文献情報
文献番号
201622005A
報告書区分
総括
研究課題名
広域・複雑化する食中毒に対応する調査手法の開発に関する研究
課題番号
H26-食品-一般-005
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
砂川 富正(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
研究分担者(所属機関)
- 八幡 裕一郎(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
- 齊藤 剛仁(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
- 高橋 琢理(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
- 窪田 邦宏(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部)
- 野田 衛(国立医薬品食品衛生研究所 衛生管理部)
- 大西 貴弘(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
- 杉山 広(国立感染症研究所 寄生動物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究班全体の目的は、広域および原因不明食中毒事例に対する科学的根拠に基づく疫学的・微生物学的調査手法の精度向上を図り、実践する過程で広域食中毒疫学調査ガイドラインについて改善点を示し、より実用的なものへ深化させることである。具体的には、我が国における食中毒や合併症に関する疫学の一端を調査し下痢症患者の被害実態解明や国内の食品への異物混入事例の概要把握、魚生食に関連する有症苦情事例の原因究明や流通品を検体としたアニサキスの汚染実態等の調査を実施する。
研究方法
広域食中毒の可能性のある腸管出血性大腸菌(EHEC)事例を中心に、国内腸チフス例等に対して、感染症発生動向調査に報告した自治体に対して情報提供依頼を行い、疫学情報とMLVA(Multiple Locus Variable-number Tandem Repeat Analysis) の結果を利用し、解析疫学を実施した。
食中毒事件詳報(詳報)において自治体より報告された食中毒発生時の課題を抽出した。ノロウイルス食中毒において調理従事者等に関する調査を実施した。
溶血性尿毒症症候群(HUS)の予後に関する追跡調査として、HUSを報告した医師の所属する医療施設を対象として調査票への記入を依頼した。
広域食中毒疫学調査ガイドラインの改訂については、指摘された点に基づき、内容の充実を図った。
食品由来感染症患者数の推定については、宮城県および全国における積極的食品由来感染症病原体サーベイランスならびに下痢症疾患の実態把握、電話住民調査を実施した。厚生労働省院内感染対策サーベイランス(JANIS)等の異なるデータソースを用いての検討を併せて行った。また、全国の食品への異物混入被害実態の把握については、全142自治体を対象に依頼を行った。
群馬県では流通食材における食中毒原因菌の汚染状況及び感染症・食中毒業務担当者を対象とした疫学研修とその効果を検証した。
クドアのヒト腸管内における生存性を検討し、遺伝子型別の実施、凍結保存法の開発、カンパチ有症事例からユニカプスラの計数法およびリアルタイムPCR法を確立、シイラに関連する調査、タイにおける粘液胞子虫の汚染実態調査を行った。
アニサキス食中毒の原因物質の同定については、市場に流通するシメサバ製品および回転寿司店のシメサバ寿司を対象に、アニサキスの寄生状況調査を実施した。
食中毒事件詳報(詳報)において自治体より報告された食中毒発生時の課題を抽出した。ノロウイルス食中毒において調理従事者等に関する調査を実施した。
溶血性尿毒症症候群(HUS)の予後に関する追跡調査として、HUSを報告した医師の所属する医療施設を対象として調査票への記入を依頼した。
広域食中毒疫学調査ガイドラインの改訂については、指摘された点に基づき、内容の充実を図った。
食品由来感染症患者数の推定については、宮城県および全国における積極的食品由来感染症病原体サーベイランスならびに下痢症疾患の実態把握、電話住民調査を実施した。厚生労働省院内感染対策サーベイランス(JANIS)等の異なるデータソースを用いての検討を併せて行った。また、全国の食品への異物混入被害実態の把握については、全142自治体を対象に依頼を行った。
