文献情報
文献番号
201617015A
報告書区分
総括
研究課題名
バイオテロに使用される可能性のある病原体等の新規検出法の確立、及び細胞培養痘そうワクチンの有効性、安全性に関する研究
課題番号
H26-新興行政-指定-002
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
西條 政幸(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
研究分担者(所属機関)
- 田島 茂(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
- 下島 昌幸(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
- 吉河 智城(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
- 森川 茂(国立感染症研究所 獣医科学部)
- 梅山 隆(国立感染症研究所 真菌部)
- 黒田 誠(国立感染症研究所 病原体ゲノム解析研究センター)
- 中島 典子(国立感染症研究所 感染病理部)
- 永田 典代(国立感染症研究所 感染病理部)
- 小林 和夫(堺市衛生研究所)
- 倉園 久生(帯広畜産大学 畜産衛生学研究部門 食品衛生学分野)
- 鯉渕 智彦(東京大学医科学研究所 附属病院感染免疫内科)
- 松本 哲哉(東京医科大学 微生物学講座)
- 金谷 泰宏(国立保健医療科学院 健康危機管理研究部)
- 横手 公幸(一般財団法人化学及血清療法研究所 国際戦略室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
34,056,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究班の目的は,バイオテロ事象に備えることである.その目的を達成するための,以下の研究が実施された.
研究方法
1. 細胞培養痘そうワクチンの有効性,安全性に関する研究
1) LC16m8ワクチン中の,皮膚病原性が高まっていると考えられるMiddle Size Plaque(MSP)形成ウイルス測定法の開発と備蓄されているLC16m8ワクチン中のMSP含有率を測定した.
2)LC16m8ワクチンの痘瘡ウイルス曝露後接種効果を,マウスモデルを用いて評価した.
3)次世代シークエンス(NGS)法を導入することでLC16m8ワクチン中に含まれるMSPウイルスの定量的検出に応用できるかを解析した.
4)サル痘ウイルス感染マウスモデルを開発した.
5)ヒトにおける長期免疫, マウスにおける強毒株接種時の防御,第1世代ワクチンとの比較,繰り返し接種の効果,長期の効果等の解析を行った.
6) LC16m8ワクチンを1回接種された成人被接種者が獲得したサル痘ウイルスに対する中和抗体誘導を再調査した.
2. 脳炎を引き起こすアルファウイルス遺伝子増幅法の開発,エボラウイルス等検出法の外部評価への参加,コクシジオイデス属などの高病原性真菌DNAの検出法の開発,環境中のメタゲノム解析,病理学的に病原体を検出するための研究(DNAウイルス核酸の検出が可能なISH-AT法の確立,病原体の電子顕微鏡学的迅速検出法の確立,バイオテロに関連する可能性のある細菌性毒素検出法の開発)が実施された.
3. バイオテロ遭遇現場(医療機関)で医療従事者が簡便に参照できる資料の必要性を考慮し,「バイオテロを疑う時シート」を作成した.
4. 地方衛生研究所(地衛研)におけるバイオテロ対応の現状と課題を抽出し,課題の改善などを検討した.
1) LC16m8ワクチン中の,皮膚病原性が高まっていると考えられるMiddle Size Plaque(MSP)形成ウイルス測定法の開発と備蓄されているLC16m8ワクチン中のMSP含有率を測定した.
2)LC16m8ワクチンの痘瘡ウイルス曝露後接種効果を,マウスモデルを用いて評価した.
3)次世代シークエンス(NGS)法を導入することでLC16m8ワクチン中に含まれるMSPウイルスの定量的検出に応用できるかを解析した.
4)サル痘ウイルス感染マウスモデルを開発した.
5)ヒトにおける長期免疫, マウスにおける強毒株接種時の防御,第1世代ワクチンとの比較,繰り返し接種の効果,長期の効果等の解析を行った.
6) LC16m8ワクチンを1回接種された成人被接種者が獲得したサル痘ウイルスに対する中和抗体誘導を再調査した.
2. 脳炎を引き起こすアルファウイルス遺伝子増幅法の開発,エボラウイルス等検出法の外部評価への参加,コクシジオイデス属などの高病原性真菌DNAの検出法の開発,環境中のメタゲノム解析,病理学的に病原体を検出するための研究(DNAウイルス核酸の検出が可能なISH-AT法の確立,病原体の電子顕微鏡学的迅速検出法の確立,バイオテロに関連する可能性のある細菌性毒素検出法の開発)が実施された.
3. バイオテロ遭遇現場(医療機関)で医療従事者が簡便に参照できる資料の必要性を考慮し,「バイオテロを疑う時シート」を作成した.
4. 地方衛生研究所(地衛研)におけるバイオテロ対応の現状と課題を抽出し,課題の改善などを検討した.
結果と考察
1. 細胞培養痘そうワクチンの有効性,安全性に関する研究
NGS法を導入することで,より簡便にMSP含有率の算出が可能となった.一部のロットには比較的高い割合でMSP形成ウイルスが含まれていた.
エクトロメリアウイルス曝露直後にLC16m8ワクチンを接種すれば死亡率が低下した.曝露後接種効果が期待できる.
