肝炎の病態評価指標の開発と肝炎対策への応用に関する研究

文献情報

文献番号
201921004A
報告書区分
総括
研究課題名
肝炎の病態評価指標の開発と肝炎対策への応用に関する研究
課題番号
H29-肝政-指定-001
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
考藤 達哉(国立国際医療研究センター国府台病院 肝炎・免疫研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 是永 匡紹(国立国際医療研究センター国府台病院 肝炎・免疫研究センター)
  • 田中 純子(広島大学大学院医系科学研究科 疫学・疾病制御学)
  • 島上 哲朗(金沢大学付属病院 地域医療教育センター)
  • 板倉 潤(武蔵野赤十字病院 消化器科)
  • 大座 紀子(国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
  • 瀬戸山 博子(独立行政法人労働者健康安全機構 熊本労災病院 消化器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
30,760,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肝炎対策基本指針の見直しにおいて、肝硬変又は肝がんへの移行者を減らすことが目標と設定された。現在、肝炎政策スキームの各ステップ(受検、受診、受療、治療後フォロー)において、各実施主体の達成数値目標が統一されておらず、事業と肝炎医療の向上を推進するための改善策を提示しにくい状況である。肝硬変への移行者の減少を政策目標に設定する場合、慢性肝疾患の病状変化を把握する指標が必要であるが、現在使用されている線維化判別式(FIB-4等)の妥当性評価や新規指標の探索が必要である。
本研究班では以下を目的とした。①肝炎政策に係る各事業、医療実施主体別に事業実施、医療提供の程度と質を評価する指標を作成する。指標の妥当性、有用性を、自治体、拠点病院、厚生労働省、肝炎情報センターの4者で評価・検証し、総合的な肝炎政策の推進に向けた具体的な取り組みの提言を行う。②ウイルス肝炎検査に関する全国調査(国民調査)・10都道府県対象追跡調査を実施し、2011年国民調査と比較することで、ウイルス肝炎検査に対する国民意識の変化、肝炎施策の認知度の向上、地域別受検率規定要因等を明らかにする。③臨床的肝硬変移行率を推計する指標、方策を確立し、その有効性・妥当性を評価する。
研究方法
① 各事業主体別指標調査:平成30年度調査指標を重み付け・省力化・継続可能性の観点から整理した。肝炎医療指標(拠点病院向け9、専門医療機関向け16)、病診連携指標(6)、自治体事業指標(19)、拠点病院事業指標(18)を調査・解析した。
② 2017国民調査・2018追跡調査:2017年国民調査により、ウイルス肝炎検査受検率およびその変化には地域差があることが明らかになったため、都道府県別に肝炎ウイルス検査受検率の変化に寄与する要因を明らかにするために、10府県を対象に追加調査を実施した。
③肝硬変移行率指標研究:
・コホート1:肝生検を2回以上実施され、最終的に肝硬変(F4)と診断された患者
・コホート2:肝生検により肝硬変(F4)と診断された患者(後方視的観察群)
・コホート3:肝生検により高度線維化(F3)と診断された患者(前方視的観察群)
上記3コホートで、肝線維化判別能が認められている指標(APRI、FIB-4)の経時的推移を検討する。非肝硬変から肝硬変に至る年数、線維化Stageの進行速度、移行者年率などを推計する。抗ウイルス療法による肝硬変進展率(速度)の抑制効果も評価する。
結果と考察
拠点病院においては、均てん化された肝炎医療が提供されており、平成30年度調査と比較して、肝線維化指標、SVR指標には改善が認められた。電子カルテアラートシステムの導入、院内連携には更に取組が必要である。専門医療機関においても一定の肝炎医療が提供されていた。自治体事業指標に関しては肝炎医療コーディネーターの配置は拠点病院、専門医療機関、保健所では進んでいるが、自治体担当部署では進んでいないことが明らかになった。拠点病院事業指標から事業別に進展の地域差が存在することが明らかになった。②2018追跡調査の結果から、肝炎ウイルス検査を受検したもの(認識受検)は、回答者全体では26%、都道府県別にみると19~35%であった。行政施策の認知度は、10府県全体で知って肝炎プロジェクト19.7%、無料肝炎ウイルス検査11.1%、初回精密検査・定期検査公費補助9.0%、 抗ウイルス療法医療費助成12.2%、肝炎コーディネーター2.9%であった。未受検者の理由には地域差が認められた。③C型肝炎の後方視的解析群ではAPRI上昇率 0.09/年、FIB-4 index上昇率0.29/年で、いずれも約10年で進行肝線維化から肝硬変への移行を認めた。C型肝炎の前方視的解析群ではAPRI上昇率 0.14/年、FIB-4 index上昇率0.40/年で、5年後に肝硬変相当となる基準値はAPRI 1.3、FIB-4 index 2.23であった。C型肝炎においては、肝硬変への進展を反映する指標として、APRI, FIB-4の有用性が示唆された。
結論
肝炎医療指標、肝炎政策関連事業指標の調査と評価を行った。医療指標・各事業指標の継続調査によって、肝炎医療の均てん化や肝炎政策事業の進展が評価できることが示唆された。今後は肝疾患専門医療機関を対象にした全国調査が必要である。次年度は修正版指標を調査する予定である。2017年国民調査・2018年追跡調査によって、受検率の向上が確認されたが、非認識受検率や地域別の未受検理由など課題も明らかになった。B型肝炎ではAPRI/FIB-4による病態推移の評価は困難であった。C型肝炎(特に無治療例)では有用性が示唆されたが、新たな評価指標の探索が必要である。

