文献情報
文献番号
201826002A
報告書区分
総括
研究課題名
水道水質の評価及び管理に関する総合研究
課題番号
H28-健危-一般-005
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
松井 佳彦(北海道大学 大学院工学研究院)
研究分担者(所属機関)
- 秋葉 道宏(国立保健医療科学院)
- 浅見 真理(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
- 泉山 信司(国立感染症研究所 寄生動物部)
- 片山 浩之(東京大学 大学院工学系研究科)
- 伊藤 禎彦(京都大学 大学院工学研究科)
- 越後 信哉(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
- 小坂 浩司(京都大学 大学院工学研究科)
- 小林 憲弘(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
- 高木 総吉(地方独立行政法人大阪健康安全基盤研究所 衛生化学部生活環境課)
- 宮脇 崇(福岡県保健環境研究所 環境科学部 水質課)
- 広瀬 明彦(国立医薬品食品衛生研究所 安全性予測評価部)
- 松本 真理子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性予測評価部)
- 松下 拓(北海道大学 大学院工学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
26,151,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
水道水質基準の逐次見直しなどに資すべき化学物質や消毒副生成物,設備からの溶出物質,病原生物等を調査し,着目すべき項目に関してそれらの存在状況,監視,低減化技術,分析法,暴露評価とリスク評価に関する研究を行い,水道水質基準の逐次改正などに資するとともに,水源から給水栓に至るまでの水道システム全体のリスク管理のあり方に関して提言を行う.
研究方法
微生物,化学物質・農薬,消毒副生成物,リスク評価管理,水質分析法の5課題群-研究分科会を構築し,研究分担者13名の他に51もの水道事業体や研究機関などから95名の研究協力者の参画を得て,各研究分担者所属の施設のみならず様々な浄水場などのフィールドにおける実態調査を行った
結果と考察
給水栓におけるレジオネラ属管理指標として遊離残留塩素>0.1 mg/Lの重要性が確認された.凝集沈澱–砂ろ過処理によるトウガラシ微斑ウイルスの除去率は1.3~2.0-Logであり,各種の水系感染症ウイルスも同程度除去されると推察され,ウイルス対策は後段の塩素処理に大きく依存していることが改めて確認された.クリプトスポリジウム感染を防止するためには従来の2-Log除去ではなく,3-Log以上の徹底が必要であった.
テフリルトリオンやイプフェンカルバゾンのように近年新しく調査対象となった農薬のうち,特に目標値の低い農薬の影響により検出指標値が上昇する傾向にあることが確認された.イプフェンカルバゾン及びジウロンは,3~4地域で新たに検出される可能性が高まっていた.また,アミノメチルリン酸のように農薬の分解物については情報収集とモニタリングの必要性について今後検討する必要がある.農業用途や家庭用でよく用いられるフィプロニル(FIP)についてはADIが低いことから検出指標値に対する寄与が比較的高い農薬である.FIPの環境中のおける分解物の検出事例が報告されている.既存の農薬データが少ない浄水場における実態調査を実施したところ,水道原水からは35種類,浄水からは27種類の農薬類が検出されたが,目標値を超える農薬類の検出は見られなかった.
標準品が市販されてないジクロロヨード酢酸を合成し,定量のための検量線を作成できた.ラフィド藻類Gonyostomum semenのトリクロロ酢酸生成能はユーグレナ藻類Euglena gracilis や緑藻類Micrasterias hardyi より45~70倍高かった.高度浄水処理水と急速ろ過処理水について,臭気強度への指標として,全揮発性窒素が最も有効で,次いでトリクロラミンであった.