抗Ly6G抗体をマウスに投与することにより好中球枯渇させると,サル痘ウイルス感染モデルとすることが可能と考えられた.
LC16m8ワクチン接種は,既知の中和抗体を含む多様な抗原に対する抗体を誘導した.LC16m8ワクチン接種によりサル痘ウイルスに対する中和抗体免疫誘導能が確認され,ヒトサル痘に有効であることを示唆した.
2. バイオテロに使用される可能性のある病原体等の新規検出法の確立に関する研究
ベネズエラ馬脳炎ウイルス等の遺伝子増幅法を開発した.感染研で準備されているエボラウイルス検出法が高い感度と特異度を有していることが確認された.コクシジオイデス属のP. brasiliensisおよびP. marneffeiなどの高病原性真菌DNAの検出法が開発された.
環境中(調査対象はある地下鉄路線)のメタゲノム解析研究が実施された.ヒト配列が有意な採取箇所やレンサ球菌属配列の多い駅等へ大まかに分類された.
病理検体からアデノウイルス及びB型肝炎ウイルスをISH-AT法により検出できるようになった.バイオテロ関連細菌性毒素検出のためのシステム開発に必要な抗体を作製した.
3. 各医療機関のバイオテロ対策を支援するための方策に関する研究
『バイオテロ対応ホームページ』を公開した.臨床現場で医療従事者が簡便に参照できる資料「バイオテロを疑う時シート」を作成し,全国の多くの病院に配布した.
4. 地衛研におけるバイオテロ対応の現状と課題に関する研究
主要課題として,1)特定病原体等を原因とする1類感染症(クリミア・コンゴ出血熱,等),2類感染症(結核,中東呼吸器症候群,等)や4類感染症に関する病原体検出マニュアルの整備,2)米国CDCがバイオテロの候補物質(Category B)に指定されている毒素(細菌毒素:黄色ブドウ球菌やウエルシュ菌エンテロトキシンやリシン)に関し,所管の明確化や検出マニュアルの整備,3)緊急連絡・対応体制の構築やNBCテロを含む健康危機の発生を想定した対応模擬訓練の実施が挙げられた.
NGS法を導入することで,より簡便にMSP含有率の算出が可能となった.一部のロットには比較的高い割合でMSP形成ウイルスが含まれていた.
エクトロメリアウイルス曝露直後にLC16m8ワクチンを接種すれば死亡率が低下した.曝露後接種効果が期待できる.
抗Ly6G抗体をマウスに投与することにより好中球枯渇させると,サル痘ウイルス感染モデルとすることが可能と考えられた.
LC16m8ワクチン接種は,既知の中和抗体を含む多様な抗原に対する抗体を誘導した.LC16m8ワクチン接種によりサル痘ウイルスに対する中和抗体免疫誘導能が確認され,ヒトサル痘に有効であることを示唆した.
2. バイオテロに使用される可能性のある病原体等の新規検出法の確立に関する研究
ベネズエラ馬脳炎ウイルス等の遺伝子増幅法を開発した.感染研で準備されているエボラウイルス検出法が高い感度と特異度を有していることが確認された.コクシジオイデス属のP. brasiliensisおよびP. marneffeiなどの高病原性真菌DNAの検出法が開発された.
環境中(調査対象はある地下鉄路線)のメタゲノム解析研究が実施された.ヒト配列が有意な採取箇所やレンサ球菌属配列の多い駅等へ大まかに分類された.
病理検体からアデノウイルス及びB型肝炎ウイルスをISH-AT法により検出できるようになった.バイオテロ関連細菌性毒素検出のためのシステム開発に必要な抗体を作製した.
3. 各医療機関のバイオテロ対策を支援するための方策に関する研究
『バイオテロ対応ホームページ』を公開した.臨床現場で医療従事者が簡便に参照できる資料「バイオテロを疑う時シート」を作成し,全国の多くの病院に配布した.
4. 地衛研におけるバイオテロ対応の現状と課題に関する研究
主要課題として,1)特定病原体等を原因とする1類感染症(クリミア・コンゴ出血熱,等),2類感染症(結核,中東呼吸器症候群,等)や4類感染症に関する病原体検出マニュアルの整備,2)米国CDCがバイオテロの候補物質(Category B)に指定されている毒素(細菌毒素:黄色ブドウ球菌やウエルシュ菌エンテロトキシンやリシン)に関し,所管の明確化や検出マニュアルの整備,3)緊急連絡・対応体制の構築やNBCテロを含む健康危機の発生を想定した対応模擬訓練の実施が挙げられた.
結論
バイオテロに用いられる可能性のある病原体・毒素の迅速診断システム開発(検出法の開発を含む)を継続して行った.また,細胞培養高度弱毒痘瘡ワクチンLC16m8の有効性,安全性,品質管理検査法,等に関する研究を推進した.バイオテロ事象が発生した場合の,医療機関,地方衛生研究所との連携のあり方を明らかにするとともに,一部実践した.
公開日・更新日
公開日
2017-05-25
更新日
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