要介護高齢者・介護者からみた介護保険制度の評価(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200100040A
報告書区分
総括
研究課題名
要介護高齢者・介護者からみた介護保険制度の評価(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関)
杉澤 秀博(東京都老人総合研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 中谷陽明(日本女子大学)
  • 田中千枝子(東海大学)
  • 杉原陽子(東京都老人総合研究所)
  • 深谷太郎(東京都老人総合研究所)
  • 金恵京(東京都老人総合研究所)
  • 石川久展(ルーテル学院大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究事業
研究開始年度
平成13(2001)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、(1)介護保険導入前後における要介護高齢者と介護者の保健福祉ニーズ充足度の違いを導入前後の繰り返しの横断調査によって把握する、(2)制度・政策のプロセス評価の枠組みを活用して、保険料の支払い、ニーズ発生からサービスの評価にいたる各段階で「サービス選択の多様化」「ニーズへの対応」「利用者保護」「経済的平等」がどの程度確保されたかを、要介護高齢者と介護者を対象とした調査で解明する、(3)疑似実験的な方法によって介護保険導入後に提供されるサービスの効果を評価する、ことにあった。今年度は次の3つの課題を設定し、実施した。(1)課題1:介護保険導入後における要介護高齢者・介護者に対する調査の準備(要介護高齢者のスクリーニング)、 (2)課題2:要介護高齢者・介護者調査の調査票の作成、(3)課題3:「ニーズへの対応」と「経済的平等」の視点から、①介護保険料の未払い・負担感、②要介護高齢者における未申請者、③認定者におけるサービスの過少利用、の各段階におけるプロセス評価を行った。
研究方法
(1)課題1:代表性ある要介護高齢者と介護者の標本を把握するため、スクリーニング調査を高齢者の家族を対象に実施した。スクリーニングは、介護保険制度導入前のデータが収集されている東京都下の一市において、そこに居住する65歳以上の高齢者から無作為に抽出した10,000人を対象とした。調査方法は郵送留置・郵送回収法であり、実施時期は平成14年1~2月であった。(2)課題2:介護者調査は大きく2つの部分で構成し、1つは介護保険制度導入前の調査と比較可能な項目であり、他の1つはプロセス評価のための項目である。要介護高齢者については、介護者のニーズが必ずしも要介護高齢者本人のニーズと一致せず、両者が対立する場合もあるため、別途、高齢者を対象にプロセス評価のための調査票を作成した。(3)課題3:スクリーニング調査とともに高齢者本人に対する意識調査を郵送法にて実施した。さらに保険料の納入、認定申請、サービスの利用に関する情報は、行政から入手した。データの使用についてはスクリーニングの調査票を送付するに際し、対象者からデータを活用することの承諾を得ている。
結果と考察
(1)課題1:スクリーニング調査票の回収率は90.5%であり、1,323人の要介護高齢者が把握された。このように把握した要介護高齢者と介護者に対して平成14年4月に訪問面接調査を実施する予定である。(2)課題2:プリテストを平成14年3月上旬と中旬の2回実施し、介護者用と高齢者用の2種類の調査票を完成させた。(3)課題3:分析の結果、①保険料に「負担」「多少負担」との回答は71.7%であり、このような訴えは経済水準の低い層、介護保険制度に関する知識が乏しい層で強いこと、②普通徴収に関して2期以上(3ヶ月)未納の人は6.1%、保険料未納の背景には、介護保険制度に対する不信感や介護保険に頼らず私的支援体制に依拠して介護をしていこうという意識よりも、経済的な要因が強く働いている可能性があること、③要介護高齢者の中で介護保険に申請していない人は45.1%、未申請には年齢が若い、収入が高い、あるいは家族のサービスに対する抵抗感や高齢者本人の介護保険制度に対する関心や評価の低さといった心理的な要因が働いていること、さらに同居家族がいない高齢者では障害が重くなっても同居家族がいる人と比べて申請に結びつきにくいこと、④支給限度額対比では、平均して72.4%の未利用があり、同居者がいるなど私的な介護体制がある人、所得段階で第2段
階にある人では、特に未利用の割合が高いこと、所得段階1と2ではいずれも保険料や利用料負担の減免措置が講じられているが、その効果が所得段階2では乏しく、そのことによって過少利用が拡大していると考えられること、などが明らかになった。ちなみに「第1段階」は生活保護の受給者など、「第2段階」は世帯員全員が住民税非課税、「第3段階」は「本人が住民税非課税で、住民税が課税されている世帯員がいる」、「第4段階」が「合計所得が250万円未満で住民税を課税されている」、「第5段階」は「合計所得が250万円以上で住民税を課税されている」となっている。
結論
①介護保険導入前のデータと比較可能な要介護高齢者と介護者標本を把握することができた。②介護保険制度の導入前後の比較だけでなく、プロセス評価が可能なように、介護保険導入後の要介護高齢者と介護者に対する調査票を作成した。③保険料の支払いからサービスの利用・評価にいたる各段階で、介護保険制度に関わる保険料負担、未申請、サービスの過少利用の問題の広がりとその背景について解明することができた。

公開日・更新日

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