高齢者の役割の創造による社会活動の推進及びQOLの向上に関する総合的研究

文献情報

文献番号
200500299A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者の役割の創造による社会活動の推進及びQOLの向上に関する総合的研究
課題番号
H16-長寿-028
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
芳賀 博(東北文化学園大学大学院 健康社会システム研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 安村 誠司(福島県立医科大学)
  • 新野 直明(桜美林大学大学院)
  • 高田 和子(独立行政法人国立健康・栄養研究所)
  • 杉澤 秀博(桜美林大学大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究 【長寿科学総合研究分野】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
8,336,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢者の「役割」の見直しと発掘を行い、役割づくりが地域高齢者の健康度・QOLの向上に果たす役割について明らかにすることを目的としている。
研究方法
 北海道今金町及び福島県S市では役割創造のための住民参加型のグループワーク並びに高齢者の役割と健康度に関する質問紙による追跡調査を行なった。群馬県嬬恋村、山梨県A村においては、在宅高齢者の役割の実態に関する質問紙調査を行なった。さらに、東京都市区シルバー人材センターを対象として事業の推進・阻害要因に関する検討も行なった。
結果と考察
 ①高齢者の役割の実態に関しては、「食事の支度」「洗濯」「掃除」「神仏・仏壇の管理」「留守番・電話番」は、高齢になっても担える役割であることが示された。また、ボランティア活動では、「美化・環境整備」「清掃」の実施割合が高く、このことは先行研究でも高齢者に期待できる役割としてあげられている。②高齢者自身が続けたいと思っている役割と非高齢者が高齢者に期待する役割は重なる項目が多く、中でも「子どもの世話や見守り」に対する関心は、高齢者・非高齢者とも高かった。③高齢者が新たに行なってみたい役割の有無に関連する要因の分析において、社会との関わりをもって生活したいと考えている者は、自立度が低くても、実施の機会に恵まれれば役割を担える人ではないかと考えられた。④高齢者の役割をテーマに地区自治会での討議を経て、学習的役割(教える・学ぶ)が設定され、地区の高齢者の約1/4の参加を得る事業となった。⑤その結果、地区の学習的役割への参加が、その後の手段的自立や健康満足感、精神的活力などの向上につながることが縦断調査により確認された。⑥高齢者に社会参加の場を提供しているシルバー人材センター事業については、センターの活動よりもセンターの置かれた住民の労働特性や産業基盤の特性が、会員の割合や会員一人あたりの契約件数と関係していることが示された。また、センターに対する民間事業所の利用意向が低かったことは、センターの民間事業所に対する働きかけの弱さがその要因の一つであろうと考えられた。
結論
 住民参加型のグループワークは、高齢者のための新たな役割設定のために有効であった。また、役割が設定された地区の高齢者の活動能力や主観的QOLに有意な改善効果がみられた。これらの結果は、地域での新たな役割づくりは、高齢者の健康や生きがいづくりに有効であることを示唆している。