群馬県では流通食材における食中毒原因菌の汚染状況及び感染症・食中毒業務担当者を対象とした疫学研修とその効果を検証した。
クドアのヒト腸管内における生存性を検討し、遺伝子型別の実施、凍結保存法の開発、カンパチ有症事例からユニカプスラの計数法およびリアルタイムPCR法を確立、シイラに関連する調査、タイにおける粘液胞子虫の汚染実態調査を行った。
アニサキス食中毒の原因物質の同定については、市場に流通するシメサバ製品および回転寿司店のシメサバ寿司を対象に、アニサキスの寄生状況調査を実施した。
結果と考察
感染症発生動向調査の情報とMLVAの結果を利用することで、広域散発的に発生するアウトブレイクを探知することは可能であると考えられた。症例対照研究は有効であるとが考えられたが情報収集の適時性が課題であった。詳報は調査報告書として必要な事項が不足している事例が散見されたことから報告様式を改訂する必要性があると考えられた。
HUS発症後1年以上の経過観察がされている症例のうち、11.8%に腎臓または神経系の後遺症が認められた。しかし、対象者の過半数(51%)は届出医療機関における経過観察は1年に満たなかった。
ガイドライン利用に関する今後の課題として、自治体における研修強化が挙げられる。自治体における研修の振り返りからは、今後、担当者のニーズをより反映した研修を継続的に実施していくことが、疫学調査の向上に寄与するものと指摘された。
食品由来下痢症の実患者数を正確に把握し、経年変動等を評価することは現行では困難であり、アクティブサーベイランスの構築およびその継続が補完システムとして重要であると考えられた。事業所での混入により健康被害が発生した事例の9割が硬質異物の混入によるものであった。起きやすい異物混入の概要が得られた。これらの情報は事業所へのHACCP指導時に参照可能な異物混入実態データとして活用することが可能と考えられる。
ウイルスを主とした広域事例調査手法の検討については、患者,食品あるいは調理従事者から検出されたウイルスの遺伝子型や検出株間の相同性を調べることが重要であることから、開発したプログラムについて改良した。
クドアのヒト腸管内における生存性を検討し、韓国型ST3株によって食中毒が引き起こされていることの確認、凍結保存法の開発、カンパチ有症事例からユニカプスラの計数法およびリアルタイムPCR法を確立、シイラに関連する調査、タイにおける粘液胞子虫の汚染実態調査を行った。
自家製のシメサバを使用して製造されたシメサバ寿司は、40検体の内、7検体が陽性で、合計14隻のアニサキス幼虫が検出された(3隻は生存)。魚の冷凍や養殖魚の利用に加え、販売者による消費者への啓発が、感染予防の鍵を握る実効的な方法と考えられた。
HUS発症後1年以上の経過観察がされている症例のうち、11.8%に腎臓または神経系の後遺症が認められた。しかし、対象者の過半数(51%)は届出医療機関における経過観察は1年に満たなかった。
ガイドライン利用に関する今後の課題として、自治体における研修強化が挙げられる。自治体における研修の振り返りからは、今後、担当者のニーズをより反映した研修を継続的に実施していくことが、疫学調査の向上に寄与するものと指摘された。
食品由来下痢症の実患者数を正確に把握し、経年変動等を評価することは現行では困難であり、アクティブサーベイランスの構築およびその継続が補完システムとして重要であると考えられた。事業所での混入により健康被害が発生した事例の9割が硬質異物の混入によるものであった。起きやすい異物混入の概要が得られた。これらの情報は事業所へのHACCP指導時に参照可能な異物混入実態データとして活用することが可能と考えられる。
ウイルスを主とした広域事例調査手法の検討については、患者,食品あるいは調理従事者から検出されたウイルスの遺伝子型や検出株間の相同性を調べることが重要であることから、開発したプログラムについて改良した。
クドアのヒト腸管内における生存性を検討し、韓国型ST3株によって食中毒が引き起こされていることの確認、凍結保存法の開発、カンパチ有症事例からユニカプスラの計数法およびリアルタイムPCR法を確立、シイラに関連する調査、タイにおける粘液胞子虫の汚染実態調査を行った。
自家製のシメサバを使用して製造されたシメサバ寿司は、40検体の内、7検体が陽性で、合計14隻のアニサキス幼虫が検出された(3隻は生存)。魚の冷凍や養殖魚の利用に加え、販売者による消費者への啓発が、感染予防の鍵を握る実効的な方法と考えられた。
結論
本研究班はウイルスからアニサキスまで実に多様な食中毒研究のプラットフォームとして最終年度も機能したことが考えられた。
公開日・更新日
公開日
2017-07-04
更新日
-