研究課題名
がん治療のための革新的新技術の開発研究
課題番号
H16-3次がん-一般-026
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
野村 和弘(東京労災病院)
研究分担者(所属機関)
  • 小林 寿光(国立がんセンター がん予防研究・検診センター)
  • 伊関 洋(東京女子医科大学大学院 )
  • 荻野 尚(国立がんセンター東病院 臨床開発センター )
  • 近藤 達也(国立国際医療センター)
  • 田野崎 隆二(国立がんセンター中央病院)
  • 五十嵐 美徳(国立がんセンター研究所)
  • 藤元 博行(国立がんセンター中央病院)
  • 笹子 三津留(国立がんセンター中央病院)
  • 森谷 冝皓(国立がんセンター中央病院)
  • 村田 智(日本医科大学医学部 インターベンショナルラジオロジー   )
  • 公文 裕巳(岡山大学大学院)
  • 中面 哲也(国立がんセンター東病院 臨床開発センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
144,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難治がんを迅速に攻略する方法の確立を目指して、放射線領域、内科領域、外科領域において従来の治療法で解決できない部分に、最近の生命科学・情報工学・医学の成果を導入して革新的ながん治療法とし、これらを集学的に用いることによって飛躍的な効果を得ることを目的とした。
研究方法
放射線領域においては、高いナビゲーションシステム開発のために陽子線照射装置とPET装置の統合を行う。内科領域においては、超高濃度抗がん剤治療のための閉鎖循環下陰圧還流療法(NIPP)の開発を最新のIVR技術を活用して行う。免疫細胞療法については、NKT担当免疫細胞の増殖法の改善、臨床治療実施のための培養液、培養バッグの安全性、有効性のチェック行う。遺伝子治療については、研究成果の臨床移行のための基礎研究を推進する。外科領域においては、最新の電子工学的技術を導入した新技術開発の有効性確認のための基礎研究を、開発した培養固形腫瘍、動物移植腫瘍を用いて行う。
結果と考察
1)放射線領域においては、陽子線治療装置とPET装置を統合したビームオンラインPETシステム(BOLPs プロジェクト)を構築し、この実機を陽子線治療装置内に設置、本システムの性能の検証を開始した。2)内科領域では、本邦で開発したNIPP療法の有効性を、骨盤内進行がんに対して確認した。さらに、難攻する肝臓、膵臓のがん攻略のために、新たな還流システムを構築、動物実験にて安全性、有効性を確認した。膵がんの還流システム(NIPP)の構築は世界で初めてである。 
 その他、NKT細胞を利用した新しいがん免疫療法開始のための前臨床試験で至適培養液、培養バッグを確定した。外科領域においては、広い適応性を有する手術支援装置の開発を進め、既に実用段階になってきている微細内視鏡と本装置の併用を考えて、超音波治療と光線力学療法の両面から有効性を検討した。これら3領域の新治療を統合することで、がん攻略に大きな力を発揮するものと考える。
結論
放射線領域では、陽子線の照射量、照射部位をリアルタイムで計測できるシステムの開発研究を行い、世界に先駆けて、臨床研究に入る段階まで到達した。内科領域では、NIPP療法を樹立して、骨盤内臓器については臨床研究にて、その有効性を確認した。さらに肝臓、膵臓の難治がんに対しても、動物実験で安全、且つ超高濃度の抗がん剤の病巣への到達が期待できる局所還流システムを構築した。外科領域では、手術手技の改良と現在のIT技術を活用した汎用手術支援機器を用い、超微細内視鏡による低侵襲かつ効果的な治療の開発を進めた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-12-14
更新日
-

