ホルモン受容機構異常に関する調査研究

文献情報

文献番号
201510098A
報告書区分
総括
研究課題名
ホルモン受容機構異常に関する調査研究
課題番号
H27-難治等(難)-一般-031
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
赤水 尚史(和歌山県立医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 正信(群馬大学大学院 医学系研究科)
  • 廣松 雄治(久留米大学 医療センター)
  • 大薗 惠一(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 杉本 利嗣(島根大学 医学部)
  • 岡崎 亮(帝京大学 ちば総合医療センター)
  • 片桐 秀樹(東北大学大学院 医学系研究科)
  • 小川 渉(神戸大学大学院 医学研究科)
  • 福本 誠二(徳島大学 藤井節郎記念医科学センター)
  • 橋本 貢士(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
5,247,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、ホルモン受容機構異常に起因する疾患の病態を解明し、それらの疾患の診断基準や治療指針を策定することである。研究班は、甲状腺部会、副甲状腺部会、糖尿病部会からなり、これらの領域には、発症頻度が稀で患者実態や診療指針に関して不明や未確立な疾患が多く存在する。本研究班では、(1)甲状腺中毒性クリーゼ、(2)悪性眼球突出症、(3)粘液水腫性昏睡、(4)甲状腺ホルモン不応症、(5)バセドウ病再燃再発、(6)副甲状腺機能低下症、(7)偽性副甲状腺機能低下症、(8)ビタミンD依存症(くる病・骨軟化症)および、ビタミンD抵抗性くる病・骨軟化症、(9)低Ca血症性疾患、(10)ビタミンD欠乏・不足症
、(11)インスリン抵抗症(インスリン受容体異常症 A型,B型,亜型) について、実態把握、診断基準・重症度分類・治療指針を策定する。
研究方法
日本内分泌学会、小児内分泌学会、日本甲状腺学会、日本骨代謝学会、日本糖尿病学会などと連携し専門部会会議を行う。会議内容を踏まえ全国疫学調査を行い、解析結果および海外を含む最新の知見をもとにホルモン受容機構異常に起因する上述の疾患頻度や臨床的特徴の実態を把握する。それと並行して各疾患の診断基準および治療指針の草案を作成する。作成した診断基準・治療指針は、各学会承認を経て、専門医や一般医家に周知と理解を深めるために学会ホームページや刊行物を通じて公表する。研究全般において、被験者保護の観点を踏まえ、医学研究に関する倫理指針に則し実施する。
結果と考察
(1)甲状腺中毒性クリーゼ
全国疫学調査の解析結果および文献を基に診療ガイドラインを策定し、日本内分泌学会、日本甲状腺学会の承認を得た。ガイドラインの是非を検証すべく前向き調査に関する案を提示した。
(2)悪性眼球突出症
「バセドウ病悪性眼球突出症の診断基準と治療指針2015」をまとめ、日本甲状腺学会、日本内分泌学会の承認を得た。ステロイド療法に伴う肝障害のリスク因子の解析と多施設共同前向き研究が進行中である。
(3)粘液水腫性昏睡
 診断基準(第三次案)と診療指針(第一次案)を策定した。本症の治療薬である甲状腺ホルモン静注製剤は本邦では未認可であり、市販化に向け、あすか製薬より厚労省へ申請中である。
(4)甲状腺ホルモン不応症
 診断基準と重症度分類を策定した。パブリックコメントを募り、正式決定に向け準備している。また、遺伝子診断の指針策定や全国調査に向け準備を開始した。
(5) バセドウ病の初診時予後判定
初診時バセドウ病患者白血球におけるSiglec1mRNAの遺伝子発現量と甲状腺ホルモン値の相関の検討を開始した。
(6)副甲状腺機能低下症、(7)偽性副甲状腺機能低下症
 両疾患とも第2次指定難病に指定された。申請書にもとづく指定難病の臨床データを収集・解析を実施している。また、偽性副甲状腺機能低下症を含む、副甲状腺疾患の臨床像把握に基づく診療ガイドラインの策定を進めている。
(8) ビタミンD依存症(くる病、骨軟化症)および、ビタミンD抵抗性くる病・骨軟化症
第2次指定難病に指定された。「くる病・骨軟化症の診断マニュアル」を日本内分泌学会・骨代謝学会を通じて学会ホームページ上に公開し、また日本内分泌学会雑誌の別冊として配布した。
(9)低Ca血症性疾患
「低Ca血症の鑑別診断の手引き」を日本内分泌学会ホームページに公表した。今後、更に改訂する。低Ca 血症性疾患と並行して、低リン血症性疾患の病因・病態解析に関して、難病患者データベースの利用準備中である。
(10)ビタミンD欠乏・不足症
病態調査の結果、日本人においてビタミンD不足は骨折リスクであり、その評価には血清25(OH)D濃度測定が必要であることがわかった。結果を踏まえ、ビタミンD不足・欠乏の判定指針(案)を作成した。今後、日本骨代謝学会、日本内分泌学会などを通じてパブリックコメントを募り、ビタミンD不足・欠乏の判定基準を策定予定である。
(11) インスリン抵抗症
インスリン受容機構障害による糖尿病の診療実態に関するアンケート調査を行い、B型インスリン抵抗症について、疑いを含め49例の診療経験があるとの回答を得た。また、受託検査会社への調査では、過去4年間でのインスリン受容体抗体陽性例数は88例であった。インスリン抵抗症の診断基準には平成7年度版が存在するが、現在の診療実態に合致しておらず、臨床的特徴の実態を把握し診断基準やガイドラインの改定を行う。
結論
公表したガイドラインが診療に活用され、迅速かつ的確な診断・治療により本症の予後改善に寄与することが期待される。また、現在着手している他の疾患の診断・治療指針も早期の策定が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

収支報告書

文献番号
201510098Z