インターネットを通じて国際流通する医薬品の保健衛生と規制に関する調査研究

文献情報

文献番号
201623003A
報告書区分
総括
研究課題名
インターネットを通じて国際流通する医薬品の保健衛生と規制に関する調査研究
課題番号
H26-地球規模A-指定-003
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
木村 和子(金沢大学 医薬保健研究域薬学系)
研究分担者(所属機関)
  • 谷本 剛(同志社女子大学 薬学部)
  • 坪井 宏仁(金沢大学 医薬保健研究域薬学系)
  • 吉田 直子(金沢大学 医薬保健研究域薬学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
3,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
インターネット上の医薬品販売サイトには医薬品医療機器等法による許可対象外の、個人輸入代行サイトが多数存在する。これまで代行サイトで個人輸入した医薬品には模造薬、無承認薬、禁止品等が紛れ込み、処方箋未確認、不適正使用の誘発、無資格販売など重大な問題が存在する。しかし、消費者には許可を受けた販売サイトと許可を受けていないサイトとの判別は困難であり、安易に手を出す者も少なくない。そこで、 1)世界の模造薬対策の進展 2)模造薬により生じた健康影響 3)新たな個人輸入医薬品の保健衛生上の実態、並びに 4)非破壊検査法により模造医薬品の同定について検討し、もって我が国及び世界の模造薬対策の強化に資する。
研究方法
1)国際的な模造医薬品対策の進展:文献検索・情報収集 2) 模造薬による健康被害の発生: PubMedを用いて検索式「(counterfeit OR fake OR bogus OR falsified OR spurious)AND(medicine OR drug)」でヒットした2016年3月から2017年2月の英語論文を確認し、模造薬による健康被害論文を抽出 3)個人輸入メトホルミンの保健衛生上の問題に関する研究:国際的に広く使用されている500 ㎎製剤並びにアジアで品質不良品が検出されている徐放性製剤(500 mg、750 mg及び1000 mg)を個人輸入代行業者から試買し、サイトと送付状況を観察した。 4)個人輸入レビトラを用いた非破壊分析による異同識別と真贋判定に関する研究:平成27年度に個人輸入したレビトラの真正品(n=11)と模造品(n=17)を用いて、錠剤の大きさと重量の比較、分光測色計携帯型ラマン分光分析計、および携帯型近赤外(NIR)分光分析計により、正規品と模造品の非破壊的な異同識別を試みた。また、ラマン散乱分析と近赤外分光分析の結果について、主成分分析を行った。
結果と考察
1)欧米の模造医薬品規制が着々と強化 1.欧州評議会医薬製品犯罪条約の締約国は9か国となった。 2.EU偽造薬指令により導入された安全機能を導入した小包装医薬品の承認申請方法が通知された。 3.米国医薬品供給網防衛法(DSCSA)の2023年施行に向けて被疑薬同定ガイドがFDAから公表された。 4.WHOの加盟国メカニズムは5年間の成果を評価に託し、偽造薬の定義などを世界保健総会に諮る。 2)模造薬による健康被害:5件の健康被害が報告された。3件は米国のAlprazolam、Norco(アセトアミノフェンとハイドロコドンの合剤)並びに非滅菌点滴(死亡)、インドのアバスチン、コンゴのジアゼパム(死亡)であった。 3)個人輸入メトホルミンの保健衛生上の問題に関する研究:メトホルミン錠を広告する個人輸入代行サイト(24サイト)から、33サンプルの500 mg錠、5サンプルの500 mg徐放錠と1サンプルの800 mg徐放錠および1サンプルの1000 mg徐放錠の計40サンプルを入手した。いずれのサイトでも、処方箋の提示は要求されなかった。個人輸入メトホルミン500 mg錠の1錠あたりの価格は、日本の薬価に比べて、有意に高かった (Mann-Whitney’s U test, p<0.05)。 4)個人輸入レビトラによる非破壊分析の異同識別と真贋判定に関する研究:模造品の厚さは真正品に比べて有意に厚く、模造品の重量は、真正品に比べ、有意に重かった。分光測色計を用いた錠剤表面の色差測定の結果、メーカー譲渡品と分光反射率に大きな差異が認められる模造品があったが、差異が認められない模造品も存在した。ラマンスペクトルとNIRスペクトルでは模造品は、真正品とは異なるスペクトルを示した。ラマンスペクトルとNIRスペクトルの主成分分析では、大きく3つに分類され、メーカー譲渡品と真正品で1つ、10 mg OD錠で1つ、それ以外に模造品が分類された。
結論
欧米やWHOの偽造薬対策の強化にも拘わらず、偽造薬による死亡例を含む健康被害報告が続いている。生活習慣病薬の個人輸入は国内品より高価なうえ、不適正使用につながる可能性もあり避けるべきである。非破壊分析を用いたメ-カ-譲渡品との異同識別により、模造品を検出できることが示された。

