老人骨折の発生・治療・予後に関する全国調査

文献情報

文献番号
200500313A
報告書区分
総括
研究課題名
老人骨折の発生・治療・予後に関する全国調査
課題番号
H15-長寿-004
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
萩野 浩(社団法人日本整形外科学会骨粗鬆症委員会 (鳥取大学医学部))
研究分担者(所属機関)
  • 阪本桂造(昭和大学医学部)
  • 中村利孝(産業医科大学)
  • 遠藤直人(新潟大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究 【長寿科学総合研究分野】
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
3,116,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
大腿骨頚部骨折の全国調査を行い、発生頻度(性別・年齢別)、受傷原因の詳細、手術までの期間、治療法の選択、入院期間を調査すること。新潟県および鳥取県での全数調査を行い、大腿骨頚部骨折の発生率を明らかとすること。
研究方法
全国調査:全国約3,522の整形外科施設を対象に大腿骨頚部骨折に関して郵送調査を行った。調査内容は、年齢、骨折年月日、初診日、骨折型、治療法、治療材料、入院日、受傷の場所、受傷の原因、退院日である。登録された骨折患者は、集計の後、同一症例を除外し、年齢階級別患者数を算出した。
全数調査による発生率調査:2004年1月1日-12月31日の間に新潟県および鳥取県で発生した大腿骨頚部(近位部)骨折を対象とした。調査は両県内の全病院を対象に全症例を登録し、性・年齢階級別人口に基づいて発生率を算出した。
結果と考察
全国調査:調査対象施設のうち1,806施設(51.3%)での調査結果が集計され、35歳以上の45,835例が解析された。患者数は80-89歳が最も多く、立った高さからの転倒が77.6%を占めた。高齢者ほど軽微な外傷により、屋内で受傷する傾向があった。都道府県別に検討したが、屋内受傷の割合に地域差は無かった。入院後手術までの期間は5.4±8.3日(中央値4日)で、94.2%の症例で観血的治療が行われていた。初期治療に要した入院期間は平均48.1±33.4日で、骨折型では差がなかったが、90歳以上の超高齢者では90歳未満例に比べて入院期間が短かった。都道府県別に入院期間、術前待機期間を検討したところ、地域によってばらつきが大きかった。
全数調査による発生率調査:新潟県では2,297例が、鳥取県では870例が発生し、性・年齢階級別発生率は男女ともに70歳代から上昇し、80歳代以降に急速に増加した。また過去の発生率調査結果と比較すると、両県とも経年的に発生率が上昇していた。
結論
大腿骨頚部骨折患者数は80-89歳が最も多く、高齢者ほど軽微な外傷により、屋内で受傷する。手術前期間、入院日数は欧米に比べて長期間であり、地域によって差が見られる。性・年齢階級別の大腿骨頚部骨折の発生率は70歳以降に急激に上昇を認め、発生率は経年的に上昇傾向にある。

