がん診療科データベースとJapanese National Cancer Database(JNCDB)の運用と他がん登録との連携

文献情報

文献番号
201507013A
報告書区分
総括
研究課題名
がん診療科データベースとJapanese National Cancer Database(JNCDB)の運用と他がん登録との連携
課題番号
H26-がん政策-一般-014
研究年度
平成27(2015)年度
研究代表者(所属機関)
手島 昭樹(地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪府立成人病センター 放射線治療科)
研究分担者(所属機関)
  • 三木 恒治(京都府立医科大学)
  • 日月 裕司(国立がん研究センター中央病院)
  • 笠松 高弘(都立墨東病院)
  • 木下 貴之(国立がん研究センター中央病院)
  • 澤端 章好(星が丘医療センター)
  • 松浦 成昭(地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪府立成人病センター)
  • 寺原 敦朗(東邦大学医療センター大森病院)
  • 山内 智香子(滋賀県立成人病センター)
  • 宇野 隆(千葉大学大学院)
  • 中村 和正(埼玉医科大学医学部)
  • 角 美奈子(がん研究会有明病院)
  • 戸板 孝文(琉球大学大学院医学研究科)
  • 古平 毅(愛知県がんセンター中央病院)
  • 権丈 雅浩(広島がん高精度放射線治療センター)
  • 小川 和彦(大阪大学大学院)
  • 鹿間 直人(埼玉医科大学)
  • 大西 洋(山梨大学医学部)
  • 小泉 雅彦(大阪大学大学院)
  • 安藤 裕(放射線医学総合研究所重粒子医科学センター病院)
  • 中川 恵一(東京大学医学部附属病院)
  • 小塚 拓洋(がん研究会有明病院)
  • 沼崎 穂高(大阪大学大学院)
  • 佐々木 茂(信州大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
5,192,000円
研究者交替、所属機関変更
分担研究者 中村 和正   九州大学大学病院(平成27年4月1日~4月30日)→ 浜松医科大学医学部(平成27年5月1日以降) 分担研究者 権丈 雅浩 広島大学大学院 (平成27年4月1日~9月31日)→ 広島がん高精度放射線治療センター(平成27年10月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
がん対策推進基本計画の重点課題「がん登録」と共に「放射線治療の推進」の基盤となる放射線治療部門データベース(DB)を発展させた全国がん診療の質評価のためのデータベースJapanese National Cancer Database (JNCDB)の本格運用を目的とする。臓器別がん登録の母体である診療科DBの整備を支援、院内・地域・全国がん登録とJNCDBとのデータ連携を進め、がん登録全体の質向上に貢献する。
研究方法
日本放射線腫瘍学会DB委員会(同委員長:研究代表者)と密に協力し、今年度1.JNCDBに基づく学会事業Japan Radiation Oncology Database (JROD)を本格運用する。2.調査項目を放射線治療情報システム(治療RIS)に装填、export機能により現場の再入力負荷を低減させる。3.調査項目を反映したソフトにより治療RIS非導入施設の情報系整備を促す。4.放射線医学総合研究所へデータセンターを移管、活動を開始する。5.各施設の情報系整備の未成熟さに配慮し11月末から登録開始とする。6. 2013年治療例を分析、問題点を検討する。7.他がん登録との連携を進める。第3段階の各論DB改訂作業により情報を共有する。8.症例登録事業と並行し構造調査を定期的に継続する。9.粒子線治療の保険収載に伴いJRODに包含して全数登録を行う。
結果と考察
1.学会事業として本格運用を開始。学会の新施設認定要件に症例登録が含まれた。2.治療RISへの調査項目装填は主要5社で完了。3. 治療RIS 非導入施設に独自開発ソフトを無償提供。4.放射線医学総合研究所は運営委員会を設置しデータセンターとして活動を開始。5.10月に登録開始予告、参加表明115施設にワンタイムパスワードを発行、3月末時点で76施設37,987例を集積。6.2013年症例を分析。大規模施設の乳癌や前立腺癌根治症例で寡分割の導入による総線量の減弱が多かった。多施設共同臨床試験の結果が大規模施設の日常臨床へ波及している。食道癌、肺癌では、施設層別に生存率や進行度分布に差がある。追跡率にも施設間差があり、現状では有効な分析に耐えず早急な改善が必要である。院内がん登録との連携の強化、調査項目の入力必須化の再整備を進める。7.食道癌全国登録の支援を継続、婦人科腫瘍登録との連携を準備、各論DB改訂を継続。大阪府がん登録と2013年症例を比較。疾患、年齢分布は同様だが、放射線治療施行割合に顕著な差(本研究 26.2%:大阪府10.6%)が見られ、地域・全国がん登録での治療情報の捕捉が予想以上に不備と示された。8.学会で全国放射治療施設定期構造調査を行い、2011年データを公開、2012年はクリーニング中、2013年を集積中。全国で年間25万人が放射線治療を受けている。9.粒子線治療DBは粒子線治療固有の医療制度(保険、先進、自由診療等)、プロトコール番号、照射方法等の項目を追加した。粒子線治療RIS企業に項目を公開、装填を促した。
院内がん登録の標準化に合わせ、がん診療施設の各診療科が標準フォーマットを包括した情報を管理することで施設内の情報共有が容易になり施設単位でのがん診療情報の信頼性と診療の質が向上する。臓器横断的な放射線治療情報の標準化と全国的症例登録の運用により本研究班が院内での各診療科DBとの、院外での各がん登録との橋渡しの役割を担いうる。施設から高精度の情報が上がる仕組みは全国がん登録のデータ精度を更に向上させ、医療行政、社会や国民への貢献は大きい。多施設間での情報共有や全国的データ収集・分析が容易に、各施設や個人診療レベルの評価が正確になる。施設層・地域間較差を是正し、治療方法や医療機関の選択に資する正確な情報を国民に開示でき、国内外の共同研究も促進される。この基盤を構築する本研究は学術上重要で社会的意義が特に大きい。
法制化されて長い米国では、がん登録の基盤が整い、国民の理解も深く、データの還元が社会貢献、国民の保健・医療の向上に直結している。その存在性、必要性が一般国民に十分認識されていないわが国でも、法制化により本年1月よりがん登録が開始された。がん診療体制の整備が進められる中、がん情報の整備も急務となっている。本研究を基盤として開始された学会事業はがん医療の司令塔として国民の保健・医療の向上に寄与し、行政、社会への貢献は大きい。将来的に遺伝情報ともリンクできれば病因や治療効果の解明等、情報の価値は飛躍的に高まる。放射線治療を中心とした医療被曝情報としても東日本大震災の原発関連被曝の対照データとして重要な役割を果たし得る。
結論
本研究を通じがん放射線治療患者の全数登録と他がん登録との連携を進め、同時に本研究過程で各施設の情報系整備を促進している。

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-11-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201507013Z