核・生物毒・化学物質毒災害および関連する災害(NBC災害)に対する総合的医療対応の研究-多面的な対応体制の確立を目指して

文献情報

文献番号
200301113A
報告書区分
総括
研究課題名
核・生物毒・化学物質毒災害および関連する災害(NBC災害)に対する総合的医療対応の研究-多面的な対応体制の確立を目指して
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
原口 義座(国立病院東京災害医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 津金 正彦(警視庁公安機動捜査隊)
  • 大竹晃行(東京消防庁特殊災害課)
  • 友保 洋三(国立病院東京災害医療センター)
  • 山本 保博(日本医科大学)
  • 岩本 愛吉(東京大学付属医科学研究所)
  • 吉岡 敏治(日本中毒情報センター)
  • 大橋 教良(日本中毒情報センター)
  • 石原 哲(全日本病院協会)
  • 白濱 龍興(自衛隊中央病院)
  • 箱崎 幸也(自衛隊中央病院)
  • 練石 和男(放射線影響研究所)
  • 奥村 徹(順天堂大学)
  • 堤 邦彦(北里大学)
  • 鎌田裕十郎(MeRU)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全総合研究経費 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
-
研究費
8,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
意図的・非意図的を問わず、人為災害、特に核・生物毒・化学物質災害(NBC災害)対策が重視されてきている。
本研究は、核・生物毒・化学物質災害および関連する災害(NBC災害)に対する総合的医療対応を確立する目的で行った研究である。
なお関連災害として、核物質・化学物質を含めた爆発事故・事件、およびテロリズムによる災害(すなわち意図的なもの)への医療対応も重要と考え当初より加えてきた。この点に関しても言及する。
また具体的な実際の医療活動に役立つものとすることも大きな目的である。 
研究方法
以下、各項目別に分担研究者毎に研究を行った。
なお、昨年度までの研究成果と本年度の研究の方向性・方法を提示する。
背景は、以下の如くである。すなわち従来の研究結果から核・生物毒・化学物質災害(NBC災害)には、共通点がある反面、異なった対応を要する面があることが明らかとなった。それゆえ共通面での対応体制を確立し、更に各専門的な対応体制を加味してゆくという両面作戦・研究が必要である。昨年度までにえられた結果は、
①「共通する研究項目」として「除染方法とその分類」、2次汚染予防対策の研究結果として「具体的なゾーニングの必要性と限界」、「除染の技術的面も含めた方法論」が実際の応用にほぼ可能となったこと。「精神的な対応・援助」に関して報告集を作成、早期からの対応開始の必要性が認められたこと。「汚染患者対応とその汚染拡大防止目的の養生の方式」に関しても基本をほぼ確立できたこと等多岐にわたる成果が得られた点である。しかし災害弱者への対応面での特にNBC災害時対応は、不備であること。各公的な専門機関・施設としての利点・限界がある程度明らかとなり、相互補填の観点からの役割分担の再確認、法的・慣習的問題を乗り越えるための各機関等の立場を考慮した協力モデルの作成(多様化したもの)のプロトタイプモデルを作成した。
②「異なった対応を要する面」として上記項目と並行して「生物毒」「化学物質」「放射性物質」各々の災害別の観点から専門的な医療対応のあり方がある。これらに関しても、その詳細に関しての研究としても昨年度までに成果をあげてきた。
その結果を踏まえた上での研究として、最終年度にあたる本年度(平成15年度)の研究を行った。
結果と考察
本年度は、上記の方向性のもと、有意義な幾つかの結果・成果が得られたと考えられた。以下主要なものを示す。
①NBC災害医療の最新のあり方に関するシンポジウム・講演会を開催、広く専門的な立場の方々の全てとの交流を持った。成果を「NBC災害に対する最新の医療」として印刷・出版の準備にとりかかっている。
①NBC災害に最も重視すべき項目としての汚染防護の視点でも重視されるゾーニング等に関しては、既に原案を提示していたが、今回は、一例として京都府丹波で発生した「鳥インフルエンザ対策」等において汚染時の予防対策・ゾーニング等での活動に関し、本研究結果の有効性が実際に確認された。すなわち、従来の汚染対応医療訓練での経験を基礎に有効な組立がなされ、その意義が実証された。
③国立病院東京災害医療センター臨床研究部が中心となって、災害医療テキストブックと災害医療大系の骨組みがほぼ固まりつつあること(総合的見地からのものは、国立病院東京災害医療センター臨床研究部で作成済みのテキストブックをバージョンアップしつつある)
④NBCシンポジウムを通して、多くの(ほとんど全ての)災害医療に関連する施設・機関・官公庁等の協力へ向けての一歩を踏み出すことができた。
⑤各専門分野の研究活動としては、やはり主要なものを提示すると、
1)改善した化学災害マニュアル作成への活動(奥村 徹分担研究者等)、
2)化学災害を中心としたNBC災害への知識の普及・啓発活動の意義が十分にあることをまとめた研究(大橋教良分担研究者他)、
3)「こころのケア」に関して、特に原子力災害時における住民メンタルヘルスケア対策についてのまとめの研究(練石和男分担研究者等)、
4)自衛隊(中央病院)の視点からのNBC災害時の対処における意義の検証の研究(白濱龍興 ・箱崎幸也分担研究者)、
5)実技面も訓練に加えることを想定したCISDの実際(堤 邦彦分担研究者)、
6)テロ面に重点をおいた医療対応の問題点の研究(友保洋三分担研究者他)がある。この他、公的機関の連携に関する研究も多方面からなされた。
結論
以上の如く多岐にわたる分野の研究に成果があげらてたが、最終段階としてこれを統一したものとして、実際の現場にあったものとすることが、必要である。
すなわち、全体のまとめとして、上記の全ての研究結果を統一して、一つの大きな方向性を作成していく段階に進行したと考えられる。
本研究としての最終段階として、あるいは今後の研究の進める計画として、この研究結果をもとに、
①具体的な(現実的な) NBC災害対策時の対応諸分野・機関全てに対しての連携・治療協力モデルの完成(基本内容はほぼ作成済み)、
②災害時の精神面でのsupport体制の確立へむけての取り組み(実技面での確立)、
③汚染防護のレベルの整合性・トリアージ基準の確立(更に症例・訓練が必要ではあるが、一応完成)、
④災害弱者体制の整備、
⑤2次災害防止の系統的なマニュアル作成、
⑥総合的視点から見た災害医療テキストブック、教育・研修・訓練用の記録メヂア・印刷物の充実、
⑦これらをわかりやすい形で一般市民への啓蒙・協力依頼への印刷物作成が最終段階となりつつあると考えている。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-