文献情報
文献番号
200101045A
報告書区分
総括
研究課題名
地域住民における栄養評価の新たなストラテジー、臨床および環境因子との関連
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
下方 浩史(国立療養所中部病院長寿医療研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 安藤富士子(国立療養所中部病院長寿医療研究センター)
- 甲田道子(中京女子大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究事業
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
13,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書（概要版）
研究目的
食習慣が多様化し、またサプリメント等の使用が年々増大するような時代変化に対応して、栄養評価のための新たなストラテジーが必要となる。本研究は新たな料理やサプリメントのデータベースを作成し、それを元に新たな調査法を開発し、さらに蓄積されている膨大なデータをもとに遺伝子や最新の臨床データを含む様々な背景因子との包括的な横断的および縦断的解析を行うものであり、食生活の時代変化や社会の高齢化に対応する栄養評価を目指すものである。
研究方法
対象は長寿医療研究センター周辺(大府市および知多郡東浦町)の地域住民からの無作為抽出者(観察開始時年齢40-79歳)である。調査内容資料の郵送後、参加希望者に調査内容に関する説明会を開催し、文書による同意(インフォームド・コンセント)の得られた者を対象とした。対象者は40,50,60,70歳代男女同数とし一日6名ないし7名、1年間で約1,200人について以下の老化関連要因の検査調査を、年間を通して行い、2年ごとに追跡観察を行う。追跡中のドロップアウトは、同じ人数の新たな補充を行い、定常状態として約2,400人のコホートとする。
施設内に設けた検査センターで年間を通して毎日6名ないし7名に対し、医学・心理学・運動生理学・形態学・栄養学・遺伝子解析などの学際的かつ詳細な検査・調査を行っている。栄養評価に関しては、調査開始当初から秤量法による3日間の食事記録に、3日間すべての食事前後の写真撮影を加えた詳細な栄養調査(3DR)を実施し、栄養素摂取量の計算を行っている。平成11年度に2,267名の調査参加者に対して第1回調査を終了し、平成12年度から第2回調査を開始した。調査は順調に進んでおり、平成13年度末には第2回調査を終了する予定である。
(倫理面への配慮)本研究は、国立中部病院における倫理委員会での研究実施の承認を受けた上で実施している(審理内容および承認書の写しを添付)。調査に参加する際には説明会を開催し、調査の目的や検査内容、個人情報の保護などについて半日をかけて十分に説明を行い、全員からインフォームド・コンセントを得ている。また、分析においては、参加者のデータをすべて集団的に解析し,個々のデータの提示は行わず、個人のプライバシーの保護に努める。
施設内に設けた検査センターで年間を通して毎日6名ないし7名に対し、医学・心理学・運動生理学・形態学・栄養学・遺伝子解析などの学際的かつ詳細な検査・調査を行っている。栄養評価に関しては、調査開始当初から秤量法による3日間の食事記録に、3日間すべての食事前後の写真撮影を加えた詳細な栄養調査(3DR)を実施し、栄養素摂取量の計算を行っている。平成11年度に2,267名の調査参加者に対して第1回調査を終了し、平成12年度から第2回調査を開始した。調査は順調に進んでおり、平成13年度末には第2回調査を終了する予定である。
(倫理面への配慮)本研究は、国立中部病院における倫理委員会での研究実施の承認を受けた上で実施している(審理内容および承認書の写しを添付)。調査に参加する際には説明会を開催し、調査の目的や検査内容、個人情報の保護などについて半日をかけて十分に説明を行い、全員からインフォームド・コンセントを得ている。また、分析においては、参加者のデータをすべて集団的に解析し,個々のデータの提示は行わず、個人のプライバシーの保護に努める。
結果と考察
第1回調査で得られた各種検査の性別年齢別標準値を老化の基礎データとしてモノグラフとして報告するとともに英文でインターネットを介して全世界に公開した(http://www.nils.go.jp/ep/monograph.htm)。平成13年度には、(1)4,314項目の料理コード・システムの作成、(2)約1,000人の3DRデータの料理および食品のコード化、(3)約1,000人の3日間の料理種類と摂取頻度の集計、(4)調査参加者への医師および栄養士によるサプリメント摂取の面接調査、メーカーからの資料を収集による795項目のサプリメント・データベースの作成、(5)サプリメント摂取頻度の集計を終えた。以上についてはすべてのコードのリストおよび集計結果を報告書に添付資料として印刷掲載し、配布した。(6)さらに、これらのデータベースから、年間を通しての平均的な食習慣を評価するための食物摂取頻度調査票(FFQ)の作成に着手した。
また、分担研究者らは調査で得られたデータをもとにサプリメントおよび安静時代謝に関しての解析を行った。サプリメントは経口摂取される通常の食品形態ではない食品(錠剤、粉末、液体等)とし、ビタミン類、ミネラル類、脂肪酸類、アミノ酸類、食物繊維類、5訂日本食品標準成分表記載外のその他の有効成分を含むもの(その他の有効成分)、栄養成分添加医薬品の7分類とし、さらに細分化した。データベースとして737種類のサプリメントの情報が得られた。内訳は、ビタミン類26.9%、ミネラル類9.0%、その他の有効成分53.7%等であった。対象者のサプリメント摂取状況ではサプリメントを摂取している対象者の割合は男性59.1%、女性65.1%であり、内訳は男女平均でビタミン類29.4%、その他の有効成分43.8%であった。サプリメント摂取者でのサプリメント平均摂取数は男性2.0種類、女性2.4種類、摂取頻度は男性0.62回/日、女性0.75回/日であった。
