地域保健対策におけるソーシャルキャピタルの活用のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201429002A
報告書区分
総括
研究課題名
地域保健対策におけるソーシャルキャピタルの活用のあり方に関する研究
課題番号
H25-危機-一般-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
藤内 修二(大分県中部保健所)
研究分担者(所属機関)
  • 笹井 康典(枚方市保健所)
  • 櫃本 真聿(愛媛大学医学部付属病院総合診療サポートセンター)
  • 福島 富士子(東邦大学看護学部家族・生殖看護学)
  • 尾島 俊之(浜松医科大学健康社会医学講座)
  • 村嶋 幸代(大分県立看護科学大学)
  • 田中 久子(女子栄養大学公衆栄養学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,774,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 住民組織活動を通じてソーシャル・キャピタル(以下,SC)の醸成・活用にかかる課題を明らかにし,その効果的な育成・支援・協働に向けての「手引き」を作成するとともに,その実践ができる人材を育成するための研修プログラムを開発する。
研究方法
1)「住民組織活動を通じたSCの醸成・活用にかかる手引き」の作成
 平成25年度の全国市区町村調査で明らかになった住民組織活動を通じたSCの醸成・活用の課題を克服するため,全国保健師長会の「SCの醸成や活用にかかる保健活動のあり方に関する研究」班(分担事業者:松本珠実)の班員との合同作業班会議を3回開催し,手引き案を作成した。
 作成に当たり,平成25年度の班会議での議論を踏まえて,住民組織活動とSCに関する基本的な事項を整理するとともに,都道府県から提供された指針や手引き等から,手引きに盛り込む内容を抽出した。
2)住民組織活動を通じたSCの醸成・活用にかかる研修プログラムの開発
 作成された「手引き」をテキストにして,住民組織活動やSCに関する基本的な考え方を伝える講義に加え,グループワークや事例分析を盛り込んだ研修プログラムを,上述の合同作業班会議での検討により開発した。
3)全国6ブロックでの研修会の開催と研修プログラムの修正
 開発して研修プログラムに基づいて,全国6ブロックで保健師や栄養士等の行政職員を対象にした研修会を行,その評価に基づいて修正を加え,研修プログラムを完成させた。
結果と考察
1)「住民組織活動を通じたSCの醸成・活用にかかる手引き」の作成
 「手引き」は,住民組織との協働についての基本的な考え方と,SCに関する基本的な事項を記載した「総論」(第1,2章)とSCの醸成・活用の実践に必要なノウハウをまとめた「実践編」(第3章)によって構成した。「手引き」はA4で100ページの冊子となり,研修会のテキストとして活用するとともに,DVDに収載して,都道府県の健康増進担当課,保健所,市区町村,大学の関係講座に提供した。
2)住民組織活動を通じたSCの醸成・活用にかかる研修プログラムの開発
 講義を聞くだけという受け身的な研修ではなく,SCの醸成・活用の実践について日頃の活動を振り返り,今後どう取り組むか,グループワークを盛り込んだ。グループワークのテーマは,手引きの「実践編」から3つのテーマを選んで,研修プログラムを構成した。
(1)基調講演 70分
 「住民組織活動を通じたSCの醸成と活用」 
(2)実践についてグループワーク  60分×2~3
  各セッションの構成 (1セッション 60分)
    テーマについての基本的なレクチャー (15分)
    グループ討議:何を重視して展開するか (30分)
    発表と総括:講義での気づきや学びを共有 (15分)
(3)地域の先進事例の分析(ケースメソッド) 85分
  事例の前半部分(ターニングポイントまで)の紹介 (10分)
  グループ討議:自分だったら,どう展開するか (25分)
  事例の後半部分(その後の展開)の紹介(15分)
  グループ討議:この事例からの学びを話し合う (20分)
  発表と総括:事例からの学ぶべきポイントを共有(15分)
3)全国6ブロックでの研修会の開催と研修プログラムの修正
 6ブロック合計の参加者 551名であった。研修会では,毎回,自記式調査を行って,講義内容の理解度,グループワークでの学びの有無,事例検討からの学びの有無などを尋ね,研修プログラムの評価を行った。
 「住民組織活動を通じたSCの醸成と活用」の講義の内容について,95%以上の受講者が「理解できた」「まあ理解できた」と回答していた。講義内容別の「理解できた」者の割合は,SCの効用で最も高く,SCの類型と測定で最も低かった。
 こうした評価結果に基づいて,講義内容を修正したところ,「SCと保健活動」についての評価は,九州ブロック,中四国ブロックで,有意に改善していた。
 実践編のテーマについてのグループワークの評価では,グループワークの運営について見直し,ファシリテーターの役割の明確化,時間配分を修正した結果,「学びが多かった」という回答が,徐々に増えていった。
結論
1)これまでの住民組織の育成・支援・協働にかかるノウハウを集約した「住民組織活動を通じたSCの醸成・活用にかかる手引き」を作成し,その手引きをテキストにして,保健担当者向けの研修プログラムを開発するとともに,全国6ブロックでの研修会の評価に基づき,研修プログラムを修正し,eラーニングシステムを構築した。
2)住民組織活動を通じたSCの醸成・活用を進めるために,開発した研修プログラムによる都道府県毎や保健所毎の研修会の開催が期待される。

