文献情報
文献番号
201438019A
報告書区分
総括
研究課題名
高精度エピゲノム胃がんリスク診断の確立と多層的食道がんリスク診断の開発
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
牛島 俊和(独立行政法人国立がん研究センター 研究所 エピゲノム解析分野)
研究分担者(所属機関)
- 中島 健(独立行政法人国立がん研究センター 中央病院 内視鏡科)
- 一瀬 雅夫(公立大学法人和歌山県立医科大学 第二内科)
- 山道 信毅(国立大学法人東京大学 医学部附属病院 消化器内科)
- 島津 太一(独立行政法人国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 予防研究グループ)
- 伊東 文生(学校法人聖マリアンナ医科大学 消化器・肝臓内科)
- 新井 恵吏(独立行政法人国立がん研究センター 研究所 分子病理分野)
- 杉山 敏郎(国立大学法人富山大学 医学部 第3内科)
- 村上 和成(国立大学法人大分大学 医学部 消化器内科学講座)
- 岸野 貴賢(独立行政法人国立がん研究センター 研究所 エピゲノム解析分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
53,840,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
(1)ピロリ菌除菌後健常者の中の胃がん高危険度群の高精度捕捉の前向き臨床研究
現在急増している除菌後健康人について、胃がん高危険度群を捕捉する技術の開発は急務である。胃粘膜でのメチル化レベルの定量により除菌後健康人内の高危険度群を捕捉し、発がん危険度を層別化できることを証明するための前向き臨床研究を実施する。
(2)食道がん高危険度群捕捉の多層的リスクマーカーの開発
難治がんである食道がんにおいては、既知のリスク因子とは独立に高危険度群を捕捉できる技術の開発が重要である。本研究では、食道粘膜に蓄積した点突然変異を定量可能とし、エピゲノムマーカーと組み合わせた食道がん多層的リスクマーカーを開発し、横断的解析での感度・特異度を明らかにすることを目的とする。
現在急増している除菌後健康人について、胃がん高危険度群を捕捉する技術の開発は急務である。胃粘膜でのメチル化レベルの定量により除菌後健康人内の高危険度群を捕捉し、発がん危険度を層別化できることを証明するための前向き臨床研究を実施する。
(2)食道がん高危険度群捕捉の多層的リスクマーカーの開発
難治がんである食道がんにおいては、既知のリスク因子とは独立に高危険度群を捕捉できる技術の開発が重要である。本研究では、食道粘膜に蓄積した点突然変異を定量可能とし、エピゲノムマーカーと組み合わせた食道がん多層的リスクマーカーを開発し、横断的解析での感度・特異度を明らかにすることを目的とする。
研究方法
(1)ピロリ菌除菌後健常者の中の胃がん高危険度群の高精度捕捉の前向き臨床研究
①症例選択、除外基準、及び集積方法の設定
高危険度群の選定方法、除外基準、症例集積の効率化、及び検体採取方法の最適化について協議した。
②IRBの承認申請
研究プロトコールを作成し、IRB申請を行った。
③班会議の実施
IRB申請における問題点の検討、症例集積前の目合わせなどを目的として、定期的に班会議を行った。
④症例集積
Webによる症例登録システムを構築した。
⑤胃洗浄液を用いた検査手法の高度化
内視鏡検査時の胃洗浄液から回収したDNAを用いた胃がんリスク検出法の有用性を検討した。
(2)食道がん高危険度群捕捉の多層的リスクマーカーの開発
①細胞と変異原処理
TK6細胞株を、0-30 µg/mlのMNUで24時間処理した後、通常培地で6日間培養した。
②低頻度突然変異の検出
シークエンスライブラリーは、100分子のゲノムDNAを鋳型に用いて調製し、シークエンス解析を行った。シークエンスエラーが少ない15,724 basesの領域における突然変異頻度を、突然変異頻度が十分小さい場合の近似式を用いて計算した。
①症例選択、除外基準、及び集積方法の設定
高危険度群の選定方法、除外基準、症例集積の効率化、及び検体採取方法の最適化について協議した。
②IRBの承認申請
研究プロトコールを作成し、IRB申請を行った。
③班会議の実施
IRB申請における問題点の検討、症例集積前の目合わせなどを目的として、定期的に班会議を行った。
④症例集積
Webによる症例登録システムを構築した。
⑤胃洗浄液を用いた検査手法の高度化
内視鏡検査時の胃洗浄液から回収したDNAを用いた胃がんリスク検出法の有用性を検討した。
(2)食道がん高危険度群捕捉の多層的リスクマーカーの開発
①細胞と変異原処理
TK6細胞株を、0-30 µg/mlのMNUで24時間処理した後、通常培地で6日間培養した。
②低頻度突然変異の検出