文献情報

文献番号
200621017B
報告書区分
総合
研究課題名
がん治療のための革新的新技術の開発研究
課題番号
H16-3次がん-一般-026
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
野村 和弘(東京労災病院)
研究分担者(所属機関)
  • 小林 寿光(国立がんセンター がん予防研究・検診センター)
  • 伊関 洋(東京女子医科大学大学院)
  • 荻野 尚(国立がんセンター東病院 臨床開発センター)
  • 近藤 達也(国立国際医療センター)
  • 田野崎 隆二(国立がんセンター中央病院)
  • 五十嵐 美徳(国立がんセンター研究所)
  • 藤元 博行(国立がんセンター中央病院)
  • 笹子 三津留(国立がんセンター中央病院)
  • 森谷 冝皓(国立がんセンター中央病院)
  • 村田 智(日本医科大学医学部 インターベンショナルラジオロジー)
  • 公文 裕巳(岡山大学大学院)
  • 中面 哲也(国立がんセンター東病院 臨床開発センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
治癒の難しい難治がんを対象に、今まで発展させてきた放射線領域、内科領域、外科領域におけるがん治療に、最近、頓に著しい進歩発展を遂げている生命科学・情報工学・医科学の成果を導入して革新的ながん治療法とし、これらを集学的に用いることによって飛躍的な効果を得ることを目的とした。
研究方法
放射線療法領域:陽子線治療装置とPET装置を統合した精度の高いナビゲーションシステム、通常放射線治療においては3次元体表座標位置決め装置を開発する。内科領域:超高濃度抗がん剤治療のための閉鎖循環下陰圧還流療法(NIPP)の開発を最新のIVR技術を活用して行う。免疫細胞療法ではNKT担当免疫細胞の臨床治療実施のため培養液・培養バッグの安全性、有効性のチェックを行う。遺伝子治療の臨床基礎研究を推進する。外科領域:最新の電子工学的技術を導入した手術機器の有効性確認のための基礎研究を、培養固形腫瘍、動物移植腫瘍を用いて行う。
結果と考察
1)放射線領域:陽子線治療装置とPET装置を統合したビームオンラインPETシステム(BOLPs プロジェクト)を構築、この実機を陽子線治療装置内に設置して性能検証を開始した。2)内科領域:骨盤内進行がんに対してNIPP療法の有効性を証明した。さらに、難治がんとされる膵がんの還流システム(NIPP)を世界で初めて構築した。その他、NKT細胞を利用したがん免疫療法は、臨床第1相試験の段階まで到達した。開発中の遺伝子治療の効果を動物実験にて確認した。3)外科領域:広い適応性を有する手術支援装置の開発を進め、既に実用段階にある微細内視鏡と本装置の統合を考えて、超音波治療と光線力学療法の両面から有効性を検討した。これら3領域の新治療を統合することで、がん攻略に大きな力を発揮するものと考える。
結論
1)放射線領域:陽子線の照射量、照射部位をリアルタイムで計測できるシステムの開発研究を行い、世界に先駆けて臨床研究に入る段階まで到達した。2)内科領域:NIPP療法を樹立し、骨盤内臓器については臨床研究にてその有効性を確認した。さらに肝臓、膵臓の難治がんに対しても、動物実験で安全かつ超高濃度の抗がん剤の病巣への到達が期待できる局所還流システムを構築した。免疫療法においては臨床研究第1相の段階まで到達し、開発中の遺伝子治療を含め新しい治療法として今後の発展を期待できる。3)外科領域:手術手技の改良と現在のIT技術を活用した汎用手術支援機器を用い、超微細内視鏡による低侵襲かつ効果的な治療の開発を進めた。

公開日・更新日

公開日
2009-04-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-12-14
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200621017C

