文献情報
文献番号
201447026A
報告書区分
総括
研究課題名
エボラ出血熱に対する治療薬、診断薬の開発に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
竹内 勤(聖路加国際大学・公衆衛生大学院設置準備室)
研究分担者(所属機関)
- 安田 二朗(長崎大学・熱帯医学研究所)
- 山下 武美(協和発酵キリン株式会社・研究開発本部研究機能ユニット創薬基盤研究所)
- 高田 礼人(北海道大学・人獣共通感染症リサーチセンター)
- 後藤 浩朗(東芝ヘルスケア社・ヘルスケア医療推進部部長)
- 古田 要介(富山化学工業株式会社・総合研究所薬理研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
315,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
抗インフルエンザウイルス薬として開発されたファビピラビルのエボラ出血熱ウイルスに対する有効性および安全性の評価のため、関係国等と協力し、非ヒト霊長類での各種薬物動態・安全性試験を実施し、高度感染管理実験施設でのエボラウイルス感染実験計画の実施支援、およびギニア等流行地での臨床研究を促進する。モノクローナル抗体を用いた治療薬の開発に向けて、科学的に品質が担保された製剤を生産するとともに、複数のエボラ出血熱ウイルスに対して中和活性を示すモノクローナル抗体の作出を試みる。加えて、エボラウイルスに対して中和活性を示すマウスモノクローナル抗体を利用して、ヒト-マウスキメラ抗体を作出することによって、エボラ出血熱に対する抗体医薬品候補を創出し、実用化を目指す。また、臨床症状のみからエボラ出血熱の診断を行うことは不可能であり、患者の救命、感染拡大阻止のため、エボラ出血熱ウイルスに対して迅速・高感度かつ精確に診断できる診断法を開発する。
研究方法
抗インフルエンザウイルス薬として開発されたファビピラビルのエボラ出血熱ウイルスに対する有効性および安全性の評価のため、関係国研究機関と協力し、非ヒト霊長類(NHP)での各種薬物動態試験、安全性・忍容性試験を実施し、BSL-4実験施設でのエボラウイルス感染実験の計画およびその実施、並行して実施されているギニア等流行地での臨床研究の促進を支援する。また、モノクローナル抗体を用いた治療薬の開発に向けて、科学的に品質が担保された製剤を生産するとともに、複数のエボラ出血熱ウイルスに対して中和活性を示すモノクローナル抗体の作出を試みる。さらに、エボラ出血熱ウイルスに対して迅速・高感度に診断できる診断法の開発を目指す。
結果と考察
抗インフルエンザウイルス薬として開発されたファビピラビルのエボラ出血熱ウイルスに対する有効性および安全性の評価のため、非ヒト霊長類(NHP)での各種薬物動態試験、安全性・忍容性試験(非感染実験)を実施した。また、BSL-4実験施設での感染実験計画への情報提供およびその実施、並行して実施されているギニア等流行地での臨床研究を支援した。エボラ出血熱の効果的な治療と製剤の合理化を検討し、小児投与法最適化のための薬物動態・安全性試験に向けた幼若動物の予備症状観察、静脈注射製剤の開発に着手した。ザイールエボラウイルスに対してこれまでに効果が認められている2種類のヒト-マウスキメラモノクローナル中和抗体を産生するCHO細胞を大量に培養し、上清に含まれる抗体を高度に精製することによって、抗体医薬に求められる純度が確保された製剤を生産した。ザイールエボラウイルス以外の異なる複数のエボラウイルス種に対して中和活性を示すマウスモノクローナル抗体を作出し、水疱性口炎ウイルスシュードタイプシステムを活用したエスケープミュータントの選択と変異アミノ酸の同定によって抗体の認識するエピトープを推定した。迅速・簡便かつ高感度なエボラ出血熱診断法として全5種類のエボラウイルスに対する各種エボラウイルス特異的なRT-LAMP法を開発した。ザイールエボラウイルスに対するRT-LAMP法に関しては、ギニア共和国で採取された臨床検体を用いた実証試験も行い、現行のRT-PCR法と比較して、検出感度、特異性が同等以上であることを確認した。検査時間の大幅な短縮、小型・軽量・低価格な検査機器の採用などにおいて、現行の診断システムより明確に優位性をもつことが示された。今般のエボラ出血熱という高病原性・高感染性病原体のアウトブレイクの予期せぬ発生に対し、感染管理対策の遅れを指摘される状況にあって、有望な医薬資源が本邦にて具体的に確保されている状況がもたらす課題と国際的な公衆衛生対策上果たすべき責任が示された。本邦においては、エボラ出血熱に対しては未承認用途であるファビピラビルの開発をきっかけに、可及的対応が求められる医薬資源の確保を目的とした研究開発スキームについて、その責任範疇、臨床治験を含む研究推進上の倫理的制限と許容性、ポスト・アウトブレークの医薬品管理のあり方等、今後多くの課題が連鎖的に提示されていくと予想される。今般のエボラ出血熱感染対策にむけた国際研究の事例として、社会科学的な視座を含め、包括的かつ系統立てた情報解析・状況分析が不可欠である。
結論
エボラ出血熱に対するT-705の動物実験モデルに基づくデータおよびヒトでの治療効果について具体的な知見が得られ、今後は予防・診断法開発との連携も視野に、さらに継続的かつ分野横断的な研究開発が望まれる状況が明らかとなった。国内での医薬品研究開発管理の枠組みを超えた国際的な対応の枠組みに参加し、具体的な事例に基づいて今後の国内外関係政策・研究連携のしくみに積極的に関与し、取り組んでいくことの重要性が提示された。
公開日・更新日
公開日
2015-05-27
更新日
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