安静時代謝の解析では1)安静時代謝量の性差および加齢に伴う変化、2)肥満関連指標(身体計測値および体脂肪分布)と安静時代謝量との関連性を検討した。安静時代謝量は女性より男性で、高年群より中年群で高かった。体組成で調整したところ性差は見られなくなったが、年齢群間には依然有意差が認められたことから、加齢そのもの、あるいは体組成以外の加齢に伴う要因が安静時代謝量に影響する可能性が示唆された。高齢男性においては、内臓脂肪面積が安静時代謝量と負相関したことから、安静時代謝量の低い者では内臓脂肪が多く蓄積していると考えられた。
栄養は疾病予防、健康維持および増進の最も重要な因子である。しかし栄養摂取量、栄養状態、食行動及び食環境等を正確に評価し、それを活用していくことは難しい。食習慣が多様化し、またサプリメント等の使用が年々増大するような時代変化に対応して、栄養評価のための新たなストラテジーが必要となる。
本年度は、研究初年度であり、料理コードとサプリメン・データベースの作成、料理とサプリメントの頻度の集計などを終え、FFQの作成に着手した。来年度以降は、(1)FFQの完成とその妥当性の検討および実際の食習慣データ収集、(2)加齢による食習慣変化、家族形態による食習慣の相違、喫煙や飲酒、身体運動など生活習慣の影響の横断的および縦断的解析、(3)食習慣およびその縦断的変化と血中ビタミンや血清脂質、脂肪酸分画、肥満や身体組成などの血液および身体の栄養指標との関連についての解析、(4)各種生活習慣病の臨床パラメータと栄養素摂取・食習慣との関連についての横断的および縦断的解析の実施を目指して研究を行っていく予定である。
また、分担研究者らは調査で得られたデータをもとにサプリメントおよび安静時代謝に関しての解析を行った。サプリメントは経口摂取される通常の食品形態ではない食品(錠剤、粉末、液体等)とし、ビタミン類、ミネラル類、脂肪酸類、アミノ酸類、食物繊維類、5訂日本食品標準成分表記載外のその他の有効成分を含むもの(その他の有効成分)、栄養成分添加医薬品の7分類とし、さらに細分化した。データベースとして737種類のサプリメントの情報が得られた。内訳は、ビタミン類26.9%、ミネラル類9.0%、その他の有効成分53.7%等であった。対象者のサプリメント摂取状況ではサプリメントを摂取している対象者の割合は男性59.1%、女性65.1%であり、内訳は男女平均でビタミン類29.4%、その他の有効成分43.8%であった。サプリメント摂取者でのサプリメント平均摂取数は男性2.0種類、女性2.4種類、摂取頻度は男性0.62回/日、女性0.75回/日であった。
安静時代謝の解析では1)安静時代謝量の性差および加齢に伴う変化、2)肥満関連指標(身体計測値および体脂肪分布)と安静時代謝量との関連性を検討した。安静時代謝量は女性より男性で、高年群より中年群で高かった。体組成で調整したところ性差は見られなくなったが、年齢群間には依然有意差が認められたことから、加齢そのもの、あるいは体組成以外の加齢に伴う要因が安静時代謝量に影響する可能性が示唆された。高齢男性においては、内臓脂肪面積が安静時代謝量と負相関したことから、安静時代謝量の低い者では内臓脂肪が多く蓄積していると考えられた。
栄養は疾病予防、健康維持および増進の最も重要な因子である。しかし栄養摂取量、栄養状態、食行動及び食環境等を正確に評価し、それを活用していくことは難しい。食習慣が多様化し、またサプリメント等の使用が年々増大するような時代変化に対応して、栄養評価のための新たなストラテジーが必要となる。
本年度は、研究初年度であり、料理コードとサプリメン・データベースの作成、料理とサプリメントの頻度の集計などを終え、FFQの作成に着手した。来年度以降は、(1)FFQの完成とその妥当性の検討および実際の食習慣データ収集、(2)加齢による食習慣変化、家族形態による食習慣の相違、喫煙や飲酒、身体運動など生活習慣の影響の横断的および縦断的解析、(3)食習慣およびその縦断的変化と血中ビタミンや血清脂質、脂肪酸分画、肥満や身体組成などの血液および身体の栄養指標との関連についての解析、(4)各種生活習慣病の臨床パラメータと栄養素摂取・食習慣との関連についての横断的および縦断的解析の実施を目指して研究を行っていく予定である。
結論
作為抽出された40歳から79歳までの約2,000名以上の地域住民で平成9年度から2年ごとに追跡調査を行っている。この集団を対象に、新たな料理やサプリメントのデータベースを作成し、その集計を行った。本年度には、(1)4314項目の料理コード・システムの作成、(2)約1,000人の3DRデータの料理および食品のコード化、(3)約1,000人の3日間の料理種類と摂取頻度の集計、(4)サプリメント摂取の面接調査およびメーカーからの資料を収集による795項目のサプリメント・データベースの作成、(5)サプリメント摂取頻度の集計を終えた。また得られたデータをもとに解析を行った。サプリメント調査では737種類、のべ2,077品のサプリメントの情報が得られた。対象者の約60%が平均2.2品のサプリメントを摂取しており、その半数弱がその他の有効成分を含むサプリメントであった。安静時代謝量は女性より男性で、高年群より中年群で高かった。体組成で調整したところ性差は見られなくなったが、年齢群間には依然有意差が認められたことから、加齢そのもの、あるいは体組成以外の加齢に伴う要因が安静時代謝量に影響する可能性が示唆された。
公開日・更新日
公開日
-
更新日
-