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2016-08-04
更新日
-

文献情報

文献番号
201429002B
報告書区分
総合
研究課題名
地域保健対策におけるソーシャルキャピタルの活用のあり方に関する研究
課題番号
H25-危機-一般-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
藤内 修二(大分県中部保健所)
研究分担者(所属機関)
  • 笹井 康典(枚方市保険所)
  • 櫃本 真聿(愛媛大学医学部付属病院総合診療サポートセンター)
  • 福島 富士子(東邦大学看護学部家族・生殖看護学)
  • 尾島 俊之(浜松医科大学健康社会医学講座)
  • 村嶋 幸代(大分県立看護科学大学)
  • 田中 久子(女子栄養大学公衆栄養学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 地域保健におけるソーシャルキャピタル(以下,SC)の中核的な存在である住民組織活動の課題を明らかにし,その効果的な育成・支援・協働に向けての手引きを作成するとともに,その実践ができる人材を育成するための研修プログラムを開発する。
研究方法
 1年目は,住民組織活動を通じたSCの醸成・活用にかかる現状の課題を把握するために,全国の市区町村を対象とした実態調査を実施した(図1)。また,これまでの研究等から先進事例と考えられる自治体への訪問調査を行い,住民組織の育成・支援・協働におけるポイントをエンパワメントの視点で抽出した。さらに都道府県の健康増進担当課より,住民組織の育成・支援・協働にかかる指針や手引き等の提供を受け,内容の分析を行った。
 2年目は,1年目の研究成果を踏まえ,住民組織活動を通じたSCの醸成・活用の課題を克服するための手引きを作成した。
 人材育成のための研修プログラムの開発では,作成された「手引き」をテキストに,グループワークや事例分析を盛り込んだ研修プログラムを考案し,全国6ブロックでの保健師や栄養士等の行政職員を対象した研修会を行い,その評価に基づいて修正を加え,研修プログラムを完成させた。
結果と考察
1)南アルプス市,見附市,岡山市,玖珠町等,12市町村への訪問調査から,住民組織活動を通じたSCの醸成・活用には,市内全域に存在し,行政から「地域の情報」と「活動の場」を提供され,住民からは「信用」を付与された住民組織を活動の基盤として展開することが有効と考えられた。
2)全国調査では932市区町村から有効回答を得た(回収率53.5%)。活動の基盤となりうる健康づくり推進員等を有する自治体は58.0%,食生活改善推進員等は87.3%,愛育班等は9.8%,母子保健推進員等は29.4%で,いずれも都道府県によって設置率や活動内容,その評価に大きな差異を認めた。
 住民組織と協働している平均分野数は,都道府県により1.7分野から6.6分野まで4倍の格差を認め,協働分野が多い自治体ほど,住民組織活動が地域住民の絆を深めていた。
 住民組織との協働プロセスでは,地域の健康課題の共有,活動目的等の共有,活動のやりがいと成果のアピール,保健福祉計画の推進への関与,住民組織間の連携,健康づくり推進協議会等が機能していることが,SCの醸成に重要であった。
 こうした住民組織との協働プロセスに,有意な影響を及ぼしていた行政の協働体制として,自治体の保健事業におけるSCの位置づけ,住民組織への地域の健康課題についての情報提供(特に,住民の生活実態とその課題),庁内他部署との協議機会,住民組織への財政的な支援,住民組織の育成・支援・協働に関する研修機会や指針等の有無が挙げられ,県型保健所の支援が,協働体制の構築に寄与していた。
住民組織の支援・協働に関する研修機会がある自治体は25.6%で,住民組織の育成・支援に関する指針等がある自治体はわずか6.9%であった。
3)これまでの住民組織の育成・支援・協働にかかるノウハウを集約した「住民組織活動を通じたSCの醸成・活用にかかる手引き」を作成し,その手引きをテキストにして,住民組織との協働に携わる人材育成プログラムを開発するとともに,全国6ブロックで研修会を開催した。研修会には合計551名の地域保健関係者が参加。その評価に基づき,研修プログラムを修正し,eラーニングシステムを構築した。
結論
1)先進事例の分析から,住民組織活動を通じたSCの醸成・活用には,地域全域に存在し,行政から「地域の情報」と「活動の場」を提供され,住民からは「信用」を付与された住民組織を活動の基盤(プラットフォーム)として展開することが有効と考えられた。
2)全国市区町村調査により,こうした活動の基盤となりうる住民組織の活動状況や行政との協働プロセスや協働体制,県型保健所による支援は,都道府県により大きな差異を認めた。
3)住民組織の支援・協働に関する研修機会がある自治体は25.6%で,住民組織の育成・支援に関する指針等がある自治体は 6.9%と少なかった。研修機会や手引きの有無は住民組織との協働に有意な影響を及ぼしていた。
4)これまでの住民組織の育成・支援・協働にかかるノウハウを集約した「住民組織活動を通じたSCの醸成・活用にかかる手引き」を作成し,その手引きをテキストにして,保健担当者向けの研修プログラムを開発するとともに,全国6ブロックでの研修会の評価に基づき,研修プログラムを修正し,eラーニングシステムを構築した。
5)住民組織活動を通じたSCの醸成・活用を進めるために,開発した研修プログラムによる都道府県毎や保健所毎の研修会の開催が期待される。

公開日・更新日

公開日
2016-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2016-08-04
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201429002C

収支報告書

文献番号
201429002Z