公開日・更新日

公開日
2018-03-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-10-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201623003B
報告書区分
総合
研究課題名
インターネットを通じて国際流通する医薬品の保健衛生と規制に関する調査研究
課題番号
H26-地球規模A-指定-003
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
木村 和子(金沢大学 医薬保健研究域薬学系)
研究分担者(所属機関)
  • 谷本 剛(同志社女子大学 薬学部)
  • 坪井 宏仁(金沢大学 医薬保健研究域薬学系 )
  • 吉田 直子(金沢大学 医薬保健研究域薬学系 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
インターネット上の医薬品販売サイトには医薬品医療機器等法による許可対象外の、個人輸入代行サイトが多数存在する。これまで代行サイトで個人輸入した医薬品には模造薬、無承認薬、禁止品等が紛れ込み、処方箋未確認、不適正使用の誘発、無資格販売など重大な問題が存在する。しかし、消費者には許可を受けた販売サイトと許可を受けていないサイトとの判別は困難であり、安易に手を出す消費者も少なくない。そこで、 1)世界の模造薬対策の状況 2)模造薬により生じた健康影響 3)種々の個人輸入医薬品の保健衛生実態、並びに 4)日本で個人輸入される製品とアジア流通品の比較 5)医薬品の真贋判定法について研究し、もって我が国及び世界の模造薬対策の強化に資する。
研究方法
1)国際的な模造医薬品対策の進展:文献検索、情報収集、国際会議参加 2)模造薬による健康被害の発生: PubMedを用いて検索式「(counterfeit OR fake OR bogus OR falsified OR spurious)AND(medicine OR drug)」でヒットした2013年以降2017年2月までの英語論文から模造薬による健康被害論文を抽出 3)インターネット個人輸入薬の保健衛生上の問題:汎用される生活習慣病治療薬のうちアジアで不良品が出回っているオメプラゾールとメトホルミン、並びにED治療薬のシアリスとレビトラ、抗真菌薬フルコナゾールを個人輸入代行業者から試買し、サイトや製品の観察、真正性、品質を調査した。4)オメプラゾール製剤の個人輸入品とアジア流通品の比較:オメプラゾール製剤について、個人輸入品と東南アジア流通品を、赤外分光分析、ラマン散乱分析、X線CT画像分析で比較した。5)レビトラを用いた非破壊分析による異同識別と真贋判定:個人輸入したレビトラの真正品(n=11)と模造品(n=17)を用いて、錠剤の大きさと重量の比較、分光測色計、携帯型ラマン分光分析計および携帯型近赤外分光(NIR)分析計により、正規品と模造品の非破壊的な異同識別を試みた。また、近赤外分光分析とラマン散乱分析結果について、主成分分析を行った。6)不純物プロファイル(IP)によるシルデナフィルクエン酸塩製剤(SIL)の真贋判定:個人輸入代行及びカンボジアで現地購買したSIL 104検体を入手、HPLCによる定量とIP作成し、含量に関する品質評価と同一銘柄間での差異鑑別による真贋判定へのIP適用の可能性を検討した。
結果と考察
1)欧米の模造医薬品規制が着々と強化されている 1.欧州評議会医薬製品犯罪条約が発効し締約国は9か国となった。 2.EU偽造薬指令により導入された新たな規制は安全機能を含めすべて施行された。 3.米国医薬品供給網防衛法(DSCSA)の2023年施行に向けて規則の発令、ガイダンス公表、コメント要請が行われている 4.WHO加盟国メカニズムは世界保健総会に偽造薬の定義改正を諮り、国家計画策定ガイドや偽造防止技術など報告する。 2)模造薬による健康被害: 2015年以降死亡例を含む9件の健康被害事例が報告された。 3)日本語サイトはどれも国内法に抵触する恐れがあった。処方箋の提示は要求しなかった。個人輸入オメプラゾールの品質は概ね良好だったが、同じメーカー製品でも東南アジアでは品質基準を大きく外れるものが流通しており、ラマン分光分析、X線CT分析では個人輸入品と違いが見られた。オメプラゾール(後発品)もメトホルミンも個人輸入品は日本の薬価に比較し高価であった。 4)シアリス45サンプル中、32サンプル(71%)、レビトラは28サンプル中17サンプル(60%)、フルコナゾールは12サンプル中1サンプル(8.3%)が模造品だった。模造品は中国、香港または日本からの発送であり、真正品よりも安価であった。フルコナゾール及びレビトラ模造品は本来成分ではなくSILが検出された。タダラフィルが検出されたものもあった。 5)個人輸入レビトラでは、模造品の厚さは真正品に比べて有意に厚く、重量は重かった。錠剤表面の色差測定では真正品と大きな差異が認められる模造品と認められないものが存在した。NIRスペクトルとラマンスペクトルにより模造品と真正品は異同識別可能であった。 6)SILの先発品と後発品のPIを真正品と比較解析することにより主薬原料が真正品のそれと同一か識別することが可能となり、各製剤の真正性が鑑定可能となった。
結論
欧米やWHOの偽造薬対策の強化にも拘わらず、偽造薬による死亡例を含む健康被害が断続的に発生していた。生活習慣病薬の個人輸入は高価で不適正使用の恐れもあった。同一銘柄品で製剤化の異なる品質不良品がアジアで流通していた。ED治療薬では模造品が多数混入し、非破壊分析法やPIにより真正品と識別可能であった。