公開日・更新日

公開日
2006-04-12
更新日
-

文献情報

文献番号
200500313B
報告書区分
総合
研究課題名
老人骨折の発生・治療・予後に関する全国調査
課題番号
H15-長寿-004
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
萩野 浩(社団法人日本整形外科学会骨粗鬆症委員会 (鳥取大学医学部))
研究分担者(所属機関)
  • 阪本桂造(昭和大学医学部)
  • 中村利孝(産業医科大学)
  • 遠藤直人(新潟大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究 【長寿科学総合研究分野】
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
大腿骨頚部骨折に関して全国調査によって発生頻度(性別・年齢別)、受傷・治療の現状、骨折後の身体機能および生命予後を明らかとする。さらに高齢者骨折の発生率を調査する。
研究方法
1.発生および治療状況に関する全国調査
 平成14年-16年に受傷した大腿骨頚部骨折の患者を解析対象として、全国の骨折治療を行っている整形外科施設を対象に調査を行った。
2.定点観察による予後調査
 平成11年-13年に全国158の定点観測病院で取り扱われた大腿骨頚部骨折症例を対象として、骨折前と1年後のADL自立度と生存率を調査した。
3.発生率調査
 新潟県および鳥取県において、平成16年に発生した大腿骨頚部骨折の全症例を調査した。また同年に新潟県佐渡で発生した橈骨遠位端骨折、上腕骨近位端骨折の全症例を調査した。
結果と考察
1.3年間で139,254例が登録された。患者数は80歳代が全体の約半分を占め、受傷原因は立った高さからの転倒が最も多かった。高齢者ほど軽微な外傷により、屋内で受傷する傾向があった。術前待機期間は平均 5.6日で、94%の症例で観血的治療が行われていた。初期治療に要した平均入院期間は調査期間を通じて短縮傾向にあった。都道府県別に各施設の平均術前待機期間および入院期間を比較したところ、一定の地域性は認められなかったが、ばらつきが大きかった。
2.定点観測では全国で12,250例が解析された。骨折前のADL自立度は「自力で独立して活動できるもの」が54%であったが、受傷1年後には31%と低下していた。骨折1年後の生存率は80歳代で80%台、90歳以上では70%台と加齢とともに低下を認めた。
3.大腿骨頚部骨折の発生率は70歳以降に指数関数的に上昇していた。男性の発生率は女性の約1/3であった。過去の調査と比較した結果、両県ともに発生率の経年的上昇が認められた。
4.橈骨遠位端骨折の発生率は、女性では50歳代から発生率が上昇し、70歳代以降の高齢者でも発生率の上昇傾向はなかった。上腕骨近位端骨折では、女性では加齢にともなって上昇していた。いずれも男性の発生率は低値であった。これらの骨折は欧米白人の発生率に比べて低値であった。
結論
大腿骨頚部骨折は高齢になるほど軽微な外傷が原因で発生し、機能予後および生命予後も低下する。今後わが国では80歳代後半や90歳代の骨折症例の増加が予想され、身体機能予後の悪化防止を目的とした初期治療からリハビリテーションまでの一貫した治療法の確立が必要である。

公開日・更新日

公開日
2006-04-12
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500313C

成果

専門的・学術的観点からの成果
大腿骨頚部骨折の全国調査によって139,254例が登録され、受傷の原因や治療内容を全国レベルで初めて明らかとした。さらに1万例以上の症例を前向き調査し、ADL自立度の変化や骨折後の生存率を明らかとしたが、このような大規模な調査は初めてで、本骨折によるADL自立度の低下が大きいという事実に対して各方面から反響があった。さらに本骨折発生率が過去の調査と比較して経年的に上昇した点も注目された。また高齢者上肢骨折の発生率が骨折部位によって異なることが初めて明らかとなった。
臨床的観点からの成果
大腿骨頚部骨折の発生や治療実態を全国規模で初めて調査し、さらに性別・年齢階級別患者数が把握された。本研究で明らかとなった治療内容や入院期間の経年的な調査結果は、わが国における大腿骨頚部骨折治療費に関する推測や、人口構成の高齢化にともなうその増加予測に有用な資料となる。さらに経年的な変化や骨折型別の推移が明らかとなり、本骨折の予防・治療対策を行う基礎的資料となる。また上肢骨折発生率が初めて明らかとなり、高齢者における骨折対策の基礎データとなる。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
高齢者リハビリテーションのあるべき方向(平成16年1月 高齢者リハビリテーション研究会)の資料として、本研究成果のうち「骨折受傷の原因」、「わが国における大腿骨頚部骨折患者数予測」が用いられた。(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/03/s0331-3f.html#6-2-2)
その他のインパクト
「怖い脚の付け根の骨折 1年以内に9%が死亡 高齢者は影響深刻」と題して2005年7月19日付け朝日新聞に本研究結果が紹介された。また、本研究内容の「大腿骨頚部骨折発生率の上昇」について2006年1月26日にNHKニュースで取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
8件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hagino H, Nakamura T, Sakamoto K,et al
Nationwide survey of hip fracture in Japan
J Orthop Sci , 9 (1) , 1-5  (2004)
原著論文2
Hagino H, Katagiri H, Okano T, et al
Increasing incidence of hip fracture in Tottori Prefecture, Japan: Trend from 1986 to 2001
Osteoporos Int , 16 (12) , 1963-1968  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-