文献情報
文献番号
201811063A
報告書区分
総括
研究課題名
特発性大腿骨頭壊死症の医療水準及び患者のQOL向上に関する大規模多施設研究
課題番号
H29-難治等(難)-一般-053
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
菅野 伸彦(大阪大学 大学院医学系研究科運動器医工学治療学)
研究分担者(所属機関)
- 久保 俊一(京都府立大学 大学院医学研究科)
- 馬渡 正明(佐賀大学 医学部)
- 山本 謙吾(東京医科大学 医学部)
- 帖佐 悦男(宮崎大学 医学部)
- 須藤 啓広(三重大学 大学院医学系研究科)
- 田中 栄(東京大学 医学部附属病院)
- 尾崎 誠(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
- 伊藤 浩(旭川医科大学 医学部)
- 高木 理彰(山形大学 医学部)
- 松田 秀一(京都大学 大学院医学研究科)
- 秋山 治彦(岐阜大学 大学院医学系研究科)
- 名越 智(札幌医科大学 医学部)
- 小林 千益(諏訪赤十字病院 整形外科)
- 福島 若葉(大阪市立大学 大学院医学研究科)
- 山本 卓明(福岡大学 医学部)
- 中島 康晴(九州大学 大学院医学研究院)
- 兼氏 歩(金沢医科大学 医学部)
- 稲葉 裕(横浜市立大学 大学院医学研究科)
- 加畑 多文(金沢大学 医学部附属病院)
- 上杉 裕子(神戸大学 大学院保健学研究科)
- 神野 哲也(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
- 山崎 琢磨(広島大学 大学院医歯薬保健学研究院)
- 三木 秀宣(国立病院機構大阪医療センター 整形外科)
- 関 泰輔(名古屋大学 医学部附属病院)
- 仲宗根 哲(琉球大学 医学部附属病院)
- 三島 初(筑波大学 医学医療系)
- 高橋 大介(北海道大学 北海道大学病院)
- 坂井 孝司(山口大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
5,430,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動
研究分担者 坂井孝司
大阪大学 医学系研究科(平成30年6月30日まで)→ 山口大学 医学系研究科(平成30年7月1日以降)
研究報告書(概要版)
研究目的
特発性大腿骨頭壊死症(ONFH)は、青・壮年期に好発し、股関節機能障害をきたし歩行困難となる重篤な疾患である。その病態は、大腿骨頭が虚血性壊死に陥り、壊死骨圧潰することで股関節が変形し、疼痛や機能障害を起こす。しかしながら、大腿骨頭が虚血にいたる詳細な病因・病態は不明である。病因・病態解明を目的とし、以下4点の重点研究課題について多施設研究を行う。
研究方法
・全国の定点モニタリングで、記述疫学特性の経年変化を把握し、分析疫学的手法を用いて喫煙を含めた最新のONFHのリスク因子を分析する。
・現行の診断基準の精度を検証し、stage 1でのMRI所見の特徴や自然経過からONFHのstage 1での診断の標準化を進める。
・定点モニタリングにおける疫学的因子とQOL評価データをもとに重症度分類の検証を行う。
・特発性大腿骨頭壊死症診療ガイドライン試案を日本整形外科学会でも議論し、パブリックコメントを収集し、最終修正の上、学会で承認を得てガイドラインを平成31年度に公表する。
・現行の診断基準の精度を検証し、stage 1でのMRI所見の特徴や自然経過からONFHのstage 1での診断の標準化を進める。
・定点モニタリングにおける疫学的因子とQOL評価データをもとに重症度分類の検証を行う。
・特発性大腿骨頭壊死症診療ガイドライン試案を日本整形外科学会でも議論し、パブリックコメントを収集し、最終修正の上、学会で承認を得てガイドラインを平成31年度に公表する。
結果と考察
定点モニタリングによる疫学調査では、男女比は1.5から1.3に推移し明らかな経年変化は認めなかった。男性の確定診断時年齢は30歳代から40歳代の頻度が高かったが、近年、40歳代への集積が顕著であった。男性で、ステロイド全身投与歴を有するものは44%から52%に推移し、投与対象疾患は皮膚疾患の割合が4%から14%に増加した。2015年から2017年にかけて、男性で習慣飲酒歴(3日/週以上、1合以上)を有する割合は35%から43%に、喫煙歴を有するものは、42%から57%に増加した。一方、女性の確定診断時年齢は2011年から2013年くらいまでは30~60歳代にかけて広く分布したが、40歳未満の割合が経年的に減少した。女性で、ステロイド全身投与歴を有するものは74%から87%に増加した。