公開日・更新日

公開日
2018-03-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

総合研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
研究成果の刊行に関する一覧表
その他

公開日・更新日

公開日
2021-10-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201623003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
欧州評議会医療品犯罪条約発効。EU安全機能令公布。米国DSCSA施行準備。H25-28にPubMed収載文献の模造薬による健康被害報告は8編、健康被害者1320名(日本1)、うち死亡者13名。オメプラゾール、メトホルミンのネット個人輸入は処方箋要求無し、薬価より高価。模造シアリス、フルコナゾール、レビトラ(LV)は中国、香港発送。模造品は真正品より安価、異成分含有。LVのサイズ・重量、携帯NIR、携帯ラマン、主成分分析で真正品と識別可能。シルデナフィルの不純物プロファイルは真贋判定に有力である。
臨床的観点からの成果
臨床研究ではないので該当しない
ガイドライン等の開発
 ①薬機法等制度改正に関するとりまとめ 厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会H301225②医療用医薬品の偽造医薬品流通防止のための施策の在り方検討会 最終とりまとめH29 12 28③いわゆる「スマートドラッグ」への対応等 厚生科学審議会第2回医薬品医療機器制度部会H29 6 22④第193回国会厚生労働委員会第20号H29 5 30薬師寺みちよ議員への政府参考人説明
その他行政的観点からの成果
①薬機法等の一部改正法律案(H31 3 19提出)②意見募集の結果H3012 7③脳機能の向上等を標榜する医薬品等個人輸入の取扱い薬生監麻1126第3号H30 11 26④偽造医薬品流通防止省令改正Q&A事務連絡H30 1 10⑤個人輸入で処方せん医薬品等を、医師等関与せず使用し健康被害や乱用の恐れが高い医薬品等指定の意見募集H29 1227⑥厚生労働省令第106号 医薬品医療機器等法施行規則の一部改正H29 10 5&#10118;偽造医薬品・指定薬物対策推進会議H26 4⑧~⑩偽造品・国内発送品通報H26 9,H27 6,H31 6 ⑪⑫担当講演H26 4、H28 7⑬~⑮厚労省HP掲載,Xenical、Zenigal,サプリ⑯政府ネットTV
その他のインパクト
①German Japan SF medicines symposiumH31328②日本薬学会シンポジストH313 23 木村&H31 3 21吉田③医薬品セキュリティ研究会フォーラム計6回 ②取材:泉ケ丘高校放送部H314 26 NHKTV9’17等TV&ラジオ6件;共同通信H30 9 10等 新聞雑誌23件③国内講演:医療センター国際協力局セミナー等45件 ④学術論文: Rahman等, TMIH, doi:10.1111/tmi.13028; Yoshida等,BMC Compl. Alt. Med., 15:430, ‘15 ⑤総説その他:厚労科研報告書5 共同研究報告書3、日本薬学会ウェブ‘18 ⑥学会:FIP’17ソウル2、JAIH1、日本医療薬学会2、日本薬学会4

