看護職における男女共同参画の課題と可能性に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200201323A
報告書区分
総括
研究課題名
看護職における男女共同参画の課題と可能性に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
矢原 隆行(福山市立女子短期大学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
3,014,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
従来、看護職、介護職等ケア・サービスを行う職業領域は、典型的な女性的職業として、その多くが女性によって担われてきた。この背景には、家庭における女性役割を含む社会構造に深く刻まれたジェンダー構造の存在があるが、膨大な量の看護・介護問題を考えるとき、家族にせよ専門職員にせよ、男性が看護・介護に従事することなしには、真の意味での男女共同参画社会の到来はおぼつかない。他方で、未だ少数派とはいえ、これらの領域に進出する男性の数は近年、着実に増大している。こうした社会的背景をふまえ、本研究においては、広範囲に男性ケア・サービス専門職をめぐるマクロおよびミクロな現状を把握するとともに、そこで彼らが抱える諸課題を明らかにし、より有効な人的資源の活用を可能とする方策について検討することまでを目指す。具体的には、男性ケア・サービス専門職に焦点をおいた質的(前年度)および量的(今年度)実態調査を行い、わが国の看護・介護職における男性活用の課題と展望について具体的に検討する。
研究方法
調査期間は2003年1月初旬~1月末。調査対象の選定においては、第一に、全国の看護・介護職に従事する男女を対象とすること、第二に、看護・介護職における少数派である男性のデータについて、量的分析に耐え得る一定のボリュームを収集することを目的とし、次のような手順により調査対象を選定した。①看護職:厚生省健康政策研究会編『病院要覧2001-2002年版』医学書院に収録された全国9257(平成12年10月1日現在)の病院より500カ所をランダムサンプリング。介護職:柴山勝洋編『全国老人ホーム年鑑2002年版』キャリアメッセージ社(2002)に収録された全国の特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、各種老人ホームの17128の施設より500カ所をランダムサンプリング。②看護職・介護職とも各施設(病院では看護部長宛、施設では施設長宛)に女性用2部、男性用2部の計4部の調査票を送付し、該当職員全体の中から経験年数や部署、職位に関係なく氏名の五十音順でランダムに配布を依頼(男性職員が2名以下の施設に関しては、在籍する男性職員全員に配布)した。調査はすべて無記名とし、対象者へは研究の目的や方法を調査票上で説明し、回答の自由(答えたくない内容については答える必要のないことを確認)、統計的処理をした上で個人名や施設名がわからない状態で公表することなどを保証した。
結果と考察
男性看護職216名、女性看護職415名、男性介護職188名、女性介護職295名の計1115名から回答を得た。職業参入プロセス、職業領域および家庭領域における現状、将来への不安および展望の三局面に関して、各々明確な男女差が見いだされた。具体的には、看護・介護系学校進学理由における男女間の差異、職業選択理由における女性看護・介護職の資格による自立志向、男性看護・介護職における患者からの看護拒否の経験の高さ、女性看護・介護職における患者・利用者からのセクシュアルハラスメントの経験の高さ等が確認され、また、因子分析により、看護・介護職ともに職場の満足度に関する四つの因子(人間関係因子、報酬因子、労働時間因子、職務内容因子)が抽出された。また、判別分析および重回帰分析により、収入および地位の規定要因として性別が一定の説明力を有することが確認された。こうした結果はC.L.Williamsの言うところの「ガラスのエスカレーター」が国内においても機能している可能性を推察させるものである。
結論
質問紙調査による量的研究により、全国の看護・介護職を母集団とした標本調査において、職業参入プロセス、職業領域および家庭領域における現状、将来への不安および展望の三局面に関す
る様々な男女差が確認された。また、収入および地位の規定要因として、性別が一定の説明力を有することが確認された。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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