胎生期の水銀およびカドミウム曝露による神経行動毒性の高感受性群におけるリスク評価に関する研究

文献情報

文献番号
200401259A
報告書区分
総括
研究課題名
胎生期の水銀およびカドミウム曝露による神経行動毒性の高感受性群におけるリスク評価に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 知保(東京大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 吉田稔(聖マリアンナ医大医学部)
  • 佐藤雅彦(岐阜薬科大学)
  • 島田章則(鳥取大学農学部)
  • 吉田克巳(東北大学大学院医学系研究科)
  • 今井秀樹(国立環境研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
21,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、マウス胎生期におけるメチル水銀(MeHg)およびカドミウム(Cd)への曝露が生後の中枢神経機能に及ぼす影響を行動試験(活動性・学習機能)を用いて評価し、影響に関する生理的・遺伝的・環境的な修飾要因を検索するとともに、遺伝子発現など毒性発現の機序についても検討することを目的としている.
研究方法
実験動物にはC57BL/6J系マウス(野生型)とメタロチオネインI/II欠損(MTKO)マウスを用い、遺伝的感受性要因の検討を行った。また、周生期曝露とは在胎(GD)0日から出生後(PND)10日までとし、Cdは飲水、MeHgは餌、Hg0は呼吸を通じ、いずれも母体経由の曝露とした.MeHg,Cdの単独曝露については前年までに検討を終え,今年度は加齢、複合曝露(MeHgとHg0)、内分泌系機能の操作などによる発達毒性の修飾を検討した.また,前年度に引き続きDNAマイクロアレイを用いた遺伝子発現の変動スクリーニングをおこない,有意な変動を得た遺伝子については,リアルタイムRT-PCR(RRP)、免疫組織化学を用いた変動の確認をおこなった.
結果と考察
加齢期の評価:Cd曝露においては統計的に有意な行動影響を認めなかった.MeHg曝露の行動影響は、若齢期での評価に比べ,加齢後により顕著な形で現れた.加齢による修飾作用はMTKOで強く現れ、加齢とMT欠損はMeHgの発達毒性を相加的に増悪させることが明らかになった.MeHgとHg0の複合曝露では行動機能、遺伝子発現のいずれにおいても顕著な相互作用は認められなかった.マイクロアレイでは、CdおよびMeHgのいずれでも発現変動する遺伝子が数個ずつ同定され、一部はRRPでも変動が確認された.特にCdではトランスフェリン受容体の発現が促進され、MeHgではPLPなど数種の遺伝子の発現が減少していた.培養細胞においてMeHgは甲状腺ホルモン依存性の成長ホルモン分泌を抑制すること、すなわち前年度見いだした甲状腺ホルモン代謝酵素抑制に生理的意義があることを確認した.
結論
周生期MeHg曝露の行動毒性は、加齢後により顕著となり、MT欠損系統でその傾向が明確であった.Cd曝露の行動毒性については、そのような知見は得られなかった.Cd、MeHgともに少数の遺伝子の有意な変動が確認されたが、その毒性学的意義の解明はこれからの課題である.

公開日・更新日

公開日
2005-04-25
更新日
-

文献情報

文献番号
200401259B
報告書区分
総合
研究課題名
胎生期の水銀およびカドミウム曝露による神経行動毒性の高感受性群におけるリスク評価に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 知保(東京大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 吉田稔(聖マリアンナ医大医学部)
  • 佐藤雅彦(岐阜薬科大学)
  • 島田章則(鳥取大学農学部)
  • 吉田克巳(東北大学大学院医学系研究科)
  • 今井秀樹(国立環境研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、マウス胎生期におけるメチル水銀(MeHg)およびカドミウム(Cd)への曝露が生後の中枢神経機能に及ぼす影響を行動試験(活動性、学習機能)を用いて評価し、影響に関する生理的・遺伝的・環境的な感受性要因を検索するとともに、遺伝子の発現変動など毒性機序についても検討することを目的とした.
研究方法
実験動物にはC57BL/6J系マウス(野生型)とメタロチオネインI/II欠損(MTKO)マウスを用い、遺伝的感受性要因の検討を行った。曝露とは在胎0日から出生後10日まで、Cdは飲水(10ppm添加)、MeHgは餌(5ppm添加)に添加し、母体経由の曝露とした.まず、周生期における各金属への単独曝露による発達毒性を行動学的、内分泌学的に検討し、次に加齢、複合曝露(MeHgとHg0)、内分泌系機能の操作などによる発達毒性の修飾を検討した.また、 DNAマイクロアレイならびにリアルタイムRT-PCR(RRP)、免疫組織化学を用い、遺伝子・タンパク質レベルでの影響の検索をおこなった.
結果と考察
周生期Cd曝露は、出生仔の行動ならびに出生仔の甲状腺ホルモン(TH)環境に影響すること、影響はMT欠損系統でより強く現れることが明らかとなった.MeHg曝露の行動影響は、若齢期での評価に比べ、加齢後に特にMTKOにおいてより顕著な形で現れた.MeHgは、Cdとは全く異なる形でTH環境に影響を及ぼした.MeHgとHg0の複合曝露では顕著な相互作用は認められなかった.マイクロアレイならびにRRPで変動が確認された遺伝子は極めて少数であったが、Cdではトランスフェリン受容体の発現促進、MeHgではPLPなど数種の遺伝子の発現抑制が確認された.Cd、MeHgともに通常の神経病理学的検索では異常所見は得られなかった.培養細胞においてMeHgはTH代謝酵素抑制を強力に阻害し、TH依存性の成長ホルモン分泌を抑制することを確認した.副腎機能低下モデルでMeHg毒性への感受性が高まる可能性が示唆された.
結論
周生期Cd曝露が発達毒性を有する可能性が複数のエンドポイントで示された.周生期MeHg曝露の場合、加齢ならびにMT欠損は高感受性要因となることが示された.Cd、MeHgいずれについても、新生仔脳で曝露により発現変動する少数の遺伝子が同定されたが、その毒性学的意義の解明は将来的課題である.

公開日・更新日

公開日
2005-04-22
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-02-20
更新日
-