全国規模の疫学研究によるシックハウス症候群の実態と原因の解明

文献情報

文献番号
200401319A
報告書区分
総括
研究課題名
全国規模の疫学研究によるシックハウス症候群の実態と原因の解明
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
岸 玲子(北海道大学大学院医学研究科(予防医学講座公衆衛生分野))
研究分担者(所属機関)
  • 吉良 尚平(岡山大学大学院医歯学総合研究科、公衆衛生学)
  • 田中 正敏(福島学院大学)
  • 柴田 英治(愛知医科大学衛生学講座)
  • 森本 兼曩(大阪大学大学院医学研究科社会環境医学)
  • 吉村 健清(福岡県保健環境研究所)
  • 長谷川友紀(東邦大学公衆衛生学)
  • 西條泰明(北海道大学大学院医学研究科(予防医学講座公衆衛生分野))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
室内空気環境の重要性が注目され、特にわが国ではシックハウス症候群と注目を集めている。しかし、十分な疫学調査がなされておらず、日本の住宅建築の問題・気候・などを加味して原因の解明研究を進め、対策を明らかにすべきである。具体的には、日本の6地域で、地域ごとの特徴と日本全体の実態、およびそれにもとづく対策の方向を明らかにすることを目的としている。
研究方法
1.統一プロトコールに基づく全国調査を実施した。
(1)建築確認申請からランダムに抽出した住宅に対する質問票調査、(2)住居者全員を対象とした自覚症状調査と環境測定(VOC、アルデヒド、真菌、ダニアレルゲン)を行った。
2.室内空気中化学物質濃度と尿中代謝物濃度との関係を調査した。
3.南岡山病院に化学物質過敏症疑いの受診者の住宅で環境測定を実施した。
4.個人暴露調査を行い、環境測定値と個人曝露の相関を検討した。
5.電話調査による東京都特別区の有病率の推計を行った。
結果と考察
1.(1)解析対象は北海道577軒、福島428軒、名古屋278軒、大阪318軒、岡山337軒、北九州360軒の計2,298軒。症状が「いつもある」で、「家を離れるとよくなる」を有意な症状と定義した場合(SHS1)、日本全体では0.8-2.0%、であった。結露カビなど湿度環境の指標が有意に症状に関連。
(2)北海道:104軒、343人、福島:68軒、246人、名古屋:60軒、189人、大阪:78軒、283人、岡山:84軒、297人、北九州:50軒、164人が対象。家のにおいや空気の汚れに対する訴え、高湿度に関連する項目、防虫剤の使用、ペットの飼育が症状に関連していた。アルデヒド類、VOC、真菌、ダニアレルゲンが症状に関連していた。
2.GC/MSで芳香族VOCの尿中代謝物を測定したが、低濃度では食品摂取などと交絡する可能性がある。
3.化学物質過敏症疑いの4症例について化学物質濃度は全測定点で指針値を超過していなかった。
4.自宅にいる時間が80%くらいの場合は環境測定値と個人曝露は高い相関だったが、喫煙者では相関が低かった。
5.電話調査での有病率は、5.9%と2年前と比較して減少していた(2002年度調査12.7%)。
結論
家屋毎のシックハウス症候群の有病率は、厳しい定義で0.8-2.0%と推定された。世帯の住人全員の調査と環境測定をあわせて実施した結果、各地で湿度環境の指標や、一部の化学物質、真菌、ダニアレルゲン症状の関連を認めた。今後は、本データから濃度影響関係(最小影響曝露レベル)等を明らかにし、シックハウス症候群予防対策に資する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2005-05-23
更新日
-