文献情報
文献番号
201608003A
報告書区分
総括
研究課題名
小中学生の食行動の社会格差是正に向けた政策提案型研究
課題番号
H27-循環器等-一般-002
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 英樹(東京大学大学院 医学系研究科 公共健康医学専攻保健社会行動学分理)
研究分担者(所属機関)
- 藤原 武男(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 国際保健増進分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
11,539,000円
研究者交替、所属機関変更
藤原武男
国立成育医療センターから国立大学法人東京医科歯科大学へ転出
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究事業は、先行研究において2011年から確立された首都圏4市区における子どもパネル調査のフレームと、新たに2015年から足立区が実施する区立教育機関の学童・学生を対象とした世帯調査の2つを利用し、世帯の社会経済的状態(親の収入・学歴・教育歴・食生活行動・世帯の文化的環境・相対的貧困や社会的排除)による、子どもの食生活行動への影響と格差解消の方向性につき、社会疫学的視点から実証的な検討を行う。調査協力自治体で実施される子育て支援・子どもの貧困対策・学校保健施策にフィードバックし政策立案・実施を支援するとともに、その影響評価を行う。以て、子どもの食習慣の社会格差縮
小に向けた科学的モニタリングと、根拠に基づく政策実施のサイクルモデルを構築することを目的とした。初年度に引き続き下記調査を実施した。
小に向けた科学的モニタリングと、根拠に基づく政策実施のサイクルモデルを構築することを目的とした。初年度に引き続き下記調査を実施した。
研究方法
先行研究で立ち上げた子どもパネル調査で小中学生1500人に対して2013年に詳細な栄養調査を実施し、親の教育歴による子どもの野菜・果物摂取量の格差を把握している。参加自治体の一部(足立区)で2014年から始まった「野菜摂取」を促進する取組(あだちベジタベライフ)を自然実験とし、パネル調査をフォローすることで、世帯・地域の社会経済的環境の影響を考慮しつつ、学校・地域における取組が子どもの食行動に与える影響を明らかにした。
また昨年度事業として、足立区全小学校における小1において悉皆調査を実施したが、今年度はその追
跡調査を実施するとともに、他の学年として4年生、6年生、中学2年生の一部にサンプリングによる調査を同様に実施し、問題の規模の把握を行った。
また昨年度事業として、足立区全小学校における小1において悉皆調査を実施したが、今年度はその追
跡調査を実施するとともに、他の学年として4年生、6年生、中学2年生の一部にサンプリングによる調査を同様に実施し、問題の規模の把握を行った。
結果と考察
パネル追跡調査対象者のうち85%程度から回答を得た。初年度先行実施した2市区のデータと統合しパネルデータ回帰分析を実施したところ、。調査Waveと市区ダミーの交互作用項で、足立区(city2=4)のwave3で20.5グラムの増加がみられ、p値としては0.02と有意な変化がみられた。すなわち他の市区ではこの間に一貫して野菜摂取が減少していたのに対し、足立区では増加しており、有意な違いが検出された。
足立区公立小学校・中学校での調査では昨年度研究と同様の定義(300万未満世帯年収、滞納経験、もしくは生活必需品欠如の経験有無)で生活困難世帯を見たところ、いずれの学年でも約25~30%が該当し、学年による違いは顕著ではなかった。困難世帯では虫歯・朝食欠食などが有意に多く見られた。
足立区公立小学校・中学校での調査では昨年度研究と同様の定義(300万未満世帯年収、滞納経験、もしくは生活必需品欠如の経験有無)で生活困難世帯を見たところ、いずれの学年でも約25~30%が該当し、学年による違いは顕著ではなかった。困難世帯では虫歯・朝食欠食などが有意に多く見られた。
結論
初年次研究に引き続き、子どもを取り囲む世帯の社会経済的状況と生活習慣の関係や課題規模を明らかにする政策資料となるエビデンスを実証し、当該協力自治体における地域健康づくりの施策が子どもの食習慣行動に与えたポジティブな効果を立証することができた。これらのエビデンスをもとに子供の貧困対策など施策の実施計画を精緻化し、その評価を進めるとともに、他の市区とも上方共有し、次年度研究では社会経済的要因などによる子どもの健康格差・生活習慣格差を縮小する効果的な政策介入の在り方を広く議論する知見を整備することとしたい。
公開日・更新日
公開日
2018-06-29
更新日
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