成果

専門的・学術的観点からの成果
がん治療の革新的新技術の開発を目的とし、放射線領域では、陽子線治療装置とPET装置を統合して精度の高い照射範囲確認装置を開発した。内科領域においては、閉鎖循環下骨盤内抗がん剤陰圧灌流療法(N1PP)を確立、最難治がんとされる膵がんに対しても応用可能とした。同種血液/免疫細胞療法では、NKT細胞療法が臨床応用段階に到達した。遺伝子治療は前臨床試験をさらに推進した。外科領域においては、微細内視鏡の有効性検証のための脳腫瘍実験モデルを作成、超音波及びレーザーに各種増感剤を用いた局所治療の実験を行った。
臨床的観点からの成果
1)BOLPsの完成は世界に先駆けた陽子線照射範囲確認装置として癌治癒に向け大きな進展である。2)NKT細胞療法の前臨床試験を終了。本治療は従来の樹状細胞療法の弱点を補強する画期的治療となり得る。3)NIPP治療はがん種の選定により全身投与化学療法の弱点を突く画期的な治療となる。4)外科領域では新しい手術コンセプト確立と要素技術の統合という分野において、医療水準向上、さらに安全で高度な医療技術の開発に大きく貢献する。
5)アデノウイルスベクターを用いたREIC遺伝子治療の有効性は裏付けられた。
ガイドライン等の開発
放射線領域では陽子線の照射量、照射部位をリアルタイムで計測するシステム(BOLPs)の開発研究を行い、世界に先駆けて臨床研究に入る段階まで到達。臨床試験によりナビゲーション治療のガイドラインを作成した。内科領域では、局所陰圧閉鎖循環療法(NIPP)、NKT細胞療法の臨床応用への進展により、前者は骨盤内超進行がん治療、後者は再発防止の身体に優しい治療の臨床治療実施を可能とした。外科領域では手術手技改良と現IT技術を活用した汎用手術支援機器を用い、超微細内視鏡による低侵襲かつ効果的治療の開発を進めた
その他行政的観点からの成果
BOLPs完成により、陽子線治療がその性能を充分発揮でき、低侵襲で治癒を望む治療が期待できる。成果により世界的市場を獲得できる可能性もある。NIPPの確立により限局型難治進行がんの治療が可能となる。特に膵がんへの本法は世界に類を見ず、その効果が期待できる。NKT細胞を用いた免疫療法は、この分野のブレークスルーとなることが期待できる。IT利用による手術手技革新は、難治がん治療の鍵ともなる。これらの研究により確立された治療を集学的に実施する事により、高度最先端技術を平準化し、均てん化に貢献できる。
その他のインパクト
BOLPsは世界初陽子線ナビゲーションシステムとなり得る。膵がんへのNIPP療法も世界初である。[講演等]1)グリオーマ治療の新展開(治療戦略コンセプトの形成):東北脳腫瘍研究会 2)ITEC病院運営研究会 継続研修特別講演:がん最前線の現況から 今後のがん医療への取組み 3)市民公開講座:がん医療の進歩 過去・現在・未来 4)第11回ガンマナイフ研究会特別講演:がん医療の新潮流 5)政策情報トップセミナー9月例会:温故創新がん医療の進歩 [特許等]米国特許5件、日本7件取得済 出願中日本3件

