非肥満者に対する保健指導方法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201508020A
報告書区分
総括
研究課題名
非肥満者に対する保健指導方法の開発に関する研究
課題番号
H27-循環器等-一般-008
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
下方 浩史(名古屋学芸大学 大学院栄養科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 安藤 富士子(愛知淑徳大学 健康医療科学部)
  • 大塚 礼(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター)
  • 葛谷 雅文(名古屋大学 大学院医学系研究科)
  • 大藏 倫博(筑波大学 大学院人間総合科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
15年間にわたって追跡されている無作為抽出された一般住民コホート、25年にわたって追跡されている16万人の大規模健診コホートを対象として、非肥満の高血糖、血清脂質異常、血圧高値の病態とリスク要因を明らかにする。また無作為化対照試験(RCT)による栄養と運動の介入でのリスク要因の検証、エビデンスレベルまで含めた文献研究を行い、これらの結果から、非肥満の代謝性異常者の生活習慣改善への効果的な保健指導方法に関するガイドラインの策定を目指す。
研究方法
(1) 地域住民コホート研究
 地域住民から年齢・性別に層化し無作為に選ばれた「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」の参加者3,983人(観察開始時年齢40-79歳)を対象とした。NILS-LSAでは平成9年から、医学、心理、運動、身体組成、栄養、社会的背景、生活習慣などの詳細な調査を2年ごとに実施してきた。平成24年度までに7回の調査を終了しており、総参加者数3,983人、延べ16,338回の測定データを用いた。
(2) 大規模健診コホート研究
 25年間にわたって追跡されている20代から80代までの約16万人、延べ約60万件の既存の人間ドック健診集団データを用いて解析を行った。
(3) 運動・栄養介入研究
 NIL-LSAの縦断的なデータを用いて多彩なRCTを仮想的に実施し、非肥満者の代謝性異常を改善する最適な介入方法を探索した。
(4) 文献研究及び非肥満者に対する保健指導方法に関するガイドラインの策定
 非肥満者の代謝性異常の定義とスクリーニングのための検査、疫学、動脈硬化性疾患罹患、死亡リスク、栄養介入、運動介入、その他の生活習慣介入の6つの重要課題について合計17のクリニカル・クエスチョンを作成し、国内外の論文のシステマティック・レビューを開始した。
結果と考察
(1) 地域住民コホート研究
 BMIが25未満で腹囲が基準値以下の非肥満でありながら高血糖、血清脂質異常、血圧高値の2つ以上を有する代謝性異常となる病態について、代表性のあるコホートの特色を生かし、全国患者数推計及び将来予測を行った。40歳以上の日本人における非肥満の代謝異常の有病率は男性10.9%、女性13.6%であり、男性380万人、女性534万人、合計914万人の患者がいると推定された。また2012年将来推計人口から患者数の将来推計を行った。2025年には1,014万人、2035年には1,042万人に患者数が増加すると推定された。非肥満者が代謝性異常となる生活習慣について縦断的データ解析によりリスク要因の解析を行った。その結果、喫煙者ではリスクは上昇していたが、総身体活動量、総エネルギー消費量、運動によるエネルギー消費量が多いほどリスクは低下していた。エネルギー調整した栄養素ではビタミンD、E、Cの摂取、多価不飽和脂肪酸の摂取が多いほどリスクが低下していた。
(2) 大規模健診コホート研究
 非肥満者が代謝性異常となるリスク要因を明らかにした。20歳の時の体重から10kg以上の体重増加、朝食を抜くこと、飲酒、早食い、就寝前の食事がリスクを上げており、一方で、運動習慣があること、身体活動多いことがリスクを下げていた。
(3) 運動・栄養介入研究
 2年間の運動介入では、一日の歩数が5,500歩以上、運動による一日のエネルギー消費量100kcal以上、3METSまでの低強度の運動時間一日45分以上が最も有効であった。2年間の栄養介入では、1日70g以上のたんぱく質、700mg以上のカルシウム、12mg以上の鉄、10g以上の多価不飽和脂肪酸、200mg以上のEPA、300mg以上のDHAの摂取で有意に代謝性異常が改善した。
(4) 文献研究及び非肥満者に対する保健指導方法に関するガイドラインの策定
 文献検索を行い、評価指標等の信頼性・妥当性、介入の効果等のエビデンスレベル、推奨グレード、コンセンサスレベルを含むリストを作成中である。
結論
非肥満の代謝異常には、時代の効果よりも加齢やコホートの効果が大きく、患者数は今後、人口の高齢化に伴って20年以上にわたり増加していくと推定された。これらの患者は、現在の特定健診の予防対策から外れてしまっており、早急な対応が必要である。非肥満の代謝異常のリスク要因として食生活や運動習慣が重要であることが、地域住民のコホートや大規模な健診コホートで確認された。代謝性異常の改善をエンドポイントにした2年間の運動介入の仮想RCTからは運動と栄養を組み合わせた介入を行うことが効率的であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2016-09-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-11-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201508020Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,000,000円
(2)補助金確定額
7,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,522,304円
人件費・謝金 1,130,194円
旅費 309,780円
その他 4,037,722円
間接経費 0円
合計 7,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2016-10-11
更新日
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