公開日・更新日

公開日
2021-02-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-02-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201921004B
報告書区分
総合
研究課題名
肝炎の病態評価指標の開発と肝炎対策への応用に関する研究
課題番号
H29-肝政-指定-001
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
考藤 達哉(国立国際医療研究センター国府台病院 肝炎・免疫研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 是永 匡紹(国立国際医療研究センター国府台病院 肝炎・免疫研究センター 肝炎情報センター)
  • 田中 純子(広島大学大学院医系科学研究科 疫学・疾病制御学)
  • 島上 哲朗(金沢大学付属病院 地域医療教育センター)
  • 板倉 潤(武蔵野赤十字病院 消化器科)
  • 大座 紀子(国立国際医療研究センター国府台病院 肝炎・免疫研究センター)
  • 瀬戸山 博子(独立行政法人労働者健康安全機構 熊本労災病院 消化器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肝炎対策基本指針の見直しにおいて、肝硬変又は肝がんへの移行者を減らすことが目標と設定された。現在、肝炎政策スキームの各ステップ(受検、受診、受療、治療後フォロー)において、各実施主体の達成数値目標が統一されておらず、事業と肝炎医療の向上を推進するための改善策を提示しにくい状況である。肝硬変への移行者の減少を政策目標に設定する場合、慢性肝疾患の病状変化を把握する指標が必要であるが、現在使用されている線維化判別式(FIB-4等)の妥当性評価や新規指標の探索が必要である。
本研究班では以下を目的とした。①肝炎政策に係る各事業、医療実施主体別に事業実施、医療提供の程度と質を評価する指標を作成する。指標の妥当性、有用性を、自治体、拠点病院、厚生労働省、肝炎情報センターの4者で評価・検証し、総合的な肝炎政策の推進に向けた具体的な取り組みの提言を行う。②ウイルス肝炎検査に関する全国調査(国民調査)・10都道府県対象追跡調査を実施し、2011年国民調査と比較することで、ウイルス肝炎検査に対する国民意識の変化、肝炎施策の認知度の向上、地域別受検率規定要因等を明らかにする。③臨床的肝硬変移行率を推計する指標、方策を確立し、その有効性・妥当性を評価する。
研究方法
① 各事業主体別指標調査:平成30年度調査指標を重み付け・省力化・継続可能性の観点から整理した。肝炎医療指標(拠点病院向け9、専門医療機関向け16)、病診連携指標(6)、自治体事業指標(19)、拠点病院事業指標(18)を調査・解析した。
② 2017国民調査・2018追跡調査:2017年国民調査により、ウイルス肝炎検査受検率およびその変化には地域差があることが明らかになったため、都道府県別に肝炎ウイルス検査受検率の変化に寄与する要因を明らかにするために、10府県を対象に追加調査を実施した。
③肝硬変移行率指標研究:
・コホート1:肝生検を2回以上実施され、最終的に肝硬変(F4)と診断された患者
・コホート2:肝生検により肝硬変(F4)と診断された患者(後方視的観察群)
・コホート3:肝生検により高度線維化(F3)と診断された患者(前方視的観察群)
上記3コホートで、肝線維化判別能が認められている指標(APRI、FIB-4)の経時的推移を検討する。非肝硬変から肝硬変に至る年数、線維化Stageの進行速度、移行者年率などを推計する。抗ウイルス療法による肝硬変進展率(速度)の抑制効果も評価する。
結果と考察
拠点病院においては、均てん化された肝炎医療が提供されており、平成30年度調査と比較して、肝線維化指標、SVR指標には改善が認められた。電子カルテアラートシステムの導入、院内連携には更に取組が必要である。専門医療機関においても一定の肝炎医療が提供されていた。自治体事業指標に関しては肝炎医療コーディネーターの配置は拠点病院、専門医療機関、保健所では進んでいるが、自治体担当部署では進んでいないことが明らかになった。拠点病院事業指標から事業別に進展の地域差が存在することが明らかになった。②2018追跡調査の結果から、肝炎ウイルス検査を受検したもの(認識受検)は、回答者全体では26%、都道府県別にみると19~35%であった。行政施策の認知度は、10府県全体で知って肝炎プロジェクト19.7%、無料肝炎ウイルス検査11.1%、初回精密検査・定期検査公費補助9.0%、 抗ウイルス療法医療費助成12.2%、肝炎コーディネーター2.9%であった。未受検者の理由には地域差が認められた。③C型肝炎の後方視的解析群ではAPRI上昇率 0.09/年、FIB-4 index上昇率0.29/年で、いずれも約10年で進行肝線維化から肝硬変への移行を認めた。C型肝炎の前方視的解析群ではAPRI上昇率 0.14/年、FIB-4 index上昇率0.40/年で、5年後に肝硬変相当となる基準値はAPRI 1.3、FIB-4 index 2.23であった。C型肝炎においては、肝硬変への進展を反映する指標として、APRI, FIB-4の有用性が示唆された。
結論
肝炎医療指標、肝炎政策関連事業指標の調査と評価を行った。医療指標・各事業指標の継続調査によって、肝炎医療の均てん化や肝炎政策事業の進展が評価できることが示唆された。今後は肝疾患専門医療機関を対象にした全国調査が必要である。次年度は修正版指標を調査する予定である。2017年国民調査・2018年追跡調査によって、受検率の向上が確認されたが、非認識受検率や地域別の未受検理由など課題も明らかになった。B型肝炎ではAPRI/FIB-4による病態推移の評価は困難であった。C型肝炎(特に無治療例)では有用性が示唆されたが、新たな評価指標の探索が必要である。

公開日・更新日

公開日
2021-02-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2021-02-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201921004C

収支報告書

文献番号
201921004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
39,988,000円
(2)補助金確定額
39,988,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 14,977,670円
人件費・謝金 3,766,809円
旅費 1,178,281円
その他 10,837,240円
間接経費 9,228,000円
合計 39,988,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2021-02-26
更新日
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