糖尿病性腎症重症化予防プログラムの効果検証と重症化予防のさらなる展開を目指した研究

文献情報

文献番号
201909011A
報告書区分
総括
研究課題名
糖尿病性腎症重症化予防プログラムの効果検証と重症化予防のさらなる展開を目指した研究
課題番号
H30-循環器等-一般-003
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
津下 一代(公益財団法人 愛知県健康づくり振興事業団 あいち健康の森健康科学総合センター)
研究分担者(所属機関)
  • 岡村 智教(慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学)
  • 三浦 克之(滋賀医科大学医学部)
  • 福田 敬(国立保健医療科学院)
  • 植木 浩二郎(国立国際医療研究センター)
  • 安西 慶三(佐賀大学医学部)
  • 和田 隆志(金沢大学大学院医薬保健学総合研究科)
  • 矢部 大介(岐阜大学大学院医学系研究科)
  • 後藤 資実(名古屋大学医学部)
  • 安田 宜成(名古屋大学医学部)
  • 平田 匠(東北大学)
  • 森山 美知子(広島大学)
  • 佐野 喜子(神奈川県立保健福祉大学)
  • 樺山 舞(大阪大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
11,101,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本健康会議「健康なまち・職場づくり宣言2020」における糖尿病性腎症重症化予防の取組は、2019年3月末時点で1,180市町村、32広域連合が国の定める5要件を達成した。同会議は目標を1,500市町村、47広域連合に上方修正して、さらなる推進を目指している。一方、取組の質のばらつきや効果評価が不十分である点が指摘されている。
本研究では、全国の協力自治体において重症化予防プログラムの評価(ストラクチャー、プロセス、アウトプット、アウトカム)を行う。ベースライン分析並びに3年後の検査値等の変化を分析する。この結果ならびに各分野の最新知見をもとに、プログラムの改善や標準的な評価方法を確立することを目的とする。
研究方法
全体研究には145自治体(138市町村、7広域連合)が参加。ワークショップやホームページによる情報・教材提供、個別相談を通じて取組を支援するとともに、進捗管理シートの定期的な提出とワークショップでの意見聴取等により、ストラクチャー・プロセス評価を行った。アウトプット評価は自治体からの集計表の収集、アウトカム評価は研究班で開発した「KDBを活用したデータ作成ツール」を用いて登録されたデータを分析した。分析項目は、介入前年のベースラインから2年後、3年後の臨床検査値の変化、腎症病期変化と臨床検査値変化量の関連、「3年間でeGFR15以上低下」の予測因子等である。介入の内容について詳細な記録のある事例について、介入回数、方法、専門職等の状況を分析した。
分担研究では、腎機能低下に関するリスク因子の検討、効果的な保健指導、自治体におけるプログラム実施率を高めるための方策について等、全体研究結果の解釈に関する研究や効果的な保健事業に資する研究がなされた。
結果と考察
進捗管理シートの分析から、年度を重ねるごとにプログラムの質の向上がみられる一方で、人事異動に伴い継続的な実施等に課題がある事例があった。データ作成ツールを改修し、安定的なデータ取得および問診、薬剤・疾患名、医療費の自動登録が可能となった。自治体には対象者の個人カンファレンスシート、アウトカム評価に活用可能な事業評価サマリーシートを開発、提供した。
修正したツールにより、データ追跡率は55.2%に向上した。ベースラインデータでは、HbA1c8.0%以上例または血圧160/100mmHg以上例がそれぞれ約1割存在していた。介入前後変化について分析した結果、3年後腎症病期改善群でHbA1c、血圧、脂質の改善がみられ、血糖、血圧、脂質の良好な管理が、腎症進展およびeGFR低下抑制につながる可能性が示唆された。3年間でeGFR15以上低下」の予測因子として介入前HbA1c高値、SBP高値、HDL-C低値、尿蛋白(+)以上が挙げられた。腎症4期で年間医療費(外来+調剤)が高額になり入院医療費発生率が高くなることが示され、医療費適正化の観点からも腎症病期を進行させないことの重要性を再確認した。
介入の質的評価については、履歴のあった441例について、介入回数は1回から最大11回まで確認され、1回253例、2回81例、3回38例、4回12例、5回30例、6回3例、7回2例、8回9例、9回3例、11回10例であり、1~2回の介入が多かった。方法は、通知のみ184例(42%)、電話以上(電話・教室参加・訪問・来所面談)は257例(58%)であった。介入職種は保健師196例、管理栄養士132例、看護師44例、医師17例、歯科衛生士10例、歯科医師9例、その他33例であった。
今後は平成30年度プログラム参加者について、糖尿病性腎症でありながら介入をしなかった群を対照群として、翌年度データを比較する予定である。
重症化予防の普及に関しては、研究班開催のワークショップや学会発表のほか、厚生労働省、国保中央会の研修に協力、本事業の効果的な推進にむけての情報提供やグループワーク支援を行った。国保中央会では都道府県連合会での研修に向けてのガイドラインを作成しており、研究班の提供資料を活用してもらった。これにより全国の自治体への波及が図られると考えられる。
結論
日本健康会議重症化予防WGで研究結果に基づき糖尿病性腎症重症化予防プログラム改定に向けた提案を行った。また、日本健康会議2019(2019年8月23日)において「糖尿病性腎症重症化予防対策~さらなる展開とその評価~」と題して研究成果も一部紹介した。
分析面では、ツールの改修により対照群事例の登録が増えてきていることから、次年度収集のデータにより、介入の有無による腎機能変化を分析していく予定である。

公開日・更新日

公開日
2021-02-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
総括研究報告書
総括研究報告書
総括研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2021-02-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201909011Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
12,000,000円
(2)補助金確定額
12,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 596,556円
人件費・謝金 1,021,190円
旅費 1,328,220円
その他 8,155,034円
間接経費 899,000円
合計 12,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2021-02-10
更新日
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