小児期発症のミトコンドリア脳筋症に対するL-アルギニンおよびジクロロ酢酸療法の効果判定と分子病態を踏まえた新しい治療法開発に関する臨床研究

文献情報

文献番号
200400431A
報告書区分
総括
研究課題名
小児期発症のミトコンドリア脳筋症に対するL-アルギニンおよびジクロロ酢酸療法の効果判定と分子病態を踏まえた新しい治療法開発に関する臨床研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
古賀 靖敏(久留米大学医学部小児科学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 後藤 雄一(国立精神神経センター神経研究所疾病研究第二部)
  • 森 雅人(自治医科大学小児科)
  • 岡 明(国立成育医療センター神経内科)
  • 杉江 秀夫(浜松市発達医療総合福祉センター)
  • 内藤 悦雄(徳島大学医学部発達医学講座小児科医学分野)
  • 萩野谷 和裕(東北大学大学院医学系研究科小児医学講座小児病態学分野)
  • 田辺 雄三(千葉県立こども病院第一内科)
  • 中野 和俊(東京女子医科大学小児科)
  • 松岡 太郎(市立豊中病院小児科)
  • 馬嶋 秀行(鹿児島大学医歯学総合研究科腫瘍学講座・宇宙環境医学講座)
  • 石井 正浩(北里大学医学部小児科学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 小児疾患臨床研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
22,320,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ミトコンドリア病は、エネルギー産生障害を来し、種々の症状を呈するヒトで最も多い遺伝病である。小児の難病であるにもかかわらず、我が国における本症の診断基準は未だ確立されたものは無く、また効果的な治療方針も決められてはいない。このような状況の中で、本症の効果的診断法を確立し、有効な治療指針を決定する事は、現行の医療制度の中では、社会的医療援助が受けられていない本症の病気に苦しむ患者に光明を与え、後遺障害を予防出来、ひいては日本国の医療費削減に寄与できるものであり、一日も早いミトコンドリア病の治療環境の整備が必要である。本研究では、本症の新しい治療法の研究開発を主体とし、同時にその診断基準および重症度分類、治療指針を作成し、小児慢性特定疾患対象疾病としての治療環境の基盤整備を目的とする。
研究方法
1.国内でのMELAS急性発作期のL-アルギニン使用症例の解析。
2.ミトコンドリア脳筋症の分子基盤解明への研究
3.ミトコンドリア病の診断システムなどのインフラ整備。
4.MELASに対するL-アルギニン内服療法の効果判定。
5.L-アルギニンの新たな薬理作用の検討。
6.ミトコンドリア病(MELAS、およびLeigh脳症の2病型)の我が国における診断基準および重症度分類の策定。
結果と考察
1.日本におけるミトコンドリア病疫学調査の結果、小児に多いMELASおよびLeigh脳症の2病型で診断基準策定、重症度分類を作成した。
2.国内でのMELAS急性発作期のL-アルギニン使用症例の解析。国内で8例のMELASにL-アルギニンが使用され、11回の脳卒中エピソードに関し、L-アルギニンの効果が著効ないし効果ありと判断されるケースは、10回(91%)であり、何ら副作用は報告されていない。
4.ミトコンドリア病の診断および治験ネットワークシステムなど治験を押し進める為のミトコンドリア病ネットワークワークセンターを開設した。
5.MELASに対するL-アルギニンの急性期静注および内服療法の効果判定。MELAS患者24名の脳卒中様発作の急性期にL-アルギニンを静注することにより、症状の軽減と次の発作の予防が可能であることを示した。
結論
ミトコンドリア病の治療研究の基盤整備が、本厚生研究により確立出来たと考えられる。この基盤に立ったミトコンドリア病に対する新しい治験研究が日本で開始される事を希望する。それには、まずはMELASに対するL-アルギニン療法の治験研究が最適と考えられる。安全で副作用の無い薬剤開発に限った医師主導型治験の早急な研究開始が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2005-06-01
更新日
-

