生涯を通じた健康の管理・保持増進のための健康教育・相談支援等の充実に関する研究(総括総合研究報告書)

文献情報

文献番号
200200345A
報告書区分
総括
研究課題名
生涯を通じた健康の管理・保持増進のための健康教育・相談支援等の充実に関する研究(総括総合研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成14(2002)年度
研究代表者(所属機関)
稲葉 裕(順天堂大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 平井愛山(千葉県立東金病院)
  • 三上春夫(千葉県がんセンター)
  • 松村康弘(国立・健康栄養研究所)
  • 永田知里(岐阜大学医学部)
  • 水嶋春朔(東京大学医学教育国際協力センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
1,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
女性に対し女性の健康問題をより適切に教育することで医療の効率化につながるか、健全な食生活や適切な身体活動度の維持などの一次予防を行っている者では医療費が減少し健康寿命が向上するか、また生活習慣病の発生が遅延するか、逆に喫煙や過度な飲酒など健康を害する生活習慣を行っている者では医療費が上昇するかを明らかにする。自分の健康及び疾病に関する状態を適切に把握している者では健康寿命が向上するか、更年期の女性の症状は、適切な食生活または身体活動度を維持していた者では、その発現が少ないかどうかを明らかにする。
研究方法
1.女性医療の実態とそのフォローアップ研究(平井愛山)は千葉県下の6つの医療機関で開設されている女性専用外来受診者と15の保健所に開設されている女性のための健康相談窓口の受診者を対象にアンケート調査を実施した。2.生活習慣上のリスクファクターの発現に関する性差の追跡調査研究は1) 1989年に設定された2160人の栗源町コホートの再解析(三上春夫)を行う。栗源町コホートは1999年までの死亡票・住民票の調査から316件の死亡、転出35件を把握している。2)高山コホート(永田知里)は1992年に設定された34、018人の高山コホートの結果を再解析する。高山コホートのデータを用いて女性の栄養摂取量、特にカルシウム、イソフラボン摂取量を分析する。3)国民栄養調査による女性の年齢別栄養摂取量(松村康弘)研究については国民栄養調査の目的外使用申請を行い、地域別性年齢別栄養素摂取量と食品摂取量を解析する。4)人口動態死亡統計の解析(稲葉 裕)は1995・2000年の人口動態死亡票の解析を行う。5)千葉県安房地域における女性の長寿の要因に関する疫学調査(水嶋春朔)は千葉県で平均寿命が最も長い安房地域を対象にコホート調査を開始するための準備を行う。調査地域は市町村、安房医師会、安房保健所の協力体制があり、生活習慣も特徴があることが知られている。
結果と考察
1.女性医療の実態とそのフォローアップ研究は2003年2月12日現在で合計1100名前後のアンケートを回収した。回収したアンケートについて、概要をまとめると以下のようである。1) 現在の健康状態について:健康があまりよくないと考えている者の割合が、最大で39%、最低で17%と地域により2倍近い差が見られた。健康状況については、「健康ちば21」で指摘されたように千葉県では地域差が大きい可能性がある。2) 自分の体の変化で定期的にチェックしているのは、圧倒的に体重が多く、血圧や乳房などについては体重の半分以下であり、健診の受診については、子宮ガン・乳がんが50%前後であるのに対して、骨粗鬆症の健診受診は16%と著しく低かった。必ずしも健康管理が正しい知識に基づいて行われているわけではないことが判明した。3)健康に関する情報の入手源としては、テレビ番組が76%と圧倒的に高く、新聞・雑誌、健康セミナーの3~4倍であり、健康に関して相談できる医療関係者がいると答えたのは半分に過ぎないことから、偏った情報・知識に基づいた行動形態である可能性が示唆された。4)更年期に伴うからだの変化については、必ずしも正確な知識が普及しておらず、のぼせ・ほてりについて30%程度が理解しており、高コレステロール血症については15%程度しか理解されていないことが判明した。5)更年期についてはできることなら緩和したいと考えているものが70%に達している。しかし、ホルモン補充療法について聞いたことがあると答えたものは
