新たな救急医療施設のあり方と病院前救護体制の評価に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200301005A
報告書区分
総括
研究課題名
新たな救急医療施設のあり方と病院前救護体制の評価に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
小濱 啓次((財)日本救急医療財団)
研究分担者(所属機関)
  • 丸川征四郎(兵庫医科大学)
  • 益子邦洋(日本医科大学千葉北総病院)
  • 横田順一朗(大阪府泉州救命救急センター)
  • 坂本哲也(帝京大学)
  • 大友康裕(国立病院東京災害医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全総合研究経費 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
病院前救護において近年新たに創設された制度についての実態調査および現状の評価を行うとともに、今後の救急医療体制に係わる制度と機能のあり方に関する政策的提言を行う。具体的には、下記の分担研究班において研究を推進するとともに、分担研究を総括し、今後の救急医療のあり方を検討する。1)「病院前救護体制における情報システムの在り方に関する研究」病院前救護体制における救急現場情報の通信と管理システムの在り方を検討し、具体的な改善策を提言する。特に、現場の救急救命士と病院の指導医師がリアルタイムに共有する情報システムの開発を目的とした。平成15年度は送信システムのプロトタイプの試作と試用、臨床医学的な判断に必要とされる画質レベルの検討を目的とした。2)「ドクターヘリの実態と評価に関する研究」ドクターヘリを運営している7地区で平成14、15年度にドクターヘリが出動した全ての症例を対象に、ドクターヘリ事業の実態を明らかにし、その効果評価を行うことを目的とした。運営における評価指標を盛り込んだデータ収集用フォーマットの作成も重要な研究課題とした。また、消防・防災ヘリに医師が搭乗するミッションの形態調査および効果評価と課題の抽出も目的とした。
3)「メディカルコントロールの実態と評価に関する研究」都道府県ならびに地域メディカルコントロール(MC)協議会は、救急救命士の包括指示下での除細動、さらには気管挿管など救急救命士の業務拡大を遂行する大前提となる組織である。しかし、その設置状況だけではなく質的にも地域によって格差が存在するとされているので、その実態調査と評価を行うとともに、今後の運営における評価指標を策定することを目的とした。4)「新たな救急医療施設のあり方に関する研究」平成15年度より新たに整備される“新型救命救急センター"で提供されるべき医療の内容について検討したうえで、具体的な設置基準と施設基準を作成することを目的とした。平成15年度は新型救命救急センターの基本的なコンセプトを専門家による議論をもとにして構築し、従来の“救命救急センターの充実段階の評価法"と整合性を持った“新型救命救急センターの充実段階の評価法"を考案した。5)「災害時における広域緊急医療のあり方に関する研究」東海地震をモデルとして内閣府が進めている広域救急医療における政府の対応計画に関わる幾つかの課題に対して、具体的な対応策や適切な解決策を導き出すことが、本研究の目的である。平成15年度は、おもに①東海地震を想定した広域搬送患者の適応疾患と優先順位について、②広域搬送患者受け入れ可能人数の把握に係わる検討を目的とした。
研究方法
1)では、民間企業の研究者チームと情報と技術の交換、ならびに画像情報送信システムのプロトタイプ試作を目的とする研究会を創設。新しい画像送信装置を利用した臨床判断に適合する画像基準の検討。2)では、ドクターヘリ運営に関する実態調査のための評価指標、データ収集用フォーマットの策定。これを用いた搬送例の実態調査と効果評価。
3)では、メディカルコントロール協議会と体制に係わる概要調査。評価指標の策定。
4)では、専門家識者討論会議の開催。ここで救急医療体制、救命救急センターの現状分析と、新型救命救急センターの基本コンセプトの形成。救命センター充実段階評価法の策定。
5)では、阪神淡路大震災の実態調査データの分析を基礎に広域搬送患者の適応疾患と優先順位の判断基準を策定。都道府県の災害拠点病院での被災者受け入れ可能数の調査結果を分析し広域搬送患者受け入れ人数を推定。
結果と考察
1)では、民間企業の研究者の協力を得て、ウェアラブルコンピュータを中心とした携帯型の情報送信システムを試作した。大阪空港航空機事故対策総合訓練で試用し、システムの性能と装置のハンドリングについて改良点を分析した。またディスプレイ300万画素によっても徴候に係わる画像は臨床医学的には満足できず、今後、画像の改良が課題である。2)では、ドクターヘリ運営7地区の全出動件数と診療人数、そして主な疾患、重症度分類、搬送先病院、出動不可の実態、出動中の医療処置内容と件数などを明らかにした。救急車搬送に比べ119番覚知から現場到着時間(即ち治療開始時間)は平均22.2分短縮された。転帰調査から救急車搬送に比べて、ドクターヘリ事業により死亡例を131例(7%)削減、重度後遺症を86例(5%)削減したと推定でき、有用性が明らかになった。消防・防災ヘリの利用の効果評価は困難であるが進めなければならない。評価のクリニカルインジケーターを含んだ標準的なデータ収集フォーマットを作成した。3)では、MC体制ならびにMC協議会には形態ならびに質には著しい地域格差が存在する事実が明らかになった。MC体制の意義、事後検証の必要性、再教育の必要性など、MCの本質への理解不足が原因と推定できた。また、医療機関、消防機関および行政など関連組織の連携不足にも一因と考えられた。このため、MC体制の評価基準にはMC体制の本質を啓発するための誘導型設問を盛り込んだ調査表を作成すべきであると結論した。4)では、新型救命救急センターは救命救急センターを単に小型化したものではなく、マンパワーや施設の不足のため初期診療が満足できない基幹的な二次救急病院の改善を最重要課題とした新型救命センターを構想すべきであるとの結論を得た。さらに、従来の“救命救急センターの充実段階の評価法"と整合性を持った“新型救命救急センターの充実段階の評価法"を考案した。5)では、想定した東海地震では急性期(24時間以内)の広域搬送適応の重症者が400-600人と推定し、優先順位について“東海地震における広域搬送対象疾患と優先順位"、外傷患者については“重症体幹四肢外傷と重症頭部外傷の広域航空搬送とトリアージ基準"を提案した。広域搬送患者受け入れ可能人数の見直を重症外傷、広範囲熱傷、クラッシュ症候群を中心に検討した。派遣医療チーム(DMAT)、ステージングケアユニット、航空機内での患者搬送については実際的な検討が必要である。
結論
救急医療体制が稼動し始めてから約40年が経ち、今日では国民にレベルの高い救急医療を均等に分配すると言う原則を実現するための解決策が求められている。救急救命士による医行為範囲の拡大、新型救命救急センターの新設はMC体制を前提とした一つの解決策であり、現場の救急救命士と病院の医師が医療情報を共有するシステムは今日的な解決法である。均等分配の原則は災害医療でも適応される。本研究はこの原則を普遍化するために利用可能は成果を挙げつつある。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-