ICD-11での漢方医学分類の国際展開に向けた調査研究

文献情報

文献番号
201702009A
報告書区分
総括
研究課題名
ICD-11での漢方医学分類の国際展開に向けた調査研究
課題番号
H29-統計-一般-004
研究年度
平成29(2017)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 賢治(慶應義塾大学 環境情報学部)
研究分担者(所属機関)
  • 吉野 鉄大( 慶應義塾大学 医学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
2,231,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
WHOに協力しながら日本漢方分類の特性を残した国際伝統医学分類の完成を目指すとともに、国際伝統医学分類に対するさまざまな意見を収集・分析することを目的とした。
研究方法
1.WHO主導のフィールドテストへの協力と漢方医学分類への反映(渡辺)
WHOと協力して、ICD-11ベータ版の妥当性を検討するために、フィールドテストを行った。
日中韓および英国の専門家で10例ずつ作成し、計40例について、電話会議でブラッシュアップを行い(資料1)、それを日本語訳した。それらの症例につき、WHOが管理するICD-FITというフィールドテストのシステムを用いて行った。
2.コーディング・ガイドの作成(渡辺)
国際伝統医学分類を実際にどのようにコードするのか、WHOでコーディング・ルールを作成する作業に協力した。
3.国際伝統医学分類に関する国内外の評価の収集ならびに分析(渡辺・吉野)
 ICD-11の伝統医学分類に対する国内外の評価について収集した。
4.漢方分類のエビデンスの収集(吉野)
国際伝統医学分類の漢方分類に準拠した診療情報を慶應義塾大学病院の漢方医学センターにて収集し、分析した。
5.伝統医学分類会議の日本での開催(渡辺)
国際伝統医学分類に対する第2回編集会議が、8月29日~31日の3日間、東京で開催された。
6.WHO-FIC 会議での報告ならびに情報交換(渡辺)
2017年のWHO-FIC (WHO国際分類ファミリー) 年次総会は10月16日~21日にメキシコシティーで開催された。そこに参加してICD全体の改訂の進捗ならびに伝統医学分類に対する評価について情報収集した。
結果と考察
1.WHO主導のフィールドテストへの協力と漢方医学分類への反映
ライン・コーディングは2017年9月~10月にかけて行われた。日中韓欧の専門家53名が参加し、40の症例に対して有効コード数は2081であった。
2.コーディング・ガイドの作成
コーディング・ガイドについては2017年8月に日本で開催されたICD-11伝統医学分類編集会議の席で議論され、2018年4月に上海で開催された国際伝統医学分類に対する第3回編集会議で最終版が作成された。
3.国際伝統医学分類に関する国内外の評価の収集ならびに分析
2017年5月3日~5日にベルリンで開催されたWORLD CONGRESS of INTEGRATIVE MEDICINE & HEALTH 2017に参加した。5月6日には国際日本漢方協会の第4回シンポジウムが同じくベルリンで開催されたWHOのNenad Kostanjsek氏とともICD-11における伝統医学の章についての話をした。
4.漢方分類のエビデンスの収集
2014年6月1日~2018年1月19日までに慶應義塾大学漢方医学センター外来を受診した初診患者1,156名について、伝統医学の章を用いたコーディングを行った。
5.伝統医学分類会議の日本での開催
国際伝統医学分類に対する第2回編集会議が東京で開催され、WHOからは伝統医学部門のQi Zhang氏、Sangyoung Ahn氏、Nenad Kostanjsek氏とStephane Espinosa氏の4名が参加した。
6.WHO-FIC 会議での報告ならびに情報交換
2017年のWHO-FIC (WHO国際分類ファミリー) 年次総会では、初めて伝統医学のセッションが正式なプログラムとして取り上げられた。
結論
ICD-11のリリースに向けて、漢方医学分類を含む国際伝統医学分類の準備状況は概ね整った。

公開日・更新日

公開日
2018-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
その他
その他
その他
その他

公開日・更新日

公開日
2018-09-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201702009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
WHOの国際疾病分類は1900年から始まる世界保健の統計のプラットフォームであり、世界で幅広く使われている。伝統医学の章、ならびに漢方の分類が入るのはICDの長い歴史の中で初めてであり、世界保健のプラットフォームに漢方の分類が掲載されるも初めてである。
臨床的観点からの成果
漢方診断についての標準化がなされていなかったが、本研究成果である漢方分類は診断の標準化に役立つと期待される。臨床研究の基礎や教育の基盤になることが期待される。
ガイドライン等の開発
平成30年5月20日現在、ICD-11は既にウェブ公開されている。https://icd.who.int/dev11/l-m/en#/
伝統医学の章は第26章として独立して存在し、伝統医学疾病と伝統医学の証の2つから成る。伝統医学の章のコーディングについてはICD-11全体のコーディング・ガイドの一部として存在する。
その他行政的観点からの成果
伝統医学に関しての国際的情報プラットフォームができたことで、日中韓に限らず、他のアジア地域や、アジア伝統医学が盛んである欧米、ロシア、南米などの保健統計の比較可能となる。
その他のインパクト
ICD-11の中で明確に位置づけられたことで、ICDを含むWHOが管轄するWHO国際分類ファミリー(WHO-FIC)会議の中に、伝統医学に関するレファレンス・グループが創設され、今後の普及・維持に関する土台ができた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
4件
漢方の専門誌にICD-11伝統医学の章の開発の経緯を4回にわたって掲載した。
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
2件
2017年5月にベルリンで開催されたWCIMHならびにISJKMでWHOスタッフとともに発表。
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2018-09-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201702009Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,900,000円
(2)補助金確定額
2,900,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 157,883円
人件費・謝金 265,515円
旅費 1,672,305円
その他 135,381円
間接経費 669,000円
合計 2,900,084円

備考

備考
支出が84円超過したが、預金利息が10円つき、さらに自己資金74円により、収支バランスを整えた。

公開日・更新日

公開日
2018-10-24
更新日
-