医療機器の内外価格差に関する調査研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200300008A
報告書区分
総括
研究課題名
医療機器の内外価格差に関する調査研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関)
南部 鶴彦(学習院大学)
研究分担者(所属機関)
  • 上塚芳郎(東京女子医科大学)
  • 坂巻弘之(医療経済研究機構)
  • 山﨑学(医療経済研究機構)
  • 菅原琢磨(国際医療福祉大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療機器の問題は、平成8、9年頃から内外価格差の問題として最初とりあげられた。それは当時重視された日本型流通機構の非効率性との関連があったからである。しかし問題はそれにとどまらない。内外価格差は現在も依然として解消されておらず、保険財政を圧迫する一つの要因となっている。それと同時に、医療機器の開発と技術進歩は、患者の苦痛を和らげ新しい生活環境を提供するとともに、医療費を最終的には削減する効果も持ちうる。すなわち、医療機器自体は、とりわけ高齢化の進展する日本社会にあっては、その費用と便益を資源の有効な配分という視点から詳細に分析する必要がある。本研究では、機器の価格形成について、需要と供給の側面から実証的な研究を行い、もし非効率性があるとしたらどこでそれが発生しているか、そしてそれはどのようなメカニズムに依存するものかを、経済分析によって明らかにすることを目的とした。
研究方法
本研究では、第1年度目である本年度は、医療機器のうち非設備的な治療系機器を対象とした。なお、第2年目は設備的な性格が強く、繰り返し使用される性格の強い診断系機器をとりあげる予定である。これは両者の間に製品特性の違いがあり、分析のモデルも自ら異なるからである。具体的には、本年度は心臓治療用医療用具(PTCAバルーンカテーテル、ステント、ペースメーカー)、整形外科医療用具(人工股関節用材料、人工膝関節用材料)、眼科医療用具(眼内レンズ)を調査の対象とし、日本循環器学会、日本整形外科学会、日本眼内レンズ屈折手術学会の協力を得て、アンケート調査を行うとともに、有識者などへのインタビュー調査を行った。
結果と考察
アンケート調査の結果、複数の医療機関が共同で医療用具を購入するという形態はまだあまり浸透しておらず、全体の1割程度に過ぎなかったが、共同購入をする医療機関の方が基準価格に対する値引率が高くなる傾向がみられた。さらに、開設主体別に値引率をみると、国立病院等では購入価格の情報交換が進んでいるにもかかわらず、値引率は医療法人等の民間病院に比べて値引率は低く抑えられていた。また、製品の銘柄選定にあたっては、用度課等が価格交渉を行う前に、既に担当診療科の医師が決定していることが多くみられたが、類似機能の製品銘柄間、あるいは同一製品銘柄について複数仕入業者間で価格比較を行っている医療機関では値引率が高くなっていた。附帯サービスについてみると、特にペースメーカーでは仕入業者が術前準備の補助や術中の立合い、術後の定期検診等に深く関与している実態が明らかになった。これらの関与なくペースメーカー移植術を実施することには否定的な見解をとる医療機関も多くみられた。計量分析の結果においても、附帯サービスとしての24時間バックアップや関連機器リースなどは医師とメーカー・卸との緊密さを示すものと考えられ、それらはいずれも値引率を引き上げる効果を持っていた。
結論
本研究の結果から、医療機関における医療機器の購入慣行として、自院単独での購入、製品銘柄の選定への医師の影響力、メーカー・卸等の附帯的サービスなどいったものが値引率を抑制する作用を持つことが明らかになった。

公開日・更新日

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