食品添加物の規格基準設定等に関する基礎的調査研究

文献情報

文献番号
199900636A
報告書区分
総括
研究課題名
食品添加物の規格基準設定等に関する基礎的調査研究
課題番号
-
研究年度
平成11(1999)年度
研究代表者(所属機関)
山田 隆(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 米谷民雄(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 義平邦利(東亜大学)
  • 伊藤誉志男(武庫川女子大学)
  • 川崎洋子(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 藤井正美(神戸学院大学)
  • 石綿肇(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 河村葉子(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 生活安全総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
19,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「食品中の食品添加物分析法」(食品化学課編)が大幅に改訂され、発刊された。これに収載されていない添加物を分析するために、新しい分析法の開発が必要である。また、今後使用される分析法には、環境や人体に対する負荷を減らすため、使用する溶媒等の選択に注意しなければならない。既存添加物には、既存添加物名簿には収載されているが規格が無い品目も多い。これらについて、規格案を設定するための調査研究が必要である。そのため、一部既存添加物の組成、主成分の構造を明らかにする。
食品添加物の安全性を確保するためには、その摂取量調査が必要である。マーケットバスケット方式による調査が行われてきているが、これを補完するための調査も必要である。
ゴム製器具・容器包装は、用途が広く、使われる添加剤も多数にのぼるにもかかわらず、これまでの報告は少ないため、各種市販ゴム製品について、その材質の鑑別、残存化学物質及びそれらの溶出傾向等を明らかにすることを目的とした。
研究方法
1.規格試験法、分析法からの有害試薬の除去に関しては、新しく発刊された「食品中の食品添加物分析法」から、有害と考えられる試薬を使用している試験法を拾い出した。
2.既存添加物の規格設定のための検討では、クチナシ赤色素の遠心式限外ろ過膜による分子量の測定、PTC化法によるアミノ酸の測定等を行った。また、JECFA規格を参照し、新たに既存添加物の自主規格を検討した。
3. 既存添加物の主要成分の構造に関する研究では、市販品のベニコウジ色素成分を単離し、機器分析を用いて相対配置の検討を行った。
4.食品中の食品添加物の定量法の作成とその実態調査では、食品中のルチン、イソクエルシトリンおよびクエルセチン(以下ルチン関連物質)を、有機溶剤により抽出し、電気化学検出器(ECD)及びUV検出器付きHPLCを用いて一斉分析を行った。
5.食品中の未許可添加物の分析法の開発では、食品中のネオヘスペリジンジヒドロカルコンをメタノール抽出後にC-18 Sep-pakカートリッジで精製を行い、液体クロマトグラフィーにより分離・定量した。
6.生産量統計を基にした食品添加物の摂取量の推定では、食品添加物製造業者・輸入業者へ平成10年度実需量アンケート調査を行った。
7.行政検査結果を基にした食品添加物の使用濃度と摂取量の推定は、全国の地方公共団体の行政検査の結果を集計して、食品中の保存料の平均濃度を求め、これに食品の摂取量を乗じて、保存料の摂取量を推計した。
8.ゴム製器具・容器包装中の間接添加物に関する研究 は、各種ゴム製品について、熱分解ガスクロマトグラフィーによる材質鑑別、食品擬似溶媒による溶出試験、及び蛍光X線分析により有害元素の有無等を調べた。
結果と考察
1.規格試験法、分析法からの有害試薬の除去では、改訂された食品中の食品添加物分析法より、シアン化合物、ベンゼンを使用しているものそれぞれ、3品目、3品目が見いだされた。これらについては、別の試験法を考案する必要がある。
2.既存添加物の規格設定のための検討 クチナシ赤色素の分子量は、検討した3社の製品ですべて異なっていた。遊離アミノ酸は、主としてArg、Gluであった。香料212品目について業界で使用している規格を調査した。
3.既存添加物の主要成分の構造に関する研究では、ベニコウジ色素のO-N置換したアミノ酸の光学活性はL体であった。また、食品中からの分析法を検討した。
4.食品中の食品添加物の定量法の作成とその実態調査では、UV-HPLCは、ECD-HPLCに比べてルチン関連物質検出感度は10~40分の一であるが、グラジエントプログラムを使用することにより、15分以内に良好に分離できた。添加回収率は、再現性良く80%以上であった。
5.食品中の未許可添加物の分析法の開発では、甘味料のネオヘスペリジンジヒドロカルコンを、ODSカラム,移動相にアセトニトリル-0.02%リン酸混液(25 : 75)を用いることによりきょう雑ピークとの分離、回収率ともによく分析することが出来た。
6.生産量統計を基にした食品添加物の摂取量の推定では、食品添加物製造輸入業者462社に調査表を発送し、調査表の回収率は75.8%であった。
7.行政検査結果を基にした食品添加物の使用濃度と摂取量の推定では、使用基準に対し、安息香酸7.8%、p-ヒドロキシ安息香酸3.2%、ソルビン酸14.1%、イマザリル8.0%、オルトフェニルフェノール3.0%、チアベンダゾール3.2%、亜硝酸塩17.2%、硝酸塩30.9%、二酸化硫黄14.4%、ブチルヒドロキシアニソール3.9%、プロピレングリコール16.8%、サッカリンナトリウム5.7%等であった。
8.食品用ゴム製品61試料について材質鑑別を行ったところ、シリコーンゴムが約半数を占め、次いでジエン構造をもつイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴムが多かった。食品疑似溶媒浸出液による蒸発残留物量は、平均で水4.8 ppm、4%酢酸68.3 ppm、20%エタノール20.6 ppm、n-ヘプタン1、653 ppmであった。
結論
改訂された「食品中の食品添加物分析法」中のヒト又は環境に有害な試薬を使用している品目を検索し、今後の改訂法作成の資料を得た。
クチナシ赤色素について規格設定時に問題となりそうな項目について検討した。また、JECFA規格のない既存添加物に対する業界自主規格の検討、及びJECFA規格のある香料化合物品目における市販製品の適合性の検討を行った。
ベニコウジ色素の市販品より、O-N置換したアミノ酸の立体配置を決定した。
食品より、有機溶媒でルチン関連物質を抽出し、HPLCを行うことによって、食品中のルチン関連物質が分離・定量出来た。食品中の不許可甘味料,ネオヘスペリジンジヒドロカルコンを,食品中から回収率良く分析できた。
食品添加物の製造業者と輸入業者に対するアンケート調査を行い、前回調査と比較して不十分な回答を摘出し、次年度の追調査への資料を完成した。
平成8年度の全国の行政検査結果から、調査した食品添加物の食品中の濃度は、使用基準の30.9%以下、摂取量はADIの35.7%以下で、安全性が確保されていることが判明した。
食品用ゴム製器具は、食品衛生法による規格試験では全試料適合であったが、食品疑似溶媒を用いた溶出試験では蒸発残留物量がかなり高いものがあった。

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