WHO飲料水水質ガイドライン改訂等に対応する水道における化学物質等に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200100910A
報告書区分
総括
研究課題名
WHO飲料水水質ガイドライン改訂等に対応する水道における化学物質等に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
眞柄 泰基(北海道大学大学院)
研究分担者(所属機関)
  • 国包章一(国立公衆衛生院)
  • 相澤貴子(国立公衆衛生院)
  • 安藤正典(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 長谷川隆一(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 西村哲治(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 米沢龍夫(日本水道協会)
  • 伊藤禎彦(京都大学大学院)
  • 伊藤雅喜(国立公衆衛生院)
  • 秋葉道宏(国立公衆衛生院)
  • 浅見真理(国立公衆衛生院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 生活安全総合研究事業
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
91,050,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2003年のWHO飲料水水質ガイドラインの全面改訂に対応し、我が国の水道水質に関する基準も全面的に見直す必要が生ずると考えられ、このため、未規制、未監視の化学物質の水道における存在状況の把握、浄水処理における除去・生成・制御機構の理論的解明、毒性情報の収集・評価といった化学物質に関する科学的情報、知見が必要となる。このため、これらの化学物質を含め水道水中に存在する化学物質等について水道における存在状況の把握、浄水処理における除去・生成・制御機構の理論的解明、毒性情報の収集・評価といった化学物質に関する科学的情報、知見を得ることを目的とする。
研究方法
主任研究者及び分担研究者の他、水道事業体等技術者、研究者60名の研究協力者からなる研究委員会を設置し、全国レベルでの実態調査および室内実験等をおこなった。
結果と考察
WHOガイドライン対象物質となっているアメトリンやモリネート等の農薬やそれらの浄水過程などにおける分解物、アンチモン、ウラン、スズ等の重金属等無機物質の原水・浄水処理過程、浄水中での存在料の確認や有機物金属類、過マンガン酸カリウム消費量等に加えて生物資化性有機物質量や臭気物質等一般有機物、WHOガイドラインの見直しの対象となっているMXやハロ酢酸等の消毒副生成物、水質試験における試料のサンプリング箇所および箇所数の科学的な決定方法、鉛の水質基準強化のための測定法のあり方や鉛を利用している水道用資機材からの鉛溶出、WHO飲料水ガイドラインの改訂に際して我が国が担当しているエピクロロヒドリン等化学物質の毒性評価および水質基準における化学物質と感染性微生物の規制のあり方を検討した。
(1) 農薬分科会では、「農薬要覧」を用いて調査対象農薬の最近の5年間(平成8年~12年)の全国ならびに調査対象とした12水道事業体が所属する都道府県の農薬出荷量を殺虫剤、殺菌剤、除草剤別に上位からリストアップした。また、農薬検出実態調査は、なるべく農薬の使用時期を考慮して水道水源、水道原水、処理過程、浄水について実施した。
農薬監視のプライオリティ-と研究の方向性を決定する際には下記の要因を考慮した。
水道原水、浄水から検出頻度が高い。我が国で使用量、生産量が多い。ADI(1日許容摂取量)が低い。水溶解度が高く、水系への流出係数が大きい(オクタノ-ル・水分配係数(LogKow)が低い)。測定法が確立している。浄水処理効率が低い。各農薬の検出濃度が基準値あるいは指針値以下でも検出される農薬の種類が多数ある場合は、各農薬のADIに基づき総検出農薬累加寄与率を算出し、その10%を浄水処理の暫定水質管理目標(PWQCL)として提案し、この指標について検討した。
(2)重金属分科会では水道用硬質塩化ビニル管の製造過程における有機スズ類の使用状況調査を製造メーカを中心に聞き取り調査を行った。また、水道水へ溶出する微量の有機スズ類を測定する試験方法を開発した。
水道原水にアンチモンをNF膜による除去についての基礎実験を行うとともに、実用化へ向けたパイロットプラントの設置し基本性能を調べた。
北海道内の水道水源の内地下水について無機物質についての調査を実施した。また、食品からの重金属類の摂取量調査を行うための試料の前処理方法および分析法を確立した。
(3)一般有機物分科会では、人に対して健康影響を示さないものの、消費者に不快感を与え、水の価値を低下させ、水に対する信頼を失わせる水道水における異臭味、WHO飲料水ガイドラインの改訂に際してガイドライン値の見直しの対象となっている14化学物質。過マンガン酸カリウム消費量(有機物等)とそれに変わる新たな指標を設定して、文献調査や実態調査等を実施した。
(4)消毒副生成物分科会では。監視項目の暫定値を超える水道が出ることが懸念されるハロ酢酸について、実態調査と制御方法の提示を行った。このほかに、MXの実態調査にむけて分析法の検討、前駆有機物の前処理性とハロ酢酸生成能の生成特性、ハロ酢酸のリスク管理手法に関する検討、TOXかそれにかわるハロゲン化有機物指標に関する検討を行った。
(5)サンプリング分科会では、水道の水質試験における採水箇所と箇所数並びに採水頻度等の適切な設定方法を検討するための予備的検討として、国内における法規制等の現状と各水道事業体における実態、さらには諸外国における規制等の現状につき調査した
(6)鉛分科会では、鉛の水質基準強化のための測定方法の在り方や鉛を利用している水道用資機材からの鉛溶出について、及び鉛などの溶出防止技術について調査検討を行った。
実際に使用されていた鉛製給水管を用いて、給水装置のモデルを作り、滞留水中と流水中における鉛濃度と滞留時間、管口径、管延長、流量との関係や鉛の溶出形態等の調査を行った。
水道水からの鉛の摂取形態を検討するため、家庭における水道水の利用形態を、水道事業体の協力を得てアンケート調査した。
(7)毒性評価分科会では、WHO飲料水ガイドライン改訂で日本が原案作成を行った1,4-dioxane(以下dioxane)、epichlorohydrin(以下ECH)および1,4-hexachloro butadiene(以下HCBD)について、各国からのコメントに対して適切に回答した。また、近年内分泌かく乱作用の疑いのもたれている化学物質の内、本年度はbisphenol A、di(2-ethylhexyl) phthalate (DEHP)およびdinonyl phthalate (DINP)の内分泌系への毒性情報を中心に調査し、まとめると共にDEHPとDINPに関しては現時点での1日耐容摂取量(TDI)の算定を行い、bisphenol Aについては低用量影響に関してのヒトへの健康影響の可能性に関して検討を行った。
(8)総合評価分科会では、水質基準策定の根拠となるTDIの策定におけるリスクとその評価方法について検討を行った
結論
WHO飲料水ガイドラインの改訂及び水道法に定める水質基準の見直しに際して必要な化学物質などについて水道における毒性、挙動及び低減化に関する基礎的な知見を得ることが出来た。しかし、2003年には水道水質基準を大幅に再検討することとなっていることから、今後とも既存の水道水質基準に定められている項目ばかりでなく、新規物質についても調査継続して行うこととしている。

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