文献情報
文献番号
201822006A
報告書区分
総括
研究課題名
振動工具作業者における労働災害防止対策等に関わる研究
課題番号
H28-労働-一般-006
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
大神 明(産業医科大学 産業生態科学研究所 作業関連疾患予防学研究室)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
2,240,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、振動工具取扱作業者に対し、累積の振動ばく露量による末梢循環や神経伝導速度の他覚的指標を分析することで,振動工具取扱いの程度と振動障害の発症リスクを明らかにすることである。さらに振動障害の早期発見のための評価方法を考案し,効果的な振動障害予防策検討するための一助になる事を目的とした。
研究方法
糖尿病・高血圧や外傷・整形外科疾患等の末梢神経障害・末梢循環障害を生じさせる基礎疾患がない成人を募り参加者を選定した。
<問診票による調査>
被験者に対し、健診機関等で主に使用されている特殊健診の問診票に加えて、振動工具使用に関する作業状況を詳細に聴取することを想定し、以下の項目に関する質問票を配布し回答頂いた。
①職歴;事業所規模、職種、産業保健体制
②取り扱い機械の状況:使用している工具の種類・使用年数、振動ばく露時間(連続使用時間・1日合計使用時間等)、保護具使用、作業環境、使用工具の整備状況、
③病歴:手指のレイノー現象などの自覚症状についての発症時期や経過を聞く。
④生活歴:喫煙歴、飲酒量、趣味(日曜大工での工具取り扱いやオートバイなどの乗用車による振動ばく露の有無)、家族歴
<理学的所見及び神経学的所見>
被験者に対し、神経内科医による診察を行い振動障害に関する所見を取り記録した。神経学的な所見としては、具体的に筋力、筋萎縮、深部腱反射、感覚障害、運動失調症状等に関し所見を得た。筋力に関しては徒手筋力テスト0~5 段階で評価し、握力も測定した。筋萎縮に関しても部位と程度を記載した。感覚に関しては、異常感覚や冷感の部位、表在感覚(触覚・痛覚)、深部感覚(振動覚・位置覚) を調べた。神経伝導検査は産業医科大学病院内で日本光電社のニューロパック X1 を用いて実施した。
検査方法は通常の神経伝導検査に準じ、両側の正中神経及び尺骨神経をそれぞれ運動神経伝導速度と感覚神経伝導速度について神経線維に沿って2箇所以上で皮膚上に電極を設置し電気的刺激を行い、画面上で活動電位を確認し活動電位の波形の潜時から、それぞれの神経伝導速度を計算した。また、運動神経と感覚神経の活動電位の振幅も測定した。なお、検査時の室温・皮膚温・測定部位については一定の基準を設け、測定誤差を少なくするよう努めた。
<レーザー血流画像化装置による皮膚血流検査>
末梢循環障害の病態を把握するためにレーザー血流画像化装置(LSFG)による皮膚血流検査を実施した。末梢循環機能は検査室温の影響を受けるため、人工気象室を用いて温度・湿度を一定の環境に調整した上で行った。食事時間や飲酒・喫煙後に一定の時間を設けた。
測定回数は季節による変動を考慮して一年間に2回(夏期、冬期)測定することとした。
<問診票による調査>
被験者に対し、健診機関等で主に使用されている特殊健診の問診票に加えて、振動工具使用に関する作業状況を詳細に聴取することを想定し、以下の項目に関する質問票を配布し回答頂いた。
①職歴;事業所規模、職種、産業保健体制
②取り扱い機械の状況:使用している工具の種類・使用年数、振動ばく露時間(連続使用時間・1日合計使用時間等)、保護具使用、作業環境、使用工具の整備状況、
③病歴:手指のレイノー現象などの自覚症状についての発症時期や経過を聞く。
④生活歴:喫煙歴、飲酒量、趣味(日曜大工での工具取り扱いやオートバイなどの乗用車による振動ばく露の有無)、家族歴
<理学的所見及び神経学的所見>
