胃がんスクリーニングのハイリスクストラテジー

文献情報

文献番号
200621016A
報告書区分
総括
研究課題名
胃がんスクリーニングのハイリスクストラテジー
課題番号
H16-3次がん-一般-025
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
三木 一正(東邦大学医学部医学科内科学講座 大森 消化器内科)
研究分担者(所属機関)
  • 一瀬 雅夫(和歌山県立医科大学第2内科)
  • 渡邊 能行(京都府立医科大学大学院地域保健医療疫学)
  • 吉原 正治(広島大学保健管理センター)
  • 濱島 ちさと(国立がんセンターがん予防・検診研究センター情報研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
14,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 胃がん検診方式として一次スクリーニングはHp抗体測定とPG法で行い、二次スクリーニングとして内視鏡(極細径や経鼻)検査を胃がん検診に導入した場合の胃がん低危険群、Hp(-)PG(-)(A群)と中危険群、Hp(+)PG(-)(B群)、Hp(+)PG(+)(C群)および高危険群、Hp(-)PG(+)(D群)の各群の比率を検討し、Hp抗体測定・PG法併用胃がん検診(ABCD検診)を実施した場合の二次スクリーニングの内視鏡検査の比率を算出し、各群の内視鏡検査の間隔を決定する上での基礎資料とすることを目的とした。
研究方法
 東京都某職域で平成12-15年度の4年間に実施した健常人を対象とした検(健)診受診者(21,042人)および高崎市医師会地域検診平成18年度の受診者(16,485人)計37,527人を対象に血清HpIgG抗体価測定(スマイテストおよび栄研Eプレート)および血清PGⅠ,Ⅱ値測定を同時に行った。
結果と考察
 Hp感染による慢性萎縮性胃炎の進展度を血清抗HpIgG抗体と血清PG値の二つのマーカーで評価した。東京都某職域および高崎市医師会地域検診受診者をA、B、C、Dの4群に分けて検討した結果、それぞれ両地域でのA群10,346人(49.2%)および8,128人(49.3%)、B群5,467人(26.0%)および4,364人(26.5%)、C群5,044人(24.0%)および3,370人(20.4%)、D群185人(0.9%)および623人(3.8%)であり、両地域の検診受診者ともにA群が約半数を占めD群が最も少なく、これまでの研究班での研究結果とほぼ同様な比率であり、本邦におけるHp感染による慢性萎縮性胃炎の進展度は血清抗HpIgG抗体価とPG値の二つのマーカーで評価した分類で胃がん低危険群(A群)および高-中等度危険群(B群,C群,D群)の囲い込みが可能である。
結論
 胃がん低危険群と高危険群を血清HpIgG抗体価とPG値を用いてより明確化する事でより効率的な胃がんスクリーニングシステムを構築できる。

公開日・更新日

公開日
2007-07-25
更新日
-

文献情報

文献番号
200621016B
報告書区分
総合
研究課題名
胃がんスクリーニングのハイリスクストラテジー
課題番号
H16-3次がん-一般-025
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
三木 一正(東邦大学医学部医学科内科学講座 大森 消化器内科)
研究分担者(所属機関)
  • 一瀬 雅夫(和歌山県立医科大学第2内科)
  • 渡邊 能行(京都府立医科大学大学院地域保健医療疫学)
  • 吉原 正治(広島大学保健管理センター)
  • 濱島 ちさと(国立がんセンターがん予防・検診研究センター情報研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 ペプシノゲン(PG)法の精度や胃がん死亡率減少効果の研究を行ってきた。これまでの研究成果をふまえ、胃がん対策としての総合的な経済学的評価を行った上で、胃がんスクリーニングのハイリスクストラテジーによる経済的でかつ胃がん死亡減少をもたらすマネージメント方法を構築し、提案することを目的とした。
研究方法
 ①PG法による胃がん検診実施地域の資料をもとに、観察的手法である症例・対照研究(13年間遡及)で、また、節目健診受診者を対象に受診日より4年間追跡し、それぞれPG法による胃がん検診の胃がん死亡率減少効果につき評価を行った。②PG法、胃X線法(DR)併用胃がん検診を行い、PG法とX線法の精度および費用対効果を検討した。③PG法とHp抗体価測定を同時に併用した人間ドック受診者を対象に胃がんの発見頻度を7年間追跡した。また、Hp抗体価・PG法併用胃がん検診(健常人男性10年間追跡)での年率胃がん発生数およびハザード比を検討した。
結果と考察
 症例対照研究でPG法単独による胃がん死亡率減少効果を確認できたことは、PG法は胃がんスクリーニングのハイリスクストラテジーとして使用可能であることを示している。また、PG法の胃がんスクリーニングの妥当性の検討でPG法の精度は直接X線法とはほぼ同等であること、およびPG法とX線検査を組合わせる検診方法の合理性・有用性が示された。さらに、H.pylori感染のない群(A群:Hp(-)、PG(-))から胃がん発生が10年間みられず、A群を低リスク群として胃がん検診対象から外し、萎縮性胃炎合併症群(B,C,D群)を選択的にスクリーニングする胃がん検診の合理性が示された。また、B群:Hp(+)、PG(-)、C群:Hp(+)、PG(+)、D群:Hp(-)、PG(+)(胃がん発生リスク)別の最適な検診間隔は、研究班での検討結果からそれぞれA群で5年、B群で3年、C群で2年、D群で1年に1回が妥当と考えられた。今後は、このHp・PG併用胃がん検診(ABCD検診)を全国的に推進・普及させることで、胃がん検診の効率化がなされ、経済的でかつ胃がん死亡減少をもたらす胃がん検診となることが強く期待される。
結論
 胃がん対策として推奨する胃がん検診方式は、「一次スクリーニングはHp抗体測定とPG法で行い、二次スクリーニングは内視鏡(極細径や経鼻)検査」である。

