系統的レビューに基づく「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項」に寄与する口腔機能評価法と歯科保健指導法の検証

文献情報

文献番号
201821004A
報告書区分
総括
研究課題名
系統的レビューに基づく「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項」に寄与する口腔機能評価法と歯科保健指導法の検証
課題番号
H29-医療-一般-001
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
三浦 宏子(国立保健医療科学院 国際協力研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 安藤 雄一(国立保健医療科学院 地域医療システム研究分野 )
  • 玉置 洋(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
  • 小坂 健(東北大学大学院 歯学研究科)
  • 眞木 吉信(東京歯科大学 歯学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
1,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
すべての年代の「歯・口腔の健康」の改善を図ることを企図した「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項」の中間評価が平成30年に公表された。中間評価後の対策を円滑に進めるためには、これまでの歯科口腔保健に関する予防対策のこれまでの関連知見を把握整理し、より多くのエビデンスを有する効果的な対策を実施する必要がある。そこで、本研究では高齢期の口腔機能対策を包含した各ライフステージでの代表的な歯科疾患や機能低下に関するシステマティックレビューを行い、その知見を整理した。また、歯科保健に関連する政府統計を用いた分析を併せて行い、わが国の歯科保健の現状を把握した。
研究方法
歯科における一次予防に関する知見の集約を図るために、「口腔機能評価法・機能向上指導法」に加え、「歯間清掃と歯周病予防」と「歯科における健康格差」の3領域についてシステマティックレビューを行った。また、齲蝕については、地域で実施している歯科健診結果を二次利用し、う蝕罹患が認められなかった者におけるう蝕有病状況の推移について縦断的な分析を行った。併せて、国民健康・栄養調査等の政府統計分析を行い、咀嚼の良否に対する関連要因について分析した。
結果と考察
口腔機能に関するシステマティックレビューでは、機能向上プログラムの諸条件を明らかにするとともに、オーラルディアドコキネシスがモニタリング指標として有用性が高いことを明らかにした。また、FDIの包括的歯科保健指標の概要についても整理した。歯間清掃の歯周病予防効果に関するシステマティックレビューでは、歯間ブラシの併用は、通常のブラッシングのみの清掃と比較して、プラークスコア、出血スコアならびに歯周ポケット値の改善をもたらした。歯科における健康格差のレビューでは、その報告論文の大部分がう蝕に関するものであり、歯周病や口腔がんに関する報告はなかった。歯科健診結果を二次分析したところ、う蝕を有していない児童において、1年後に最も多くの齲蝕経験歯数が見られる「予防医学のパラドックス」が観察された。また、フッ化物洗口経験者の成人期のう蝕有病状況に関する予備調査を行った。併せて、歯科疾患実態調査と国民健康・栄養調査のリンケージ分析等を行い、調査協力状況、咀嚼の状況、歯の保有状況に関する推移や関連要因を明らかにした。
結論
システマティックレビューの結果、口腔機能低下と歯周病に対する効果的な予防法ならびに歯科における健康格差についてエビデンスを集約することができた。また、小学生のう蝕罹患状況の縦断研究の結果、カリエスフリーの児童から1年後に最もう蝕が発生していた。政府統計を用いたリンケージデータ分析では、咀嚼と歯の保有状況の動向ならびに調査協力率について詳細なデータを得ることができた。

公開日・更新日

公開日
2019-05-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2019-08-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201821004B
報告書区分
総合
研究課題名
系統的レビューに基づく「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項」に寄与する口腔機能評価法と歯科保健指導法の検証
課題番号
H29-医療-一般-001
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
三浦 宏子(国立保健医療科学院 国際協力研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 安藤 雄一(国立保健医療科学院 地域医療システム研究分野)
  • 玉置 洋(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
  • 小坂 健(東北大学大学院 歯学研究科)
  • 眞木 吉信(東京歯科大学 歯学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
歯科疾患の予防だけでなく、高齢期の口腔機能低下の防止も含め、エビデンスに基づく対応が求められるが、特に口腔機能評価法と歯科保健指導については標準化が遅れており、これまでのエビデンスの集約が必要である。そこで、本研究では高齢期の口腔機能対策を包含した各ライフステージでの代表的な歯科疾患や機能低下に関するシステマティックレビューを行い、その知見を整理した。また、歯科保健に関連する政府統計を用いた分析を併せて行い、歯科疾患実態調査の協力状況等について分析した。
研究方法
歯科における一次予防に関する知見の集約を図るために、「口腔機能評価法・機能向上指導法」に加え、「歯周病予防」、「歯科における健康格差」の諸領域についてシステマティックレビューを行った。また、地域で実施している歯科健診結果を二次利用し、う蝕罹患が認められなかった者におけるう蝕有病状況の推移について縦断的な分析を行った。併せて、歯科疾患実態調査の地区別の協力状況の分析等に加え、歯科疾患実態調査と国民健康・栄養調査のデータリンケージを行った。
結果と考察
口腔機能に関するシステマティックレビューでは、機能向上プログラムの諸条件を明らかにするとともに、オーラルディアドコキネシスがモニタリング指標として有用性が高いことを明らかにした。歯周病スクリーニングについて、Youden’s Index を用いて比較した結果、ポリクロナール抗体反応を用いた方法は、比色試験を用いた方法よりも優れていた。歯間清掃の歯周病予防効果に関するシステマティックレビューでは、歯間ブラシの併用は、通常のブラッシングのみの清掃と比較して、プラークスコア、出血スコアならびに歯周ポケット値の改善をもたらした。歯科における健康格差のレビューでは、その報告論文の大部分がう蝕に関するものであり、歯周病や口腔がんに関する報告はなかった。歯科健診結果を二次分析したところ、う蝕を有していない児童において、1年後に最も多くの齲蝕経験歯数が見られる「予防医学のパラドックス」が観察された。また、砂糖の摂取頻度や摂取量を減らすことが歯周病予防の一つの方法として有効な可能性が示唆された。平成28年の歯科疾患実態調査で導入された質問紙調査の回答状況については地域格差が顕著であり、さらなる周知が必要であることが示された。
結論
システマティックレビューの結果、口腔機能低下と歯周病に対する適切な評価法と予防法、ならびに歯科における健康格差についてエビデンスを集約することができた。また、カリエスフリーの児童から1年後に発症するう歯数が多数に達することを統計的に示した。政府統計を用いた分析では、歯科疾患実態調査の協力者の状況について明確な地域格差が認められた。

