無承認無許可医薬品の調査・分析及び量的概念を含む専ら医薬品の規制に関する研究

文献情報

文献番号
201623019A
報告書区分
総括
研究課題名
無承認無許可医薬品の調査・分析及び量的概念を含む専ら医薬品の規制に関する研究
課題番号
H27-医薬-指定-010
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
袴塚 高志(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
研究分担者(所属機関)
  • 合田 幸広(国立医薬品食品衛生研究所 薬品部)
  • 丸山 卓郎(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
  • 大塚 英昭(安田女子大学 薬学部)
  • 西川 秋佳(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター)
  • 小川 久美子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 病理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
5,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
無承認無許可医薬品は,医薬品としての承認や許可がないにもかかわらず,医薬品としての目的性を持たせた製品であり,これらの流通により,適正な医療機会の喪失等,様々な健康被害が予想される為,医薬品医療機器等法により,その製造,販売,授与,広告が禁止されている.本研究は,これら製品の流通を防ぎ,国民の健康・安全を確保する目的で行われる.
研究方法
我が国の「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」に例示される成分であるかどうか,依頼のあった天然物8品目の本質について,文献調査等を行った.また、平成29年1月,医薬品の卸売販売業者及び薬局を通じてC型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」の偽造品が流通する事案が発生したことについて、これら偽造品に関するGC-MS,高分解能LC-MS及びNMRによる分析を行った。さらに、中国市場において何首烏,白首烏,異葉牛皮消として流通する生薬の基原種について,成分と遺伝子の両面から調べ実態を調査し、また、Cynanchum属およびPolygonum属植物由来と考えられた生薬の組織形態について検討した. さらに、ハネセンナ(別名:キャンドルブッシュ)について、鏡検によりハネセンナ及びセンナの各部位の特徴を検討した. また、タイ産生薬である Pueraria mirifica (PM) の含有が表示されている健康食品に対して,3次元蛍光スペクトルを用いた品質評価法について検討した。さらに、健康食品中からの単離が報告されている新規 ED 治療薬類縁体について文献調査を行い、また、ED 治療薬アナログ 2 種の標準品を購入し,各種機器分析データ及び LC-PDA-MS 分析法をまとめた.さらに、バンレイシ科植物であるトゲバンレイシ(Annona muricata)の果実について成分研究を行った。また、昨年度に引き続き,専医リスト及び非医リストについて,見直しの必要性をチェックした.さらに、ゲニポシド及びそれを含有するクチナシの毒性情報について調査研究を行い,ゲニポシドについて量的規制を設定するための科学的根拠について検討した.
結果と考察
新規に申請のあった成分本質(原材料)について、アドニス属, コイケマ, ムラサキムカシヨモギは、専ら医薬品と判断される可能性が考えられた。また、ハーボニー配合錠の偽造品に関して、国内流通のサプリメント、及び、鼻炎,感冒などに使用する漢方製剤の可能性が高いものと推定した.さらに、中国市場等に何首烏として流通するものは基原種に誤りはなく,一方で、白首烏及び異葉牛皮消として流通するものは基原種に混乱がみられることを明らかとした。また、何首烏及び同類生薬の組織形態について検討し、Cynanchum 属由来生薬の鑑別に根の横切面の観察が有用であることを示した。さらに、現時点でハネセンナとセンナを鏡検により鑑別する明確な判断基準がないことが明らかとなった. また、PM を含有する製品とそれ以外の偽品及びカッコンとを3次元蛍光スペクトルにて区別可能であることを明らかにした.さらに、強壮用健康食品中に ED 治療薬類縁体が混入されたものについて文献調査を行い、2015 年以降,計 10 化合物が報告され、その内訳は,9 化合物が tadalafil 誘導体,残り 1 化合物は,sildenafil 誘導体であることが明らかとなった.また、トゲバンレイシの果実より、新規カロラン型セスキテルペン1種を含む15種の化合物が単離同定された。さらに、専医リスト及び非医リストについて見直し、専医リストへ移行すべき品目として,コンフリーとセイヨウアカネの2品目が見出された.また、ゲニポシド自身及びゲニポシドを含むクチナシ色素について、強い毒性を示す情報は見出されなかった。
結論
新規に「専ら医薬品」であるかどうか判断が求められた品目について,医薬食品局監視指導・麻薬対策課長が招集する「医薬品の成分本質に関するワーキンググループ」のための調査を遂行した.また、ハーボニーの偽薬に関して、その正体を迅速に解明し、本結果については,平成29年2月1日付の厚生労働省報道発表資料:C型肝炎治療薬「ハーボニー®配合錠」の偽造品について(第4報)として報告された。さらに、中国で流通している白首烏と異葉牛皮消の基原植物は,韓国で定められているものと異なることが明らかとなり、同じ「白首烏」を入手したつもりでもその品質が大きく異なる危険性が示された。また、何首烏の組織形態学研究において、分子生物学的手法によって得られた同定結果と同様な種間差が認められた。さらに、ゲニポシドについて毒性情報等を調査したが,現状において、ゲニポシドに量的規制を設定するための科学的根拠は乏しいことが分かった.

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201623019Z