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
69件
その他論文(和文)
33件
その他論文(英文等)
11件
学会発表(国内学会)
45件
学会発表(国際学会等)
28件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計17件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Murata S, Tajima H, Nomura K, et al.
Changes in Pelvic and Systemic Platinum Concentrations during Negative-Balance Isolated Pelvic Perfusion: Correlation between platinum concentration and method of administration in a pig model.
J Cancer Res Clin Oncol. , 24 , 42-50  (2007)
原著論文2
Manome Y, Kobayashi T, Mori M, et al.
Local delivery of doxorubicin for malignant glioma by a biodegradable PLGA polymer sheet.
Anticancer Res. , 26 , 3317-3326  (2006)
原著論文3
Takeshita F, Kodama M, Ikarashi Y, et al.
Streptozocin-induced partial beta cell depletion in nude mice without h hyperglycaemia induces pancreatic morphogenesis in transplanted embryonic stem cells.
Diabetologia , 49 , 2948-2958  (2006)
原著論文4
Kuwatani M, Ikarashi Y, Iizuka A, et al.
Modulation of acute graft-versus-host disease and chimerism after adoptive transfer of in vitro-expanded invariant V14 natural killer T cells.
Immunol Lett , 106 , 82-90  (2006)
原著論文5
Imataki O, Heike Y, Ikarashi Y, et al.
Efficient ex vivo expansion of V24+ NKT cells derived from G-CSF-mobilized blood cells.
J Immunother , 29 , 320-327  (2006)
原著論文6
Ohashi M, Kobayashi A, Ikarashi Y, et al.
Allogeneic major histocompatibility complex gene transfer enhances antitumor activity of allogeneic hematopoietic stem cell transplantation without exacerbating graft-versus-host disease.
Clin Cancer Res , 12 , 2208-2215  (2006)
原著論文7
Yoshikawa T, Sasako M, Sano T, et al.
Stage migration caused by D2 dissection with para-aortic lymphadenectomy for gastric cancer from the results of a prospective randomized controlled trial.
British Journal of Surgery , 93 , 1526-1529  (2006)
原著論文8
Saito N, Moriya Y, Shirouzu K, et al.
Intersphincteric Resection in Patients with Very Low Rectal Cancer. - A Reviewof the Japanese Experience -
Dis Colon Rectum , 49 , 13-22  (2006)
原著論文9
Komada H, Tajima H, Murata S, et al.
Hemodynamic Changes in the Liver under Balloon Occlusion of a Portal Vein Branch: Evaluation with single level dynamic computed tomography during hepatic Arteriography.
Clinical Radiology  (2007)
原著論文10
Tanimoto R, Abarzua F, Kumon H, et al.
REIC/Dkk-3 as a potential gene therapeutic agent against human testicular cancer.
Int J Mol Med. , 19 , 363-368  (2007)
原著論文11
Abarzua F, Sakaguchi M, Kumon H, et al.
Heat shock proteins play a crucial role in tumor-specific apoptosis by REIC/Dkk-3.
Int J Mol Med.  (2007)
原著論文12
Iinuma G, Tomimatsu H, Kobayashi T, et al.
Recent advances in radiology for the diagnosis of gastric carcinoma
Splinger- Verlag Tokyo  (2006)
原著論文13
Kobayashi T, Lemoine S, Sugawara A, et al.
A flexible endoscopic surgical system: first report on a conceptual design of the system validated by experiments
Jpn J Clin Oncol , 35 , 667-671  (2005)
原著論文14
Iinuma G, Kobayashi T, et al.
Vascular virtual endoluminal visualization of invasive colorectal cancer on MDCT colonography
Am J Roentgenol , 184 , 1194-1198  (2005)
原著論文15
Ikarashi Y, Iizuka A, Wakasugi H, et al.
Cytokine production and migration of in vitro-expanded NK1.1- invariant Va14 natural killer T (Va14i NKT) cells using a-galactosylceramide and IL-2.
Immunol.Lett. , 101 , 160-167  (2005)
原著論文16
Murata S, Tajima H, Kusakai G, et al.
Reduction of drug leakage by negative balance isolated pelvic perfusion: correlation between leakage and in-out flow rate in a pig model
J Cancer Res Clin Onco. , 131 , 575-580  (2005)
原著論文17
Abarzua F, Sakaguchi M, Kumon H, et al.
Adenovirus-mediated overexpression of REIC/Dkk-3 selectively induces apoptosis in human prostate cancer cells through activation of JNK
Cancer Res , 65 , 9617-9622  (2005)
原著論文18
Hirashima N, Kurihara K, Tanosaki R, et al.
Graft-versus-Tax response in adult T-cell leukemia patients following hematopoietic stem cell transplantation
Cancer Res , 64 , 391-399  (2004)
原著論文19
Kurihama K, Harashima N, Tanosaki R, et al.
Potential immunogenicity of adult T cell leukemia cells in vivo
Int J Cancer , 114 , 257-267  (2005)
原著論文20
Shimizu A, Ikarashi Y, Wakasugi, H, et al.
The mouse natural killer T cell-associated antigen recognized by U5A2-13 monoclonal antibody is intercellular adhesion molecule-1
Immunol Letters , 92 , 227-235  (2004)

公開日・更新日

公開日
2015-09-24
更新日
-