公開日・更新日

公開日
2019-05-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-08-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201821004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
口腔機能低下ならびに歯科疾患に対するスクリーニング評価法ならびにハイリスク者に対する歯科保健指導に関する知見について、システマティック・レビューの手法を用いて集約した。得られた結果を用いて、日本公衆衛生学会でのシンポジウム(平成30年度)を開催するとともに、国内外の専門誌に原著論文もしくは総説として発表した。
臨床的観点からの成果
本研究で得られた口腔機能低下ならびに歯科疾患に関するスクリーニング評価の諸知見は、臨床にも役立つものである。特にハイリスク者については、早期に歯科医療につなげる必要性があるが、本研究の結果から、その具体的な閾値を把握することができる。
ガイドライン等の開発
システマティック・レビューの結果、口腔機能低下を予防するために有効な歯科保健対策の具体的な所要条件を明らかにすることができた。また、口腔機能評価方法として有効な指標として、オーラルディアドコキネシスの有効性を示した。
その他行政的観点からの成果
本研究の必要性は、「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項」中間評価にも記載されたところであり、今後の地域歯科保健活動に活用される。また、今後、厚労省の「歯科口腔保健の推進に関する専門委員会」で検討される次期の「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項」策定の際の基礎資料となる。
その他のインパクト
平成30年度に開催された第77回日本公衆衛生学会にて高齢者の口腔機能低下予防の観点から、シンポジウム「公衆衛生活動におけるオーラルフレイル対策」を開催し、地域保健関係者200名の参加を得ることができた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
1件
高齢期の口腔機能低下に関する総説を執筆した。
その他論文(英文等)
1件
高齢者歯科保健施策に関する総説を執筆した。
学会発表(国内学会)
3件
日本公衆衛生学会にて関連演題を3題報告した。
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
審議会での議論2件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
講演2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Tada A, Miura H.
Association of mastication and factors affecting masticatory function with obesity in adults: a systematic review.
BMC Oral Health , 18 , 76-  (2018)
https://doi.org/10.1186/s12903-018-0525-3
原著論文2
Tamaki Y, Hiratsuka Y, Kumakawa T, Miura H.
Relationship Between the Necessary Support Level for Oral Hygiene and Performance of Physical, Daily Activity, and Cognitive Functions.
International Journal of Dentistry , 2018 , 1542713-  (2018)
10.1155/2018/1542713
原著論文3
Tamaki Y, Okamoto E, Hiratsuka Y, Kumakawa T
Influence of Specific Health Guidance on the Consultation Rate of Metabolic-Related Diseases.
Advances in Public Health , 2019 , 9735127-  (2019)
https://doi.org/10.1155/2019/9735127
原著論文4
Nomura Y, Okada A, Tamaki Y, Miura H
Salivary levels of hemogobin for screening periodontal disease: a systematic review
International Journal of Dentistry , 2018 , 2541204-  (2018)
https://doi.org/10.1155/2018/2541204
原著論文5
Miura H, Tano R
Recent measures in geriatric oral health care in Japan
Journal of National Institute of Public Health , 68 (1) , 8-16  (2019)

公開日・更新日

公開日
2021-05-10
更新日
2023-05-30

収支報告書

文献番号
201821004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,800,000円
(2)補助金確定額
1,800,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 368,318円
人件費・謝金 564,112円
旅費 409,269円
その他 458,433円
間接経費 0円
合計 1,800,132円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2020-03-11
更新日
-