細胞チップを応用した超高感度マラリア診断装置の開発

文献情報

文献番号
201434004A
報告書区分
総括
研究課題名
細胞チップを応用した超高感度マラリア診断装置の開発
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
美田 敏宏(順天堂大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡弘章(パナソニック株式会社・AIS技術本部)
  • 片岡正俊(産業技術総合研究所・健康工学)
  • 遠藤弘良(東京女子医科大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【委託費】 医療機器開発推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
46,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
マラリアを制圧するためには、誰もが使える定量的診断手法の開発が急務となっている。本研究は、迅速・簡便、低コストかつ超高感度なマラリア原虫定量診断装置を開発し、流行動向および治療効果の迅速かつ正確な把握を可能にする。
研究方法
3年の研究期間内に以下の工程で「多くの検体」を「ワンタッチで測定」でき、「メンテナンスフリー」な、「バッテリー駆動」の小型全自動装置へと改良する。
本年度は基本機能の改良として、血球分離デバイス、染色法の改善、細胞チップ保存法の改良、細胞チップのコンパクトディスク(CD)への組み込みと蛍光測定装置の評価をおこなった。改良にあたっては、ウガンダを中心としたフィールドテストでの検証結果により課題を抽出、国内の開発研究での解決というステップを踏んだ。さらに、薬剤耐性の遺伝マーカーの実用性の検討、流行地での実用化の課題に関する情報収集を進めた。これらの結果は定期的に開催した開発運営委員会で情報共有され、解決法への議論を積み重ねた。
結果と考察
フィールドテストとして、ウガンダで2回、ケニアで1回の実証テストを実施した。
血球分離デバイス、染色法、細胞チップの保存法については、ほぼ実用化に近いレベルの結果が得られた。一方、蛍光測定装置としては、半導体レーザーを用いた装置では、小型化、高速化、多検体測定化の点で実用化に難点が示された。
さらに、薬剤耐性関連遺伝子K13の遺伝マーカーとしての有用性を、全流行地を網羅する検体を用いて検討した結果、2%のベースライン多型が観察された。耐性関連変異の同定は今後の疫学調査から明らかになると考える。
実用化の課題に関する情報収集として、現行の迅速診断キット、ギムサ染色による顕微鏡検査、PCRの3つの診断方法とその感度、特異度、費用、診断技術者に求められる研修等を比較検討した結果、本診断装置はPCRに比較優位を持つと言えるが、実用化され、多くの途上国で活用されるための課題として、精度管理の在り方、耐久性、消耗品の供給が必要であることが明らかになった。
結論
機器開発、関連する医学・生物学的研究は順調に進んでいる。
次年度の開発課題として、CD型蛍光検出装置およびディスクの開発と装置のバッテリー化と三日熱マラリア原虫診断能の検討が大きな柱となる。このため、マラリア流行地でのさらなるフィールドテスト(ウガンダ、ケニア、ミャンマー、パプアニューギニア)を実施し、より現地のニーズにあった装置へと改良していく。さらに、種の同定、薬剤耐性にむけたonchip-PCR条件の洗い出しやマイクロチャンバー形状の検討も進めていく予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201434004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
CD型診断デバイス内に挿入された白血球除去血球分離デバイスの改良により、実用化レベルである白血球除去率99.9%以上かつ赤血球回収率40%以上を達成した。マラリア核の蛍光染色の最適化によりバックグラウンドの低減化、S/N比の増大並びに染色時間の短縮が可能となり、熱帯熱マラリア原虫に加え、三日熱マラリア原虫検出への目処付けができた。凍結乾燥、パッケージ技術およびアウトガス低減により室温保管性能6ヶ月以上を達成した。
臨床的観点からの成果
同時に9検体/ディスク同時検出構造の開発を完了した。1検体当たり200万個以上の赤血球を測定できるようになり、貧血患者における安定した測定感度を得ることが可能になった。CD型蛍光測定装置については、検査時間10分/検体、バッテリー駆動にて5時間以上の検査可能時間を実現した。フィールドテストにおいて、実検体でも赤血球分離と良好な染色が可能であること、ギムザ染色顕微鏡観察と本検出装置による感染率は、R2=0.97と良好な相関性があることを確認した。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
実用化に関する課題点を抽出するため、迅速診断キット、顕微鏡検査、PCR、3つの診断法の感度、特異度、費用、技術者研修等を比較、本診断装置のPCR対する優位性を明らかにした。しかし実用化へは、精度管理、耐久性、消耗品の供給が重要であることが明らかになった。種の同定や薬剤耐性診断をオンチップPCRで実施するための基盤技術を開発した。さらに、アルテミシニンおよび併用薬ピペラキン耐性関連遺伝子マーカーを開発した。
その他のインパクト
2016年3月30日の日経産業新聞および8月26日のWBS(テレビ東京)において活動が取り上げられた。本研究の成果を2016年度日本熱帯医学会および順天堂大学主催の市民講座において発表した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
-

収支報告書

文献番号
201434004Z