文献情報

文献番号
200400431B
報告書区分
総合
研究課題名
小児期発症のミトコンドリア脳筋症に対するL-アルギニンおよびジクロロ酢酸療法の効果判定と分子病態を踏まえた新しい治療法開発に関する臨床研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
古賀 靖敏(久留米大学医学部小児科学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 後藤 雄一(国立精神・神経センター神経研究所部長)
  • 二瓶 健二(平成14年度~15年度)(国立成育医療センター神経内科医長)
  • 岡  明(平成16年度)(国立成育医療センター神経内科医長)
  • 桃井真里子 (平成14年度)(自治医科大学小児科学教授)
  • 山形 崇倫 (平成15年度)(自治医科大学小児科学講師)
  • 森  雅人 (平成16年度)(自治医科大学小児科学講師)
  • 杉江 秀夫(浜松市発達医療総合センター所長)
  • 内藤 悦雄(徳島県立ひのみね整肢医療センター小児科部長)
  • 萩野谷和裕(東北大学大学院小児病態学分野)
  • 田辺 雄三(千葉県こども病院第一内科部長)
  • 中野 和俊(東京女子医科大学小児科講師)
  • 松岡 太郎(市立豊中病院小児科副部長)
  • 馬嶋 秀行(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科)
  • 石井 正浩(北里大学医学部小児科教授)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 小児疾患臨床研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ミトコンドリア病は、エネルギー産生障害を来し、種々の症状を呈するヒトで最も多い遺伝病である。小児の難病であるにもかかわらず、我が国における本症の診断基準は未だ確立されたものは無く、また効果的な治療方針も決められてはいない。本研究では、本症の新しい治療法の研究開発を主体とし、同時にその診断基準および重症度分類、治療指針を作成し、小児慢性特定疾患対象疾病としての治療環境のインフラ整備を目的とする。
研究方法
1)患者数の把握、病型、診断方法、現在の治療法に関しアンケート調査を実施した。2)国内でのMELAS急性発作期のL-アルギニン使用症例の解析を行った。3)ミトコンドリア脳筋症の分子基盤解明への研究を種々の研究項目に分けて行った。4)ミトコンドリア病の診断システムなどのインフラ整備を行った。5)MELASに対するL-アルギニン内服療法の効果判定を行った。6)L-アルギニンの新たな薬理作用の検討。7)ミトコンドリア病(MELAS、およびLeigh脳症の2病型)の我が国における診断基準および重症度分類の策定を行った。
結果と考察
1)日本では、741症例のミトコンドリア脳筋症患者が存在し、小児科で多いMELASおよびLeigh脳症の2病型に関し、診断基準と重症度分類を策定した。2)国内で11例のMELASにL-アルギニンが使用され、91%で効果があった。3)ミトコンドリア病の診断および治験ネットワークシステムなどのインフラ整備事業では、ミトコンドリア病ネットワークワークセンターを開設した。4)MELAS患者6名の頻回発作型のMELAS患者でL-アルギニンの内服を行い発作の重症度および頻度を有意に低下させ、発作間歇時の予防に有効であることを示した。ミトコンドリア病のNation wide surveyにより、日本における患者の実数を明らかにし、MELASおよびLeigh脳症の日本の診断基準および重症度分類を策定することで、ミトコンドリア病の治療適応とする薬剤開発の基盤を整える事が出来たと考えられる。本研究から見出されたMELASに対するL-アルギニン療法は、世界に先駆けて日本で開発した独自の治療法であり、Neurology誌に2報続けてHighlighting paperに推薦された意義は大きい。
結論
ミトコンドリア病の治療研究の基盤整備が、本厚生研究により確立出来たと考えられる。この基盤に立ったミトコンドリア病に対する新しい治験研究が日本で開始される事を希望する。

公開日・更新日

公開日
2005-06-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-02-03
更新日
-