インターネットを通じて国際流通する医薬品の保健衛生と規制に関する調査研究

文献情報

文献番号
201523024A
報告書区分
総括
研究課題名
インターネットを通じて国際流通する医薬品の保健衛生と規制に関する調査研究
課題番号
H26-地球規模A-指定-003
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
木村 和子(金沢大学 医薬保健研究域薬学系)
研究分担者(所属機関)
  • 谷本 剛(同志社女子大学 薬学部)
  • 坪井 宏仁(金沢大学 医薬保健研究域薬学系 )
  • 吉田 直子(金沢大学 医薬保健研究域薬学系 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
3,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
インターネット上の医薬品販売サイトには薬機法による許可対象外の、個人輸入代行サイトが多数存在する。代行サイトで個人輸入した医薬品には模造薬、無承認薬等が紛れ込み、処方箋未確認、不適正使用の誘発、無資格販売など重大な問題が存在するが、消費者には許可を受けた販売サイトと許可を受けていないサイトとの判別は困難である。そこで、直近の世界の模造薬対策強化を紹介するとともに、模造薬により生じた健康影響を報告し、実際に個人輸入医薬品によってもたらされる保健衛生上の問題を追跡し、我が国及び世界の模造薬対策の強化に資する。
研究方法
1)欧米の模造医薬品規制の強化 ①文献検索・情報収集②国際会議参加 2) 模造薬による健康被害の発生: PubMedを用いて検索式「(counterfeit OR fake OR bogus OR falsified OR spurious)AND(medicine OR drug)」でヒットした2015年2月から2016年2月の英語論文の内容を確認し、模造薬による健康被害論文を抽出 3) 個人輸入レビトラの真正性と品質に関する研究:国内承認と同じ20㎎製剤と国内未承認の10mgOD錠及び100㎎錠を個人輸入代行業者から試買し、サイトと送付製品の観察、真正性調査、HPLCによる定性と定量、近赤外分光分析(NIR)による正規品と偽造品の非破壊的な異同識別を試みた。4)  インターネット上の個人輸入代行サイトを介して購入したオメプラゾール製剤について、サイトおよび製品の観察試験、真正性調査、局方に準じた品質試験を行った。東南アジア流通品との比較を目的として、赤外分光分析、ラマン散乱分析、X線CT画像分析を行った。
結果と考察
1) 欧米の模造医薬品規制の強化 ①欧州評議会医薬品犯罪条約が2016年初頭に発効した、②EU偽造薬指令による処方せん薬個包装安全機能施行令が公布 ③米国では流通各段階で電子的に記録し蓄積し検索可能な追跡システムが2023年導入に向け進行している 2) 模造薬による健康被害: 1篇は2013年にギニアビサウで並びに2014年にナイジェリアで無有効成分の模造抗てんかん薬により、2名の死亡を含む計179名のてんかんの憎悪が報告された。もう1篇ではシルデナフィル含有の漢方薬「Tiger King」 による急性肝障害で1名が搬送された。3) 個人輸入レビトラの真正性と品質に関する調査: 日本語個人輸入代行15サイトからレビトラ20㎎製剤22サンプル、10mgOD錠2サンプル及び100㎎錠4サンプル計28サンプルを入手した。購入時に処方箋を要求したサイトは無かった。どのサイトも薬事法または特商法を遵守していない可能性が疑われた。製造業者による真正性調査で11サンプル(40%)が真正品、17サンプル(60%)が模造品と判定された。真正品はシンガポールまたは米国から、模造品は中国または香港から発送された。HPLC分析の結果、試験した27サンプル中、適切な成分含有が確認された10製品はすべて真正品であり、シルデナフィルまたはタダラフィルが検出された17(63%)製品はすべて模造品であった。NIRによる異同識別の結果、正規品と真正品に差異は認められなかったが、模造品は正規品とは異なるスペクトルを示した。真正品が模造品より高価だった。4) 日本語個人輸入代行13サイトおよび一般用医薬品として販売していた英語個人輸入代行2サイトからオメプラゾール製剤を計28サンプル、処方せんを要求されることなく入手した。品質試験の含量、ばらつきが不適合または保留となるサンプルがあったが、極端に含量不足のものや、ばらつきのあるものはなく、溶出性に問題あるサンプルもなかった。一方、東南アジアでは品質基準を大きく外れるものが流通しており、これらは赤外分光分析では、個人輸入品と違いはあまり見られなかったが、ラマン散乱分析、X線CT分析では違いが見られた。
結論
欧米の模造薬規制が施行段階に入り、その影響を日本は世界とともに注視する必要がある。学術誌で新たに明らかにされただけでも模造薬による健康影響は死亡も含め180名に上り健康への脅威であることが改めて認識された。インターネットで個人輸入したレビトラの過半は模造薬であった。これらは本来の有効成分ではなく異なる有効成分を作用量含有し、健康影響も懸念された。オメプラゾールは発展途上国できわめて品質の悪い製品が流通しているが、インターネットで個人輸入すると東南アジアで品質不良品を供給している海外メーカの製品が送付され、日本でも品質不良品を入手する可能性があった。 医薬品をインターネットで個人輸入することは模造薬や品質不良薬を入手する可能性があり、保健衛生上きわめて問題であった。

公開日・更新日

公開日
2016-06-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
研究成果の刊行に関する一覧表
その他

公開日・更新日

公開日
2021-12-23
更新日
-

収支報告書

文献番号
201523024Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,000,000円
(2)補助金確定額
5,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,451,814円
人件費・謝金 668,228円
旅費 171,960円
その他 554,998円
間接経費 1,153,000円
合計 5,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2016-06-09
更新日
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