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
3件
doi:10.1111/tmi.13161,doi:10.1111/tmi.13028,doi:10.1186/s12906-015-0955-2
その他論文(和文)
13件
JO他,JIH34,35'19、KK,JJSSE 11 23'18、NY日病薬誌54,145'18、厚労科研報告書6 共同研究報告書3、日本薬学会ウェブコラム‘18
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
10件
日本国際保健医療学会1、日本医療薬学会3、日本薬学会6
学会発表(国際学会等)
11件
German Japan Sympo.'19金沢x4、MQPH'18 Oxfordx4,APEC HC '18ソウル、 FIP '17ソウルx2
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
18件
改正法提案1、省令改正3、通知2、事務連絡2、意見募集と報告各1、厚生科学審議会2、国会対応1、偽造薬検討会1、対策推進会議1、被疑品通報3回
その他成果(普及・啓発活動)
82件
厚労省HP4 シンポジウム4 取材29 講演45

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
N.Yoshida,T.Tanimoto,K.Kimura,et al
Study on health hazards through medicines purchased on the Internet: a cross-sectional investigation of the quality of anti-obesity medicines containing crude drugs as active ingredients
BMC Complementary and Alternative Medicine , 15 (1) , 430-440  (2015)
10.1186/s12906-015-0955-2
原著論文2
N.Takahashi,H.Tsuboi,K.Kimura,et al
Investigation into the Antinfluenza Agent Oseltamivir Distributed via the Internet in Japan
Therapeutic Innovation & Regulatory Science , 47 (6) , 699-705  (2013)
10.1177/2168479013500966
原著論文3
木村和子
偽造医薬品の蔓延と対策
薬剤学 , 72 (3) , 165-171  (2012)
原著論文4
戸水尚希,坪井宏仁,木村和子,他
医薬品個人輸入経験者の意識調査にみる不適切な個人輸入の抑止策
社会薬学 , 30 (2) , 53-54  (2012)
原著論文5
木村和子,谷本剛,高尾知里,他
インターネットで個人輸入した医薬品の保健衛生(2)-抗肥満薬による追跡-
医遼と社会 , 21 (1) , 55-67  (2011)
原著論文6
木村和子
個人輸入されるHIV自己検査キットの保健衛生の実態
日本エイズ学会誌 , 12 (3) , 162-169  (2010)
原著論文7
荒木理沙,奥村順子,木村和子,他
医薬品個人輸入に関する消費者の意識調査
社会薬学 , 128 (3) , 134-135  (2010)
原著論文8
高尾知里,谷本剛,木村和子,他
インターネットを介した個人輸入による“ダイエット用薬”試買調査
社会薬学 , 128 (3) , 144-145  (2010)
原著論文9
木村和子,奥村順子,谷本剛,他
インターネット輸入代行で個人輸入した医薬品の保健衛生上のインパクト
医療と社会 , 18 (4) , 459-472  (2009)
原著論文10
杉本和隆,今井光信,木村和子,他
海外における献血血液へのHIV混入の防止対策:教育・面接等を中心としたスクリーニング方法
日本エイズ学会誌 , 7 (1) , 23-30  (2005)
原著論文11
M.S.Rahman, N.Yoshida, S.Sugiura et al
Quality of omeprazole purchased via the Internet and personally imported into Japan: comparison with products sampled in other Asian countries,
Tropical Medicines & International Health , 23 (3) , 263-269  (2018)
10.1111/tmi.13028
原著論文12
M.S.Rahman, N.Yoshida,H.Tsuboi et al
The health consequences of falsified medicines
Tropical Medicines & International Health , 23 (12) , 1294-1303  (2018)
10.1111/tmi.13161
原著論文13
M. H. Khan, T.Tanimoto, Y.Nakanishi, et al
Public health concerns for anti-obesity medicines imported for personal use through the Internet
BMJ-open , 2 (3) , 1-8  (2012)
10.1136/bmjopen-2012-00854

公開日・更新日

公開日
2018-06-11
更新日
2019-06-27

収支報告書

文献番号
201623003Z