公開日・更新日

公開日
2007-07-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-02-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200621016C

成果

専門的・学術的観点からの成果
(1)研究目的・成果
ペプシノゲン(PG)法による胃がん死亡率減少効果を確認できた。また、ヘリコバクターピロリ(Hp)抗体価・PG法併用胃がん検診での年率胃がん発生数およびハザード比を検討した。成果は、Scand J Gastroenterol,Int J Cancer等の雑誌に掲載され、国内外から反響があった。 
(2)研究成果の学術的・国際的・社会的意義
 Hp・PG併用胃がん検診の普及で胃がん検診の効率化がなされ、経済的でかつ胃がん死亡減少をもたらす胃がん検診となる可能性が示唆された。
臨床的観点からの成果
(1)研究目的の成果
 Hp感染のない(A)群からの胃がん発生が10年間みられず、A群を低リスク群として胃がん検診対象から外すことの合理的が示された。 
(2)研究成果の臨床的・国際的・社会的意義
 Hp感染のある(B,C,D)群別の最適な検診間隔は、A群5年、B群3年、C群2年、D群1年に1回が妥当である。また、Hp・PG測定費用は2項目1,500円で、X線の1/5-1/10に減額可能となり、(極細径・経鼻)内視鏡検査の、二次精検の体勢も整っている。
ガイドライン等の開発
 2007年より関連学会(日本消化器がん検診学会・日本消化器内視鏡学会)で附置研究会を設立し、学会としてのガイドラインの作成に向けて検討を開始しており、その結論(2-3年後)を待ってガイドラインを開発する予定。
その他行政的観点からの成果
 胃がん検診を効率化するための経済的でかつ胃がん死亡減少をもたらす胃がん検診の実例報告は無いが、現在、東京某職域や高崎市医師会健診等で試用されている。
資料1)Scand J Gastroenterol (Yoshihara M, et al)
  2)Gastric Cancer (Miki K, et al)
  3)Am J Gastroenterol (Miki K, et al)
  4)Int J Cancer (Ohata H, et al)
  5)消化器内視鏡(柳岡公彦、他)
その他のインパクト
ホームページを開設し、普及啓発活動をしている。
http://www.pepsinogen.org/

発表件数

原著論文(和文)
19件
原著論文(英文等)
92件
その他論文(和文)
49件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
157件
学会発表(国際学会等)
94件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
6件
東京都葛飾区節目検診に導入、石川県羽咋市検診に導入、東京都足立区節目検診に導入、高崎市医師会検診に導入、広島県加計町検診に導入、東京都昭島市検診に導入、等
その他成果(普及・啓発活動)
1件
ホームページにて広報・啓発活動を行なっている。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yoshihara M, Watanabe Y, et al.
Reduction in gastric cancer mortality by screening based on serum pepsinogen concentration:A case-control study
Scand J Gastroenterol , 42 (6) , 760-764  (2007)
原著論文2
伊藤史子、渡邊能行、三木一正
地域住民を対象とした2段階ペプシノゲン法胃がん検診の死亡減少効果の検討
日本がん検診・診断誌 , 14 (2) , 156-160  (2007)
原著論文3
Miki K,
Gastric cancer screening using the serum pepsinogen test method
Gastric Cancer , 9 (4) , 245-253  (2006)
原著論文4
Ohata H, Miki K, Ichinose M, et al.
Gastric cancer screening of a high-risk population in Japan using serum pepsinogen and barium digital radiography
Cancer Sci , 96 (10) , 713-720  (2005)
原著論文5
Miki K, et al.
Usefulness of gastric cancer screening using the serum pepsinogen test method
Am J Gastroenterol , 98 (4) , 735-739  (2003)

公開日・更新日

公開日
2015-09-24
更新日
-