男女労働者の働き方が東アジアの低出生力に与えた影響に関する国際比較研究

文献情報

文献番号
200601038A
報告書区分
総括
研究課題名
男女労働者の働き方が東アジアの低出生力に与えた影響に関する国際比較研究
課題番号
H18-政策-一般-005
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 透(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
研究分担者(所属機関)
  • 小島 宏(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
  • 伊藤 正一(関西学院大学 経済学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
2,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、働き方に関する諸要因が出生率に与える影響を、文献研究および専門家インタビュー、マクロ・データ分析、マイクロ・データ分析の各段階を踏んで分析を進める。そのような分析を通じて、労働時間や勤務形態のフレクシビリティー、家庭内分業の実態、若年労働者の経済的自立と将来の見通し、企業のファミリーフレンドリー施策の導入努力、地域の保育サービス供給の量といった諸側面が、どのように結婚率・出生率に影響するかを定量的に調べることを目的とする。それぞれの側面における改善がどの程度の出生促進効果を持つかの見極めを通じて、政策の優先順位等に関わる政策提言が得られる。
研究方法
文献・理論研究では、韓国・台湾における近年の出生率低下と、その社会経済的要因に関する既存研究を収集し、日本や欧米先進国から得られた知見と比較・検討する。また出生促進策の導入に関わる政府・自治体の動きや、導入をめぐる議論・言説等を、アカデミックな研究に限定せず新聞・雑誌等からも幅広く集める。これらを用い、経済の状況や政治的・文化的風土をも考慮した解釈と将来予測を試みる。本年度はこのような文献・理論研究と専門家インタビューを中心に行った。
結果と考察
韓国・台湾とも低出生力の原因として価値変動、晩婚化、子の直接費用の上昇、労働市場の悪化、女子の経済活動参加等があげられており、これらに関する既存研究を批判的に検討した。韓国政府は2006年に総合的な低出産・高齢化対策「セロマジ・プラン2010」を発表したが、その低出産対策部分を分析した。出産休暇中の給与全額補償や社会保険料の出産クレジット制は、日本でも検討してよい部分である。しかし児童手当の導入が見送られ、低予算で済む小手先の対策にとどまったという印象も強い。台湾については2007年に人口政策白書の発表が予定されており、その中間報告書の内容を検討したが、日本や韓国の出生促進策に比べてどのような特徴があるのかは現時点では分からない。
結論
日本・韓国・台湾とも出生力低下の要因は複合的だが、特に韓国では私教育費、台湾では保育費負担が強く意識されているようである。各国の少子化対策も経済的支援・両立性の確保・生殖保健の改善等を含む広汎なものだが、力点の置き方には特徴がある。韓国は日本に比べ、私教育費の抑制、女子労働力の確保、家族価値の涵養に熱心である。台湾については、今後の課題としたい。

公開日・更新日

公開日
2007-06-25
更新日
-