被験者に対し、神経内科医による診察を行い振動障害に関する所見を取り記録した。神経学的な所見としては、具体的に筋力、筋萎縮、深部腱反射、感覚障害、運動失調症状等に関し所見を得た。筋力に関しては徒手筋力テスト0~5 段階で評価し、握力も測定した。筋萎縮に関しても部位と程度を記載した。感覚に関しては、異常感覚や冷感の部位、表在感覚(触覚・痛覚)、深部感覚(振動覚・位置覚) を調べた。神経伝導検査は産業医科大学病院内で日本光電社のニューロパック X1 を用いて実施した。
検査方法は通常の神経伝導検査に準じ、両側の正中神経及び尺骨神経をそれぞれ運動神経伝導速度と感覚神経伝導速度について神経線維に沿って2箇所以上で皮膚上に電極を設置し電気的刺激を行い、画面上で活動電位を確認し活動電位の波形の潜時から、それぞれの神経伝導速度を計算した。また、運動神経と感覚神経の活動電位の振幅も測定した。なお、検査時の室温・皮膚温・測定部位については一定の基準を設け、測定誤差を少なくするよう努めた。
<レーザー血流画像化装置による皮膚血流検査>
末梢循環障害の病態を把握するためにレーザー血流画像化装置(LSFG)による皮膚血流検査を実施した。末梢循環機能は検査室温の影響を受けるため、人工気象室を用いて温度・湿度を一定の環境に調整した上で行った。食事時間や飲酒・喫煙後に一定の時間を設けた。
測定回数は季節による変動を考慮して一年間に2回(夏期、冬期)測定することとした。
結果と考察
振動工具ごとに算出される周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値と使用時間の2つの要因を用いて、過去の累積ばく露量を推算することを試みた。LSFGで得られた血流値は,Mean Blur Rate (MBR)という相対値で示されるが、過去の振動曝露量とMBR相対値との間に有意差は認められず、その関係性はLSFG検査では明らかではなかった。一方で、非曝露群と日振動ばく露量の対策値を上回った高濃度取扱い群の間には冷水浸漬中MBR相対値に有意差を認め、高濃度取扱い群において末梢血流の低下を認めた。このことは指動脈血圧(FSBP%)を用いた過去の研究結果と同様の傾向となる可能性が示唆された。
神経伝導検査は、正中、尺骨神経の運動神経・感覚神経で施行し、両側正中感覚神経では、振幅・伝導速度ともに高濃度取扱い群において非取扱い群と比べて研究開始当初より有意に低下していた。さらに、利き手に対象群を絞ると低濃度被曝群においても非取扱い群に比べて、正中感覚神経の振幅が有意に低下していた。尺骨感覚神経においては右で振幅にのみ高濃度取扱い群で有意な低下がみられた。これらの障害は、3年間の経時的な解析でも障害の進行が明らかになった。正中・尺骨神経の両者で運動神経よりも感覚神経の異常が目立った。なかでも、正中感覚神経は、振動工具を取り扱う労働者の健診において最も重要なマーカーになると考えられた。
神経伝導検査は、正中、尺骨神経の運動神経・感覚神経で施行し、両側正中感覚神経では、振幅・伝導速度ともに高濃度取扱い群において非取扱い群と比べて研究開始当初より有意に低下していた。さらに、利き手に対象群を絞ると低濃度被曝群においても非取扱い群に比べて、正中感覚神経の振幅が有意に低下していた。尺骨感覚神経においては右で振幅にのみ高濃度取扱い群で有意な低下がみられた。これらの障害は、3年間の経時的な解析でも障害の進行が明らかになった。正中・尺骨神経の両者で運動神経よりも感覚神経の異常が目立った。なかでも、正中感覚神経は、振動工具を取り扱う労働者の健診において最も重要なマーカーになると考えられた。
結論
LSFGを用いた末梢血流の定量的評価は、振動工具取扱い作業者の日振動ばく露による循環障害の検出に有用であると考えられた。末梢側、かつ絞扼部位での正中あるいは尺骨感覚・運動神経の障害は、振動工具の使用によって早期から非暴露群に比べて有意に障害されることが判明した。なかでも、正中感覚神経は、振動工具を取り扱う労働者の健診において最も重要なマーカーになると考えられた。
公開日・更新日
公開日
2019-06-14
更新日
-