ホルムアルデヒド濃度が2.6 mg/Lの水道水を使用すると,水道水からの揮発からのみによって室内空気濃度が基準を超過する確率は5%であった.室内におけるホルムアルデヒドの他の発生源を考慮すると,許容される水道水中濃度はそれぞれ0.26~0.52 mg/Lであった.塩素処理に伴い,有機リン系農薬メチダチオンDMTPの大部分が速やかにオキソン体へと変換され,ChE活性阻害性にはオキソン体が大きく寄与していることが示された.DMTPオキソン体は水質管理目標設定項目における「農薬類」では測定対象に組み込まれていないが,DMTP原体濃度と合算して管理することが妥当であると提言された.要検討項目の8項目について短期間曝露を対象とした亜急性評価値[SaRfD (mg/kg/day)]を算出した.日本水道協会発行の水道用資機材自主規格(を参照し,水道資機材のめっき,塗装,樹脂,ゴムなどに用いられている化学物質のリスト化を行った.その中で要検討項目となっているものの目標値が設定されていない6物質の毒性情報を整理した.
GC/MSスクリーニング分析における装置性能を調べた.マトリックス負荷により早い段階でピーク形状への影響が現れるペンシクロン等を基準にメンテナンス時期を判断した方が,分析精度を確保する上で望ましいと考えられた.
テフリルトリオンやイプフェンカルバゾンのように近年新しく調査対象となった農薬のうち,特に目標値の低い農薬の影響により検出指標値が上昇する傾向にあることが確認された.イプフェンカルバゾン及びジウロンは,3~4地域で新たに検出される可能性が高まっていた.また,アミノメチルリン酸のように農薬の分解物については情報収集とモニタリングの必要性について今後検討する必要がある.農業用途や家庭用でよく用いられるフィプロニル(FIP)についてはADIが低いことから検出指標値に対する寄与が比較的高い農薬である.FIPの環境中のおける分解物の検出事例が報告されている.既存の農薬データが少ない浄水場における実態調査を実施したところ,水道原水からは35種類,浄水からは27種類の農薬類が検出されたが,目標値を超える農薬類の検出は見られなかった.
標準品が市販されてないジクロロヨード酢酸を合成し,定量のための検量線を作成できた.ラフィド藻類Gonyostomum semenのトリクロロ酢酸生成能はユーグレナ藻類Euglena gracilis や緑藻類Micrasterias hardyi より45~70倍高かった.高度浄水処理水と急速ろ過処理水について,臭気強度への指標として,全揮発性窒素が最も有効で,次いでトリクロラミンであった.
ホルムアルデヒド濃度が2.6 mg/Lの水道水を使用すると,水道水からの揮発からのみによって室内空気濃度が基準を超過する確率は5%であった.室内におけるホルムアルデヒドの他の発生源を考慮すると,許容される水道水中濃度はそれぞれ0.26~0.52 mg/Lであった.塩素処理に伴い,有機リン系農薬メチダチオンDMTPの大部分が速やかにオキソン体へと変換され,ChE活性阻害性にはオキソン体が大きく寄与していることが示された.DMTPオキソン体は水質管理目標設定項目における「農薬類」では測定対象に組み込まれていないが,DMTP原体濃度と合算して管理することが妥当であると提言された.要検討項目の8項目について短期間曝露を対象とした亜急性評価値[SaRfD (mg/kg/day)]を算出した.日本水道協会発行の水道用資機材自主規格(を参照し,水道資機材のめっき,塗装,樹脂,ゴムなどに用いられている化学物質のリスト化を行った.その中で要検討項目となっているものの目標値が設定されていない6物質の毒性情報を整理した.
GC/MSスクリーニング分析における装置性能を調べた.マトリックス負荷により早い段階でピーク形状への影響が現れるペンシクロン等を基準にメンテナンス時期を判断した方が,分析精度を確保する上で望ましいと考えられた.
結論
農薬のイプフェンカルバゾンやメチダチオン,ホルムアルデヒドや亜急性参照値など水道水質基準の基礎となる多数の知見が得られた.これらの成果は学術論文や学術集会で多数公表されるとともに,厚生労働省告示や厚生科学審議会生活環境水道部会,水質基準逐次改正検討会資料に資された.
公開日・更新日
公開日
2019-09-10
更新日
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