ONFH診断基準を用いても、他の疾患が混入される問題で、画像診断項目のみでは、他疾患と鑑別不能で、骨生検による組織学的診断の必要性が再認識された。また、再生治療を成功させるにはstage 1における正確な診断が重要であり、MRI診断1項目のみでの診断がどこまで可能か検討した。Stage 1のうち、86%が診断項目1項目でONFH stage1と診断されていた。その中の両側性のONFHについて、反対側がONFHであるかどうかの有無に関わらず、約半数がONFHの確定診断に至らず、MRI診断項目1項目のみでのONFHの確定診断は信頼性が低いと考えられた。
ONFH保存的治療症例は初診時に、手術加療例は術前に股関節評価尺度である日本整形外科学会股関節疾患評価質問票(JHEQ)、Oxford Hip Score(OHS)、包括的健康QOL尺度であるSF-12(PCS: 身体的, MCS: 精神的, RCS: 役割/社会的)を用いて調査を行った。17施設の初診患者, 手術前患者 合計274名から結果が得られた。QOLは病期の進行に伴い悪化していたが、特にstage 3A、stage 3Bで大きく悪化していた。患者の年齢が若い方ほど股関節への不満が高く、また、手術後は6か月後に痛みと身体機能が改善し、術後1年でさらに身体機能が改善していた。多発性骨壊死合併や両側罹患例は、片側り患例に比較してQOLスコアがより低いという仮説は実証できなかった。
以上の疫学研究、診断基準、QOL評価の結果を踏まえ、診療ガイドラインを、、1.疫学、2.病態、3.診断、4.保存治療、5.手術治療:骨移植、細胞治療、6.手術治療:骨切り術、7.手術療法:人工股関節置換術の7つの章を決定し、そこで設定した25のclinical question (CQ)について、Pubmed及び医中誌から各CQにおいて文献を選択し、エビデンスをもとに解説を作成し、要約・推奨を提案して、ガイドライン試案を作成し、日本整形外科学会, 日本股関節学会においてパブリックコメントを収集し、ガイドラインの修正を行った。
ONFH診断基準を用いても、他の疾患が混入される問題で、画像診断項目のみでは、他疾患と鑑別不能で、骨生検による組織学的診断の必要性が再認識された。また、再生治療を成功させるにはstage 1における正確な診断が重要であり、MRI診断1項目のみでの診断がどこまで可能か検討した。Stage 1のうち、86%が診断項目1項目でONFH stage1と診断されていた。その中の両側性のONFHについて、反対側がONFHであるかどうかの有無に関わらず、約半数がONFHの確定診断に至らず、MRI診断項目1項目のみでのONFHの確定診断は信頼性が低いと考えられた。
ONFH保存的治療症例は初診時に、手術加療例は術前に股関節評価尺度である日本整形外科学会股関節疾患評価質問票(JHEQ)、Oxford Hip Score(OHS)、包括的健康QOL尺度であるSF-12(PCS: 身体的, MCS: 精神的, RCS: 役割/社会的)を用いて調査を行った。17施設の初診患者, 手術前患者 合計274名から結果が得られた。QOLは病期の進行に伴い悪化していたが、特にstage 3A、stage 3Bで大きく悪化していた。患者の年齢が若い方ほど股関節への不満が高く、また、手術後は6か月後に痛みと身体機能が改善し、術後1年でさらに身体機能が改善していた。多発性骨壊死合併や両側罹患例は、片側り患例に比較してQOLスコアがより低いという仮説は実証できなかった。
以上の疫学研究、診断基準、QOL評価の結果を踏まえ、診療ガイドラインを、、1.疫学、2.病態、3.診断、4.保存治療、5.手術治療:骨移植、細胞治療、6.手術治療:骨切り術、7.手術療法:人工股関節置換術の7つの章を決定し、そこで設定した25のclinical question (CQ)について、Pubmed及び医中誌から各CQにおいて文献を選択し、エビデンスをもとに解説を作成し、要約・推奨を提案して、ガイドライン試案を作成し、日本整形外科学会, 日本股関節学会においてパブリックコメントを収集し、ガイドラインの修正を行った。
結論
定点モニタリングによる男女での年齢分布・関連因子は異なっており、男性で喫煙歴の割合が、女性ではステロイド全身投与歴の割合が増加していた。ONFH診断について、MRI診断項目1項目のみでの病期1のONFHの確定診断は信頼性が低いと考えられた。QOLは病期の進行に伴い悪化していたが、特に3A、3Bで大きく悪化していた。患者の年齢が若い方ほど股関節への不満が高く、また、手術後は6か月後に痛みと身体機能が改善し、術後1年でさらに身体機能が改善していた。これらの結果を踏まえ、エビデンスとして文献を選択し、診療ガイドライン試案を作成した。
公開日・更新日
公開日
2019-09-02
更新日
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