公開日・更新日

公開日
2006-04-13
更新日
-

文献情報

文献番号
200500299B
報告書区分
総合
研究課題名
高齢者の役割の創造による社会活動の推進及びQOLの向上に関する総合的研究
課題番号
H16-長寿-028
研究年度
平成17(2005)年度
研究代表者(所属機関)
芳賀 博(東北文化学園大学大学院 健康社会システム研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 崎原 盛造(沖縄国際大学)
  • 安村 誠司(福島県立医科大学)
  • 新野 直明(桜美林大学大学院)
  • 高田 和子(独立行政法人国立健康・栄養研究所)
  • 杉澤 秀博(桜美林大学大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究 【長寿科学総合研究分野】
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 在宅高齢者の「役割」の見直しと発掘を行い、役割づくり(創造)が地域高齢者の健康度・QOLの向上に及ぼす影響について明らかにすることを目的としている。
研究方法
 北海道今金町、福島県S市、群馬県嬬恋村、愛知県A村、山梨県A村及び沖縄県の65歳以上の高齢者を対象として質問紙による役割の実態調査、一部地区では役割創造のためのグループワークを行なった。また、東京都市区シルバー人材センターを対象として、センター事業の推進・阻害要因に関する検討を行なった。
結果と考察
(1)「食事の支度」「洗濯」「掃除」「神仏・仏壇の管理」「留守番・電話番」は、高齢になっても担える役割であることが示された。また、ボランティア活動では、「地域の美化・環境整備」「清掃」の実施割合が高く、年齢が比較的高齢でもこれらの役割は実施可能であると考えられた。シルバー人材センターの利用経験者は、どの地区でも極めて低かった。
(2)高齢者自身が続けたいと思っている役割と非高齢者が高齢者に期待する役割は重なる項目が多かった。中でも「子どもの世話や見守り」への関心は高かった。また、非高齢者が高齢者に期待する役割として、「元気でいること」が挙げられており、高齢者にとって自らの健康管理も重要な役割であることが示唆された。
(3)高齢者に適した新たな役割づくりの活動において、住民参加型のグループワークに加えて、保健師等の「念押し」や「声がけ」が重要であると考えられた。今後のモデル事業を通じた「役割づくり」のためのマニュアル化が必要であろう。
(4)シルバー人材センター活性化の条件の検討において、センターの施策よりもセンターの置かれた地域の労働特性や産業基盤が、人材センター事業の活性化に影響していることが示された。また、センターに対する民間事業所のニーズはそれほど高くはなかった。センターの民間事業所への働きかけが待たれている。
(5)役割を担うことが自己効力感、活動能力、精神的健康度、精神的自立度と有意に関連していた。また、地区に新たに設定された学習的役割への参加が、その後の手段的自立や主観的QOLの向上につながることが縦断データにより確認された。
結論
 新たな役割の創造は、高齢者の健康・生きがいづくりや介護予防に有効であろうことが示唆された。高齢者が望めば役割が持てるような環境づくりを行政と住民の協同によって確立することが今後の課題である。

公開日・更新日

公開日
2006-04-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200500299C

成果

専門的・学術的観点からの成果
役割と健康・生きがいとの関連は、従来から指摘されているが、実証データとしての検証は意外に乏しい。本研究では、役割を「職業労働」「家事労働」「学習趣味活動」「ボランティア活動」「団体・組織活動」を含むものとして定義したが、これらのいずれの領域においても役割遂行は、活動能力や主観的QOLと有意に関連することが示された。さらに、地区に新たに設定された役割(学習的)への参加がその後の活動能力や主観的QOLの向上に有意に影響することも示された。
臨床的観点からの成果
役割を持つことでうつ得点(GDS)が改善する傾向にあることが示されたが、今回の研究では有意な差が確認されるまでには至らなかった。この点の検証は今後の課題である。
ガイドライン等の開発
高齢者に適した役割づくりの活動において、住民参加型のグループワークが有効であることが示された。住民参加型のグループワークを基本としながらも、地域特性の違いによっては取り上げる役割項目も異なることから、特性を異にする地域におけるモデル事業を繰り返し行い、その成果をガイドラインとしてまとめることが「役割づくり」の一般化のためには必要である。
その他行政的観点からの成果
地域高齢者のための新たな役割づくりは、役割を設定した地域全体の健康度やQOLにも波及効果が確認された。このことは、高齢者に対する介護予防策として、筋力トレーニングなどのメニューだけでなく、学習や趣味活動、ボランティア活動などを含めた地域高齢者のための役割の見直しや新たな役割の設定が有効であることを示唆している。高齢者が望めば役割が持てるような環境づくりを行政主導で取り組むことが望まれている。
その他のインパクト
役割づくりの設定がなされた地域における活動状況が新聞に取り上げられた(北海道新聞,2006年3月29日朝刊)。また、同地域において、本研究期間の終了後も町独自の取り組みとして他地区でも同様の試みを展開すべくその準備が進んでいる。

発表件数

原著論文(和文)
1件
「地域・家庭での役割の実態と関連要因の検討」厚生の指標54巻1号に発表
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
8件
役割の実態や役割と健康度(抑うつ含む)の関連、社会参加の関連要因などについて日本公衆衛生学会(2005,2006)、日本老年社会科学会(2005)、日本民族衛生学会(2006)などで発表
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
高橋和子、安村誠司、芳賀博 他
東北地方の在宅高齢者における地域・家庭での役割の実態と関連要因の検討
厚生の指標 , 54 (1) , 9-16  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-