シークエンスライブラリーは、100分子のゲノムDNAを鋳型に用いて調製し、シークエンス解析を行った。シークエンスエラーが少ない15,724 basesの領域における突然変異頻度を、突然変異頻度が十分小さい場合の近似式を用いて計算した。
結果と考察
【結果】
(1)ピロリ菌除菌後健常者の中の胃がん高危険度群の高精度捕捉の前向き臨床研究
①症例選択、除外基準、及び集積方法の設定
ピロリ菌除菌後健康人の中の胃がん高危険度群の選定を保険診療と連携するため、「ABC検診」よりも「内視鏡所見による萎縮性変化」が適切であると結論した。症例集積方法に関しては、全国の8施設を共同研究施設に設定し、症例集積体制を構築した。
②IRBへの承認申請
2014年12月30日に国立がん研究センターの倫理審査委員会に申請を行い、2015年3月24日に承認された。
③班会議の実施
二回の班会議を実施し、研究実施プロトコールについて詳細な議論を行った。また、内視鏡所見(萎縮判定基準)の目合わせも行った。
④症例集積
Webによる症例登録システムを構築した。
⑤胃洗浄液を用いた検査手法の高度化
早期胃がん内視鏡治療前にメチル化高値で1年以内に再発する可能性の高い症例を予測する遺伝子及び切除後の腫瘍残存と早い時点での再発(潜在癌)の発見に有用な遺伝子を明らかにした。それぞれ単独で、70%以上の感度を示した。
(2)食道がん高危険度群捕捉の多層的リスクマーカーの開発
0-30 µg/mlの各MNU濃度で処理したところ、MNU濃度の増加に伴う突然変異頻度及びMNUに特徴的なG>A置換の割合の上昇が認められた。さらに、測定の再現性が高いことを確認した。
【考察】
(1)ピロリ菌除菌後健常者の中の胃がん高危険度群の高精度捕捉の前向き臨床研究
ピロリ菌除菌後健康人の中の胃がん高危険度群の選定方法の変更により、保険診療との連携が可能となった。加えて、ABC検診を採用していない関連病院の研究参加が容易となり、強力な研究協力体制の構築が可能となった。これにより、今後の症例集積の促進が期待されるとともに、研究結果の有用性が示された際には、速やかに実用化できる。
(2)食道がん高危険度群捕捉の多層的リスクマーカーの開発
変異原処理細胞株における低頻度の突然変異をシークエンスエラーと区別する手法を確立した。この手法を用いれば、ヒト非がん組織に蓄積した低頻度の点突然変異が十分定量可能と考えられ、食道粘膜に蓄積した点突然変異を定量することにより、リスク評価を行うことができると期待される。
(1)ピロリ菌除菌後健常者の中の胃がん高危険度群の高精度捕捉の前向き臨床研究
①症例選択、除外基準、及び集積方法の設定
ピロリ菌除菌後健康人の中の胃がん高危険度群の選定を保険診療と連携するため、「ABC検診」よりも「内視鏡所見による萎縮性変化」が適切であると結論した。症例集積方法に関しては、全国の8施設を共同研究施設に設定し、症例集積体制を構築した。
②IRBへの承認申請
2014年12月30日に国立がん研究センターの倫理審査委員会に申請を行い、2015年3月24日に承認された。
③班会議の実施
二回の班会議を実施し、研究実施プロトコールについて詳細な議論を行った。また、内視鏡所見(萎縮判定基準)の目合わせも行った。
④症例集積
Webによる症例登録システムを構築した。
⑤胃洗浄液を用いた検査手法の高度化
早期胃がん内視鏡治療前にメチル化高値で1年以内に再発する可能性の高い症例を予測する遺伝子及び切除後の腫瘍残存と早い時点での再発(潜在癌)の発見に有用な遺伝子を明らかにした。それぞれ単独で、70%以上の感度を示した。
(2)食道がん高危険度群捕捉の多層的リスクマーカーの開発
0-30 µg/mlの各MNU濃度で処理したところ、MNU濃度の増加に伴う突然変異頻度及びMNUに特徴的なG>A置換の割合の上昇が認められた。さらに、測定の再現性が高いことを確認した。
【考察】
(1)ピロリ菌除菌後健常者の中の胃がん高危険度群の高精度捕捉の前向き臨床研究
ピロリ菌除菌後健康人の中の胃がん高危険度群の選定方法の変更により、保険診療との連携が可能となった。加えて、ABC検診を採用していない関連病院の研究参加が容易となり、強力な研究協力体制の構築が可能となった。これにより、今後の症例集積の促進が期待されるとともに、研究結果の有用性が示された際には、速やかに実用化できる。
(2)食道がん高危険度群捕捉の多層的リスクマーカーの開発
変異原処理細胞株における低頻度の突然変異をシークエンスエラーと区別する手法を確立した。この手法を用いれば、ヒト非がん組織に蓄積した低頻度の点突然変異が十分定量可能と考えられ、食道粘膜に蓄積した点突然変異を定量することにより、リスク評価を行うことができると期待される。
結論
本年度は、「ピロリ菌除菌後健常者の中の胃がん高危険度群の高精度捕捉の前向き臨床研究」については、研究プロトコールの承認を取得し、強力な研究協力体制を構築することができた。また、「食道がん高危険度群捕捉の多層的リスクマーカーの開発」については、低頻度の突然変異をシークエンスエラーと区別する手法を確立した。
公開日・更新日
公開日
2015-09-11
更新日
-