、55%に過ぎず、関心があると答えたものも50%に過ぎなかった。一方、ホルモン補充療法の副作用が心配というのが35%、情報が不十分が43%と正確な情報が広く提供されている状況とは程遠いことが判明した。6)今後試してみたいと考えている治療法では、カウンセリングや漢方薬を希望する割合が20%前後と高く、食事療法についても同程度に高い。また、40歳台後半から60歳台にかけて行いたいことのトップは健康づくりで60%に達しており、健康づくりについて、今回の対象者はモチュベーションが相当に高いことが判明した。これらのことから、健康づくりに対して高いモチュベーションを有する中高年女性に対して、更年期を含めた人生後半の健康増進のための正しい質の高い情報や知識を継続的に提供する一方、健診や治療について、受診や受療の機会を高める健康福祉政策が必要と考えられる。次年度に女子高校生の生活習慣とくにカルシウム摂取の調査を実施する予定である。2.生活習慣上のリスクファクターの発現に関する性差の追跡調査研究、1)栗源町コホートの再解析は今年度は1997~2002年の検診データと2002年末までのがん登録データとのリンケージを実施し、転出者21名・死亡者140名およびがん罹患者165名を同定した。2)高山コホートの再解析は1992年に設定された34、018人の高山コホートの結果を用いて女性の栄養摂取量、特にカルシウム、イソフラボン摂取量を分析した。50歳未満のカルシウム摂取の少ないことが推定された。3)国民栄養調査による女性の年齢別栄養摂取量研究は国民栄養調査の目的外使用申請が認められ、地域別性年齢別栄養素摂取量と食品摂取量を解析している。1995年のカルシウム摂取は、20歳未満が牛乳・乳製品から、30歳以上が魚介類からと推定された。4)人口動態死亡統計の解析は1995・2000年の人口動態死亡票の解析を実施し、年齢調整死亡率が男性より高い死因として、老衰、くも膜下出血、慢性リウマチ性心疾患が注目された。5)千葉県安房地域は平成7年(1995)の地域別平均寿命が千葉県で最も長い(男76.9、女85.4)地域である。今年度は2003年度からコホート調査を開始するための準備を進めた。
結論
1.女性医療の実態とそのフォローアップ研究は千葉県下の6つの医療機関で開設されている女性専用外来受診者と15の保健所に開設されている女性のための健康相談窓口の受診者を対象にアンケート調査を実施し、約1100名のアンケートを回収した。1) 現在の健康状態、2) 定期的にチェックしている自分の体の変化、3)健康に関する情報の入手源、4)更年期に伴うからだの変化についての知識、5)更年期についての意識や情報、6)今後試してみたいと考えている治療法についての結果を得、健康づくりに対して高いモチュベーションを有する中高年女性に対して、正しく質の高い情報や知識を継続的に提供する一方、健診や治療について、受診や受療の機会を高める健康福祉政策が必要と考えられた。2.生活習慣上のリスクファクターの発現に関する性差の追跡調査研究として、栗源町コホートは1997~2002年の検診データと2002年末までのがん登録データとのリンケージを実施し、転出者21名・死亡者140名およびがん罹患者165名を同定した。2)高山コホートは1992年に設定された34、018人の結果を用いて、女性の栄養摂取量、特にカルシウム、イソフラボン摂取量を分析し、50歳未満のカルシウム摂取の少ないことが推定された。3)国民栄養調査結果を用いた研究については国民栄養調査の目的外使用申請が認められ、1995年の地域別性年齢別栄養素摂取量と食品摂取量を解析した。カルシウム摂取は20歳未満が牛乳・乳製品から、30歳以上が魚介類からと推定された。4)人口動態死亡統計の解析は1995・2000年の人口動態死亡票の解析を行い、年齢調整死亡率が男性より高い死因として、老衰、くも膜下出血、慢性リウマチ性心疾患が注目された。5)千葉県安房地域における女性の長寿の要因に関する疫学調査は千葉県で平均寿命が最も長い安房地域を対象にコホート調査を開始するための準備を行った。

公開日・更新日

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