食品に残留する農薬管理における方法論の国際整合に関する研究

文献情報

文献番号
201823026A
報告書区分
総括
研究課題名
食品に残留する農薬管理における方法論の国際整合に関する研究
課題番号
H30-食品-指定-001
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 敬浩(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、これまでにFAO/WHO合同残留農薬専門家会議(JMPR)のFAOパネルが開発し活用している文書をもとに、国際的な水準を満たしたMRL設定方法の基本と考え方をまとめた文書(MRL設定ガイド)を開発してきた。今年度から開始する研究では、JMPRによる最新の評価やその結果及び新たに特定された課題から、背景となる科学的根拠や考察を明らかにし、MRL設定ガイドの更新を検討するとともに、MRL設定ガイドに沿った実践を行う評価者の能力向上に資する文書の開発を目的とする。また、MRL設定ガイドを十分に理解しただけでは、実際にMRLを設定することは困難である。実際のMRL設定に必要なデータの要件を明確に示し、それに従って作成・提出されたデータを、最大限に活用した科学的な評価が不可欠である。そこで、農薬等製造事業者等に対しデータの要件を明確に示す指針「MRL設定のためのデータ要件ガイド」、並びにMRL設定ガイドの考え方に沿った評価を実践するための具体的事例や検討事項を示した指針「評価者ガイド」の開発を目的とする。
研究方法
MRL案を導出する役割を担う我が国の政府担当者が、その際に必要となる知識を収集し、考察や判断にかかる能力を養うために利用可能な実践的な文書開発のために、2017年にJMPRにより発行された報告書等を精査し、その結果として特に示唆に富むと考えたシクラニリプロールの評価書を選択し正確に翻訳し、MRL設定ガイドにも含めた原理・原則に関する留意点等を加えながら解説した。また、MRL設定ガイドの更新を検討するためにも、2015年~2017年の3年間に発行されたJMPR報告書により報告された検討課題について、議論の背景と動向を調査して要点をまとめた。OECDガイドライン等にも示されたMRL設定に関する国際的な原理・原則並びに考え方を活用し、さらに効率化のための発想を踏まえて、MRL設定に関する我が国の現在の課題を特定しその解決策を示すとともに、今後に向けた提言を行うことを通じて、「MRL設定のためのデータ要件ガイド」、並びに「評価者ガイド」をどのような内容で開発するかについてその方針を検討した。
結果と考察
MRL案の導出等に使用することのできる作物残留試験データを選択する上で、GAPに従い最大の残留濃度を与える農薬の使用方法(cGAP)が採用されていることの確認が重要になる。しかしシクラニリプロールの評価においては、農薬のラベルに記載された使用方法と、実際に作物残留試験において採用された使用方法とにギャップがあり、確認が困難であった。この困難を解決するための一般的な方法論として、単一の一時消失を想定した、農薬の使用方法から最終残留物の濃度を推定するモデルが開発された。そのことを含むシクラニリプロールの評価を素材とし解説が加えられた文書が開発された。JMPRにおいて特定された新たな課題のうち、生産量等の観点から主要ではない作物(マイナー作物)のMRL設定に必要な作物残留試験の最低数等、計5つの課題が抽出され、その科学的な背景が明らかにされた。食品衛生法に基づき厚生労働省がMRLを設定していることから、厚生労働省がMRL設定のためのデータ要件ガイドを策定すべきであることが提言された。また、代謝試験、サンプリング・分析法、残留物の定義、作物残留試験、加工試験、動物負荷量の計算、動物飼養試験、経口暴露評価等の各種試験や評価の内容については、OECDガイドライン等中の該当する規定も踏まえ、国際的な原理・原則並びに考え方に即し、さらに効率化のための発想を踏まえて、どのような内容で規定すべきかの具体的な方針が示された。
結論
国内において、MRL設定を行う政府職員が、その際に従うべき原理・原則を実地で理解するための一助となることが期待される文書が、JMPRが発行するシクラニリプロール評価書を素材として開発された。近年、JMPRにより新たに特定された課題の背景と議論の動向が調査され、これまでに開発したMRL設定ガイド更新のための基礎資料が作成された。これまでの我が国におけるMRL設定の課題がより明確にされ、今後どの様に「MRL設定のためのデータ要件ガイド」、並びに「評価者ガイド」を開発すべきか、各種提言ともにその方針が具体的に示された。

公開日・更新日

公開日
2019-12-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-12-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201823026Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,000,000円
(2)補助金確定額
2,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 916,543円
人件費・謝金 0円
旅費 65,134円
その他 1,018,323円
間接経費 0円
合計 2,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2019-12-25
更新日
2021-10-13